事案:
YはAに対して、通謀虚偽表示を理由として、甲土地の所有権移転登記手続請求訴訟を提起(第一訴訟)し、Y勝訴。
確定判決後、強制執行の申立ての前に、XはAを債務者とする強制執行事件で、上記事情を知らないまま、甲土地を競落し、所有権移転登記した。
Yは、Xに対して、真正な登記名義回復のための所有権移転登記手続請求訴訟を提起(第二訴訟)。
Yが、第一訴訟判決の既判力のXに対する拡張を主張し、裁判所の判断が求められた。Xが、第一訴訟の当事者Aの承継人として、第一訴訟の既判力が及ぶかが問題である。
問題となる条文:
民事訴訟法115条1項3号
(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一 当事者
二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。
条文のどの文言解釈が問題か:
当事者の口頭弁論終結後の「承継人」の解釈。
自分と反対の考え方:
権利関係の承継のみを基準として承継人に該当するか否かが決定されるとする見解(形式説)。
上記考え方の問題点:
本件の場合は、形式説を取った場合は、Xは、Aの口頭弁論終結後の承継人に該当し、第一訴訟確定判決の既判力を及ぼされることとなる。
しかし、Xに対する既判力拡張の作用は、第一訴訟口頭弁論終結時において、YがAに対して所有権に基づく所有権移転登記請求権を有していたことを、XがYとの関係で争えなくなるだけであり、Xが「固有の抗弁」を主張することは既判力によって妨げられない。XはAが無権利者であったことに善意であったと認められ、民法94条2項の善意の第三者に該当するとして、Yの請求は棄却されると考えられる。
形式説の場合には、既判力が及ぶとされること自体を理由に、本来実体法上その正当な権利を有しているXのようなものにまで裁判が強いられることとなり問題である。訴訟経済上もまた問題である。
自分の考え方:
権利関係の承継を基準として、承継人とされる場合であっても、第三者が実体法上保護されるべき独自の地位を持つ(「固有の抗弁」を有する)ときは、承継人として扱うべきではなく、第一訴訟の既判力の拡張を受けないと考える(実質説)。
本件では、Yは、土地甲につきA名義でなされた所有権取得登記が、通謀虚偽表示によるもので無効であることを、善意の第三者であるXに対抗することはできないのであるから、Xは土地甲の所有権を取得するに至ったものであるというべきである。このことは、YとAとの間の第一訴訟の確定判決の存在によって左右されず、その既判力はAから甲土地を第一訴訟の確定判決後に承継しているとしてもXには及ばない。
よって、Yの主張は排斥されるべきと考える。
→115条1項3号により既判力を口頭弁論終結後の承継人に拡張することが許されるのは、被承継人により手続保障が充足されていたことによる。
そのため、承継人に固有の地位があるときは、少なくともその点について手続保障が充足していたとはいえない。
よって、そのような場合は、承継人とはいえない。
以上
最判昭和48年6月21日民集27巻6号712頁(主要判例236、百選4-87)
YはAに対して、通謀虚偽表示を理由として、甲土地の所有権移転登記手続請求訴訟を提起(第一訴訟)し、Y勝訴。
確定判決後、強制執行の申立ての前に、XはAを債務者とする強制執行事件で、上記事情を知らないまま、甲土地を競落し、所有権移転登記した。
Yは、Xに対して、真正な登記名義回復のための所有権移転登記手続請求訴訟を提起(第二訴訟)。
Yが、第一訴訟判決の既判力のXに対する拡張を主張し、裁判所の判断が求められた。Xが、第一訴訟の当事者Aの承継人として、第一訴訟の既判力が及ぶかが問題である。
問題となる条文:
民事訴訟法115条1項3号
(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一 当事者
二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。
条文のどの文言解釈が問題か:
当事者の口頭弁論終結後の「承継人」の解釈。
自分と反対の考え方:
権利関係の承継のみを基準として承継人に該当するか否かが決定されるとする見解(形式説)。
上記考え方の問題点:
本件の場合は、形式説を取った場合は、Xは、Aの口頭弁論終結後の承継人に該当し、第一訴訟確定判決の既判力を及ぼされることとなる。
しかし、Xに対する既判力拡張の作用は、第一訴訟口頭弁論終結時において、YがAに対して所有権に基づく所有権移転登記請求権を有していたことを、XがYとの関係で争えなくなるだけであり、Xが「固有の抗弁」を主張することは既判力によって妨げられない。XはAが無権利者であったことに善意であったと認められ、民法94条2項の善意の第三者に該当するとして、Yの請求は棄却されると考えられる。
形式説の場合には、既判力が及ぶとされること自体を理由に、本来実体法上その正当な権利を有しているXのようなものにまで裁判が強いられることとなり問題である。訴訟経済上もまた問題である。
自分の考え方:
権利関係の承継を基準として、承継人とされる場合であっても、第三者が実体法上保護されるべき独自の地位を持つ(「固有の抗弁」を有する)ときは、承継人として扱うべきではなく、第一訴訟の既判力の拡張を受けないと考える(実質説)。
本件では、Yは、土地甲につきA名義でなされた所有権取得登記が、通謀虚偽表示によるもので無効であることを、善意の第三者であるXに対抗することはできないのであるから、Xは土地甲の所有権を取得するに至ったものであるというべきである。このことは、YとAとの間の第一訴訟の確定判決の存在によって左右されず、その既判力はAから甲土地を第一訴訟の確定判決後に承継しているとしてもXには及ばない。
よって、Yの主張は排斥されるべきと考える。
→115条1項3号により既判力を口頭弁論終結後の承継人に拡張することが許されるのは、被承継人により手続保障が充足されていたことによる。
そのため、承継人に固有の地位があるときは、少なくともその点について手続保障が充足していたとはいえない。
よって、そのような場合は、承継人とはいえない。
以上
最判昭和48年6月21日民集27巻6号712頁(主要判例236、百選4-87)
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