万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ケリー国務長官の”南シナ海軍事解決なし”発言の真意とは?

2016年09月01日 14時54分00秒 | 国際政治
南シナ海「軍事的解決なし」=米国務長官
 インドを訪問中の米ケリー国務長官は、インド工科大学での講演で南シナ海問題に言及し、「軍事的に解決するという選択肢はない」と述べたと報じられております。果たして、ケリー国務長官の発言の真意は、どこにあるのでしょうか。主語がはっきりしていないのですが、この発言、誰を主語にするかによって意味内容が大きく違ってきます。

 仮に、主語をアメリカとしますと、”たとえ中国が南シナ海問題の仲裁判決に従わず、かつ、軍事拠点化を進めたとしても、アメリカには軍事介入する意図はない”とするメッセージと解されます。中国としては願ってもない発言となり、大手を振って東南アジア諸国を軍事力で威圧し、かつ、海洋覇権の確立を目指した太平洋進出計画を実行に移すことができます。ケリー国務長官は、筋金入りの平和主義者として知られており、また、仲裁判決を拒絶し続けている中国に対して目立った批判は控えていることから、主語がアメリカである可能性もないわけではありません。

 それでは、主語がアメリカではなく、中国であるとしますと、この発言にはどのような解釈が成り立つのでしょうか。この場合には、”中国には、軍事的に解決する選択肢はない”となり、アメリカは、実力で中国の軍事行動を抑え込む用意があると宣言していることとなります。つまり、たとえ中国が武力行使を試ようとしてもできない、と述べているのです。折しも、東シナ海では、米軍が強襲揚陸艦や攻撃型原子力潜水艦を配備したとする情報もあり、これらの戦力は、南シナ海でも展開可能です。主語が中国であれば、ケリー国務長官の発言は、中国に対する強い牽制と警告を意味しているのです。

 東シナ海における米軍の動きを見る限り、後者、即ち、中国に対する警告の発言であった可能性の方が高いものと推測されます。しかしながら、ケリー国務長官の真意が後者であったとしても、中国は、アメリカへの対抗心から敢えて”軍事的解決”を選択し、武力に訴えるシナリオもあり得ます。何れにしても、中国が、平和的解決を望む国際社会に対して弓を弾いていることだけは確かであり、日米をはじめ国際社会は、矢が放たれる前に全力で中国の行動を阻止すべきなのではないでしょうか。

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コメント (1)
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