秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の気ままにエッセイ(人差し指日記・番外編)

2022年08月18日 | Weblog
長女が帰省する。
オーガニック絶対主義政党員?が、帰省する。
とりあえず、白砂糖を見えない場所に、隠す。
普段は赤砂糖を使用しているが、酢の物には白砂糖を使うことが多い。
とにかく、争いを避ける為に、白砂糖を隠す。

長女は、帰るなり、扇風機の掃除を始めていた。
それを終えると、台所に立ち、シンクの掃除を始めた。
ひたすら、磨いたら、洗面所に向かっていた。私は動かないで、ジッとしていた。

ヘルパーさんも十人十色だと、昔言っていた利用者の言葉をふと思い出した。
今、目の前にいるヘルパーさんは、添加物と農薬を敵とする、オーガニック絶対主義党プラス掃除魔なんだ。
掃除魔は、水回りを掃除して、座って私に聞いてきた。

『あー、スッキリした。なんか、やることあったら、言うてな』
その一言を待っていた。
「片手でも出来るけど、ついでに掃除機かけてくれる?」
『掃除機かけんでも、部屋キレイなよ』次女と同じことを言う。
「細かいホコリとか気になるけん、かけてくれたら、有難い」
どこかで言った同じセリフだ。

『母ちゃんは、壁の汚れとかは、気にならんの?』 
「かべ?」
『壁のホコリ、ヤバいよ。普通、壁のホコリを取ってから、床の掃除だろー』と、ヘルパーさんが言う。
そんなに隅から隅まで、普段はやらんよと、適当に返事をする。

友人がアメゴの唐揚げと、コロッケを持って来てくれた。
感謝!感謝!祖谷川で釣ったアメゴを食べたのは何年振りだろう。
美味しく美味しく頂く。

2日後は、年に一度の村の一斉清掃の日だ。
今まで不参加したことは無く、それなりに頑張って参加してきた。
高齢化でも、みんな頑張って各自の集落の草刈りや側溝掃除をしている。

蜂に刺されてドクターヘリで運ばれたり、側溝の蓋に指を詰めたり、
草刈りの際の石が跳ねて、車を傷つけたり、毎年何かしらの被害がでる。

祖谷に帰省したり、観光で訪れたりする人達が、気持ち良く道路を走れるのは、
そんな見えない村民の苦労があっての事だと、覚えておいて下さい。

目の前の大量の草を刈るのは、労力のみです。お金や、熱意ではありません。
村に生きると言うことは、日々、労力と自身の体力との駆け引きです。

炎天下で、家の前の僅かな草をひきながら(次女も必死で掃いていた)、長女が言う。
何回しても、すぐに葉っぱだらけになるなあ!

『家の周りだけでもキレイにしておかないと、みんなに迷惑かけるようになる』と呟いたら、
長女の中で、何かのスイッチが入った!次女のキャベツの千切りの前と同じ横顔だ! 
手袋と帽子と剪定バサミ貸して!と炎天下なのに、隣の空き家の前の草を抜き始める。炎天下なのだ。

長女が頑張るのに、私が家の中で、寛いではいられない。
小さなホウキを出して、右手で掃く。長女は、剪定バサミで小さな草を丁寧に摘んでいく。

石垣の隙間の草も、丁寧に丁寧に摘んでいく。まるで、趣味の園芸コーナーを
ライブ配信しているみたいだ。暑さで顔は真っ赤になっている。

『あのな、そんなに丁寧にせんでもええよ、道つくりの草刈りは、大きな草だけ刈るんよ』
そっと背後から声をかける。
「なんでー!そんなんでは、全然キレイにならんだろ!?」
オーガニック絶対主義党員が、真っ赤な顔で振り返る。
熊手を出すから、熊手で掃いた方が楽じゃよと、熊手を差し出すと、

長女は、『待って!ちょっと休む!なんか飲む!シンドイ!』と帽子を取る。
「一気にやった方が楽なよ」と言うと、『待って!水分摂るから待って!』とスマホと一緒に、
必死で家の中に入っていく。スマホは身体の一部みたいだ。

水分を得た長女は、再び作業を始め家の周りはキレイになった。
うっちゃんに頂いた祖谷の芋を炊いて、醤油をつけて、二人で食べる。

『母ちゃん、なんでこんなに、美味しいん?売りよる芋と、全然味が違うわ!』と感激していた。
ごうしゅ芋は、地元では〔ごうしも〕と呼ばれている。急斜面と気候の具合で、集落ごとに微妙に味は変わる。
自信を持ってお伝えします。

私は味には結構、うるさいですが、本当に小さな芋の中に、
永遠と引き継がれた祖谷の暮らしが詰まっていて、種芋が数十年の暮らしを生き、
継がれていく。祖谷のごうしもは、祖谷山の暮らしの全てです。食文化の歴史そのもの。
そして、宝物です。 

長女と過ごした3日間も終わり、長女は心配しながら、帰って行った。
人差し指一本のケガで、何人の人達に迷惑をかけたんだろう。

逆に何人の人達の利益になったんだろう。病院の領収書の束を見ながら、
社会は何かしらのハプニングを軸にして、シーソーみたいに動いている。
シーソーに乗ったり、降りたりを繰り返しながら、毎日が繰り返される。
宿題の無い、私の長い夏休みは、もうすぐ終わる。

セミの声。祖谷川の音。ソバとんぼが、木立の向こうを流れるように飛んでゆく。
慣れ過ぎたヤマガラの愛しさ。
盆も過ぎましたが、今年も沢山の消えてしまった生命の魂に向けて此方からの


         合掌
























コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする