万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”慰安婦問題”―オランダと韓国では立場が逆

2012年10月06日 15時30分40秒 | ヨーロッパ
タイムズスクエアに慰安婦問題の看板 韓国の団体設置(朝日新聞) - goo ニュース
 韓国政府による”慰安婦問題”に関する国際宣伝活動は年々過激さを増し、ニューヨークのタイムズスクエアには、日本を糾弾する巨大看板が出現したそうです。オランダとの共闘も模索するそうですが、オランダと韓国の”慰安婦問題”は、全くの別物なのではないかと思うのです。

 戦時中、日本占領下にあったインドネシアでは、現地に取り残されたオランダ人は、日本軍が設置した拘留所にて集められ、軍の管理の下で生活を送っていたそうです。こうした中、1944年2月に、若い女性十数名が、スマランに設置されていた慰安所に強制的に連れてゆかれるという事件が発生しました。この事件は、オランダ人の訴えにより、日本の16軍司令部の察知するところとなり、スマランの慰安所は、2か月で閉鎖されています。後に、この事件の責任者は、BC戦犯として、1名の死刑宣告を含む計11名有罪判決を受けています。オランダの報告書によりますと、200から300名の慰安婦のうち、強制された女性は、65名ほど存在していたと言います(2025年に裁判記録が開示されるらしい…)。慰安所を設置するに当たって、16軍司令部は、自発的な応募者のみを集め、辞める自由も保障するように指令を出しており、この事件は、軍規違反であり、女性達に被害を与える犯罪行為ではあっても、少なくとも、ナチスドイツのように軍が、公然と強制収容所に連行したものではありません。”慰安婦問題”を訴える度に、韓国は、この事件を動かぬ証拠として持ち出し、自らをも同列の被害者に位置づけようとしてきました。2007年にアメリカの下院で採択された”慰安婦”に関する対日批判決議に際しても、公聴会において、韓国人女性と共に、オランダ人女性が被害証言を行っています。しかしながら、韓国人と日本占領下にあったインドネシアのオランダ人とでは、著しい立場の違いがあります。韓国人は、当時、”日本人”として占領した側にあり、実際に、朝鮮籍の軍属がインドネシアの拘留所で勤務していましたし、慰安所の事業者や募集に当たったブローカーの多くもまた、朝鮮籍の人々でした。いわば、この事件では、韓国は”加害者”の側にあります。また、韓国が主張するように、日本軍が、有無も言わさず慰安婦達を”奴隷状態”に貶めたならば、軍規違反として閉鎖する必要もなかったはずです。

 両者を取り巻く状況には隔たりがあるのですから、スマラン事件を以って、韓国人による”慰安婦の日本軍による強制連行説”を歴史上の事実と見なすことには無理があります(スマラン事件でさえ、軍規違反があったことは証明されても、軍の命令による強制連行は立証されていない…)。韓国政府が、スマラン事件を自らの主張の信憑性を高めるために利用しようとしているとしますと、どこか、詐術的な手法なのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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