『国家はなぜ衰退するのか』
ダロン・アセモグル ジェイムズ・A・ロビンソン 著 鬼澤 忍訳
http://www.jiid.or.jp/ardec/ardec49/ard49-bookinfo.html
毎日新聞社 新聞研究本部 位川一郎 氏の論評より。
●繁栄と貧困を分けるのは政治と経済における「制度」
●国家の制度は、権力が社会に広く配分され大多数の人々が経済活動に参加できる「包括的制度」と、限られたエリートに権力と富が集中する「収奪的制度」に分けることができる(「包括的」という言葉はやや分かりにくいが、一般的な感覚では「民主主義的」に近いだろう)。
包括的制度のもとでは、法の支配が確立し、所有権が保護され、イノベーションが起こりやすい。
収奪的な政治制度と経済制度のもとでは、その反対のことが起きる。
そして、「経済的な成長や繁栄は包括的な経済制度および政治制度と結びついていて、収奪的制度は概して停滞と貧困につながる」と著者は主張する。
●1346年のペスト襲来という「決定的な岐路」
●産業革命がイングランドで始まり大きく前進したのは、1688年の名誉革命が包括的政治制度をもたらしたためだった。
●現代においても、ジンバブエ、コロンビア、北朝鮮、ウズベキスタンなど多くの国で収奪的制度の悪循環が繰り返されている。(第11章~第13章)
●収奪的な政治制度から包括的政治制度への移行がなければ、中国の成長はいずれ活力を失うだろう。(第15章)
●収奪的制度から包括的制度に移行するにはどうすればよいか。著者は「移行をたやすく達成する処方はない」と言い切る。
●第15章の最終節で、包括的制度の強化に成功した国に共通するのは「社会のきわめて広範かつ多様な集団への権限移譲に成功したことだ」と指摘している。困難ではあっても、各国の内側で政治的な多元主義が育つのを期待するしかないということだろう。納得できる見解といえる。
●本書は主に一国内の収奪的制度に着目しているが、国際的な収奪構造も無視するわけにいかない。だとしたら、先進国の側も貧困の克服のために、従来とは異なる関与の仕方を探るべきではないだろうか。
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