万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

台湾有事は日本国の安全保障を脅かす

2008年03月13日 17時53分37秒 | 日本政治
「台湾有事は日本の問題」防衛政策局長、自民調査会で発言(読売新聞) - goo ニュース

 台湾有事が、我が国に無関係であって、何らの影響も受けないと考えるとしましたら、それは、あまりにナイ―ヴな見解であると思うのです。台湾有事とは、東アジアの国際秩序を一変する大事件となるかもしれないのですから。

 第一に、我が国は、インド洋へと通じるシーレインを脅かされることになります。台湾を攻略した中国が、台湾海峡を閉鎖したり、周辺海域の航行を妨害するような場合には、我が国の通商立国としての立場を危うくなります。中国政府の発言から判断しますと、中国が、国際法を誠実に順守するとは思えません。

 第二に、地政学的な見地に基づきますと、台湾は、日本国の安全保障と繋がっています。明治期に、日本国政府の外国人顧問であったアメリカ人のリゼンドルは、日本国の安全保障を確実にするには、樺太から台湾に至るまでの半月型の包囲網を築くべし・・・(当時にあっては、台湾出兵となったのですが・・・)と助言したと言います(伊藤潔 『台湾』 中央新書より)。現在でも、覇権主義に傾きつつある中国を牽制するためには、台湾との協力関係は安全保障の要となります。

 第三に、台湾は、自由と民主主義という価値観の共有においても、我が国が手を携えるべき貴重な友好国です。中国という共産主義の大国が、周辺諸国を華夷秩序に組み込もうとするとき、自由主義は、精神的な抵抗力となります。

 第四に、中国が武力行使に踏み切り、力ずくで台湾を制圧するとしますと、現在の東アジアの軍事バランスは大きく崩れ、”ハワイから西はアメリカ、東は中国”という中国人民解放軍の構想は、絵空事ではなくなります。

 そうして、予想される最悪の展開とは、軍事バランスの崩壊に端を発して、日本国が、中国の属国と化すことです。この事態は、何としても避けなくてはなりません。チベットを侵略して恥とも思わぬ国家ですので、我が国の防衛政策局長のみならず、国民もまた、自らの安全の問題として、台湾に関心を寄せるべきではないか、と思うのです。 

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コメント (4)
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