万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

永住許可最短1年問題ー省令改正は権力濫用では?

2017年01月19日 14時31分35秒 | 社会
 法務省では、外国人の高度人材を成長戦略に取り込むために、最短で1年で取得できるなど、永住許可の条件を大幅に緩和する予定なそうです。現在、法務省でパブリック・コメントを受付中なのですが、内容以前の問題として、省令やガイドラインによる改正は、権力濫用とでも称すべき暴挙なのではないかと思うのです。

 永住権付与の条件緩和については既に報じられていましたが、国会における法律改正を経ての実施と思い込んでいました。立法措置を要するのであれば、国会での審議において国民世論を反映させることができますし、議論を進めれば、如何に危険な改正であるかも明らかとなるはずでした。ところが、この改正、出入国管理法そのものではなく、同法別表や永住許可のガイドラインの改正で済まそうとしているのです。

 永住権とは、一般の日本国民と共に日本国内に住むことができる権利であり、居住権である限り、全日本国民の生活に直接に関係する問題です。外国人が”お隣さん”になるのですから、生活習慣が異なっていたり、社会常識でさえ隔たりがあることも稀ではありません。また、高度人材であれば、日本国にとって有益であるから問題はないとする意見もありましょうが、既に該当する外国人が凡そ6000人ほど控えており、規制緩和で外国人が日本国に殺到すれば、専門職において日本人の雇用機会が失われる可能性もあります。イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ次期大統領の当選が移民問題が軸となったおり、この問題は、国民投票レベルの手続きを要するほど、国民最大の関心事と化しつつあります。

 また、ポイント制のため国籍の如何が問われておらず、”敵性”を有する外国人であっても永住許可が下りるという無防備さがあります。永住許可の凡そ3分の2は、中国の「国防動員法」の対象となる中国人となると予想されており、政治的に対立する国の国民を内部に抱え込むことは、EU内やNAFTA内での移民以上に安全保障上のリスクが付き纏います。ポイント制であるのならば、安全保障上や政治的に紛争を抱える国に対しては、ポイントで大幅にマイナス点を付けてもよいくらいです。

 政府が考えている以上に、国民は移民問題に敏感であり、安易な法改正には反対なはずです。しかも、民主的手続きを飛ばし、省令やガイドラインの改正で移民政策を推進するというのでは、国民も納得しないことでしょう。施行予定が本年の3月中というのですから、はじめから国民に賛否を問うつもりはなかったのではないでしょうか。パブリック・コメントで反対多数となった場合、法務省は、民主主義の原則に鑑みて、当改正案を撤回していただきたいと思うのです。

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コメント (16)
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