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第三者の債権侵害に対し、不法行為責任追及や、侵害行為差止め(妨害排除)請求ができるか。

2013-09-13 15:51:20 | シチズンシップ教育
 債権は相対的な権利であるといわれている。そのことと、債権が第三者により不法に侵害された場合に、債権者が、その第三者に対して、不法行為責任を追及し、あるいは侵害行為の差止めを請求することができる場合もあるとされていることとの関係について論ぜよ。(平成6年 旧司法試験 民法 第1問)


1 債権の相対性という観点から、(1)債権者の意思への依存、(2)物的支配の希薄さという二つの側面が債権にはある。
 (1)債権者の意思への依存
 債権が人に対する権利であるということは、それが債権者の意思に依存したものであることを意味する。債権が実現するか否か(履行されるかどうか)は債務者の意思次第であり、債権者としては履行を促す、そして、不履行があれば債務者に対して強行手段(強制執行や解除)をとるしかない。
 そうすると、XがYに対して有するのと同一の内容の債権をZが取得することによって、Xの権利が事実上害することがあったとしても、それがYの意思によるものである以上、Yが不履行責任を負うことはあっても、Zに何らかの責任が生じることはない。つまり、第三者ZによってXの債権が侵害されるということはありえないはずである。
 よって、債権侵害が不法行為とされる場合に問題となる。

 (2)物的支配の希薄さ
 債権が人に対する権利であるということは、それが物に対する強い支配力を持たないことを意味する。
 債権の目的物に対する物的支配が間接的なものにとどまることになる。例えば、賃借権は物の利用に関する権利であるが、それは債務者に貸すことを求める権利であって物に対する直接の権利ではない。そうすると、実際に貸してもらえるか否かは債務者の意思に依存することになる。
 よって、侵害行為の差止めを請求(以下、「妨害排除請求」という)する場合に問題となる。


2 この二つの側面より、特に1(1)より、第三者の債権侵害による不法行為について、債権の相対性ゆえに不法行為が成立しないのではないかということが問題となる。

 以下、債権侵害を類型に分け、不法行為の成立を検討する。

  a債権の帰属を侵害(準占有者として弁済受領)

  b債権の目的を侵害で、第三者が単独で目的物を破壊し債権が消滅した場合
  b´間接損害(労働者が事故で負傷したために労務の提供ができなくなる場合)

  c債権の目的を侵害で、第三者が債務者とともに目的物を破壊したが、債権は不消滅である場合
  c´引き抜き(雇用されている労務者をさらに雇用する場合)

 このうち、abb´は、債権が消滅するので、当然に不法行為が成立する。
 しかしcc´の場合には債権は損害賠償請求権として存続するので、abと同じに考えることはできない。cに関しては、通謀がある場合に限って不法行為の成立を認めるべきである。

 よって、aないしc(b´、c´含め)の場合、債権者が、第三者に対して不法行為責任を追及することが出来る場合もあるといえる。


3 債権の相対性から、特に1(2)より、債権侵害に対して、妨害排除請求権も認めることは考えられないのではないかということが問題となる。

 第一に、引渡債務については、目的物の所有権に基づく妨害排除請求権(物権的請求権)が認められれば足りることが多い。例えば、購入した不動産に不法占拠者がいるという場合は、物権的請求権で処理できる。行為債務でも給付が一回限りのものについては、妨害排除を求めても意味がない。
 継続的な給付を対象とする行為債務、例えば、対抗力としての登記を有する土地賃借権者は、相手方が二重賃借人であれ不法占拠者であれ、妨害排除請求を行うことができると判例上考えられる。

 第二に、妨害排除請求のためには他の制度や法理を援用することがある。
 一つは占有訴権であり、もう一つは、債権者代位権の転用という法理である。XがYから不動産を賃借していたが、その使用をZが妨害しているという場合、YがZに対して有する所有権に基づく妨害排除請求権をXがYに代わって(代位して)行使できると判例上考えられる。

 上記考え方は、第一の考え方については、対抗力の有無を基準とすることの当否で問題があり、第二の考え方は、占有訴権や代位権を用いることが出来ない場合(占有移転前の場合、相手方が二重賃借人であり賃貸人に対しては利用権限を主張できる場合)の処理の仕方で問題である。

 そこで、第一の考え方につき、現行法では、賃借権は債権として構成されているが、特別法により不動産賃借権は物権に近い性質を持つに至っている(賃借権の物権化)。不動産賃借権に妨害排除請求権が認められるのはこのような事情から正当であり、保護の対象を対抗要件ある賃借権に限定する必然性はないといえる。

 第二の考え方につき、占有や対抗要件がなくても不法占拠者に対して妨害排除請求を認めるというのはよいが、二重賃借人に対しても妨害排除請求を認めるというのは行き過ぎであり、この場合は対抗要件の登記を備えてはじめて妨害排除ができると解すべきである。

 従って、賃借権は、妨害排除請求出来る場合もあるといえる。

以上
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