インフルエンザ、流行中です。
咳の場合は、咳エチケットを。
進撃の咳エチケット、実践を!⇒ http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/A2_2.pdf
インフルエンザ、流行中です。
咳の場合は、咳エチケットを。
進撃の咳エチケット、実践を!⇒ http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/A2_2.pdf
おたふく風邪について、詳しく書かれている国立感染症研究所の先生による文献です。
インフルエンザのように抗ウイルス薬がなく、文献にもありますように、「集団生活に入る前にワクチンで予防して おくことが、現在取り得る最も有効な感染予防法」です。
中央区は、ワクチンによる予防の重要性を認識し、一部接種費用の助成券を出すようにしています。
中央区のご努力にも感謝しつつ、この予防接種も定期の予防接種に組み込まれるべきものであるという思いも込めて、当院では、その助成券のあるかたには、無料接種の対応を致しております。
おたふく風邪の合併症のひとつ難聴も、ワクチンにより防いで行きたいと考えます。
耳鼻科の先生の統計では、おたふく風邪にかかった子の1000人に一人は、難聴になると言われています。高い確率です。http://www.jibika.or.jp/members/jynews/info_otafuku.pdf
また、先日の報道でもあったように、その難聴の程度も重度であるとのことです。http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/936210602f7fd79fe7b5142b601a8e34
おとなのかたも、かかると重いし、難聴もやはり起こりうるので、予防接種をされたか疑わしい方は、接種されることをお勧めします。なお、過去にかかっていたり、予防接種されていたとしても、問題はありません。当院でも、ご相談下さい。
なお、おたふく風邪は、一年を通じ見られ、季節差はないと言われています。
現在、ものすごくおたふくが流行っている状況ではありません。https://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/IDWR2017/idwr2017-33.pdf
*******中央区のおたふく一部助成*************
http://www.city.chuo.lg.jp/kenko/hokenzyo/sessyu/suitouotahukuitibujosei.html
対象者
1回目:満1歳から小学校就学前年度の方
2回目:小学校就学前年度の方
上記年齢で接種時に中央区内に住所を有する方
助成額
4,000円(1回につき助成)
区内実施医療機関で接種した際の費用から4,000円差し引いた額を医療機関でお支払いください。接種費用は医療機関によって異なりますので、事前にご確認ください。
助成期限
小学校就学前年度の3月末まで
接種場所
中央区内の指定医療機関
助成方法
保護者の方が、「中央区おたふくかぜワクチン接種予診票兼助成金申請委任状」(以下、予診票といいます。)を医療機関に提出することで、接種費用の助成申請等が医師会に委任されます。区への直接の助成申請等のお手続きは不要です。
「予診票」、「お知らせ」、「実施医療機関名簿」を生後11カ月に達する月に郵送しますので、予診票の委任状欄に必ず日付・保護者氏名を記入し、捺印(※スタンプ式不可、朱肉を使用してください)のうえ、区内実施医療機関にご持参ください。
*******国立感染症研究所HP****************
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ra/mumps/392-encyclopedia/529-mumps.html
流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
流行性耳下腺炎(mumps)は2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症 であり、通常1~2 週間で軽快する。最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合がある。
疫 学
流行性耳下腺炎は、5世紀にヒポクラテスがThasus島で、耳の近くが両側あるいは片側のみ腫脹する病気が流行したのを記載したのが最初であり、耳周辺の痛みを伴うこと、睾丸が腫脹することも記載されている 1)。ムンプスという名前の由来は不明であるが、ひどい耳下腺炎を起こした患者がぼそぼそ話す(mumbling speech)ことによるのではないか、と報告されている 1)。
その後、1886 年にHirsh がこの病気は世界中に広く存在することを報告し 2)、1934年にJohnsonとGoodpasture が、この疾患の原因微生物はフィルターを通過するウイルスであると報告した 1)。
流行性耳下腺炎は我が国でも毎年地域的な流行がみられており、1989 年の流行までは3~4年周期で増減が見られていたが、同年のMMR ワクチンの導入により、1991年にはサーベイランスが始まって以来の低い流行状況となった。その後緩やかに患者報告数が増加し、1993年にMMRワク チンが中止されたこともあって、1994年以降再び3~4 年周期での患者増加が見られるようになっている。感染症法施行以降の1999年4月~2000年12月の感染症発生動向調査から見ると、全国約3,000 の定点医療機関から、毎週1,100~4,800人程度の報告があった。2000年末より、最近10年間の当該週に比べて定点当たり報告数がかなり多い状 態が続き、2001年の全国の定点からの患者報告総数は254,711人となり、過去10年間で最多であった。しかし、2002 年には182,635
人(暫定データ)となり、減少がみられた。
報告患者の年齢は4歳以下の占める割合が45 ~47%であり、0歳は少なく、年齢とともに増加し、4歳が最も多い。続いて5歳、3歳の順に多く、3~6歳で約60%を占めている 2)。
病原体
本疾患の原因であるムンプスウイルスはパラミクソウイルス科のウイルスで、表面にエンベロープをかぶったマイナスセンスの1本鎖RNA ウイルスである。大きさは100 ~600nm で、主に6つの構造タンパクを有している。エンベロープには2つの糖タンパク(hemagglutinin‐neuraminidase glycoprotein、およびfusion glycoprotein )を有し、この2 つのタンパクに対する抗体が感染から宿主を防御すると言われている。
臨床症状
本症の臨床経過は、基本的には軽症と考えられている。2~3週間の潜伏期(平均18 日前後)を経て、唾液腺の腫脹・圧痛、嚥下痛、発熱を主症状として発症し、通常1 ~2週間で軽快する。
唾液腺腫脹は両側、あるいは片側の耳下腺にみられることがほとんどであるが、顎下腺、舌下腺にも起こることがあり、通常48時間以内にピークを認める。 接触、あるいは飛沫感染で伝搬するが、その感染力はかなり強い。ただし、感染しても症状が現れない不顕性感染もかなりみられ、30~35%とされている。 鑑別を要するものとして、他のウイルス、コクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルスなどによる耳下腺炎、(特発性)反復性耳下腺炎などがある。反 復性耳下腺炎は耳下腺腫脹を何度も繰り返すもので、軽度の自発痛があるが発熱を伴わないことがほとんどで、1~2 週間で自然に軽快する。流行性耳下腺炎に何度も罹患するという訴えがある際には、この可能性も考えるべきである。
合併症としての無菌性髄膜炎は軽症と考えられてはいるものの、症状の明らかな例の約10%に出現すると推定されており 4)、Bang らはムンプス患者の62%に髄液細胞数増多がみられ、そのうち28%に中枢神経症状を伴っていたと報告している 5)。思春期以降では、男性で約20~30%に睾丸炎 4)、女性では約7%に卵巣炎を合併するとされている。また、20,000 例に1例程度に難聴を合併すると言われており、頻度は少ないが、永続的な障害となるので重要な合併症のひとつである。その他、稀ではあるが膵炎も重篤な合併症の一つである。
病原診断
ウイルスを分離することが本疾患の最も直接的な診断方法であり、唾液からは症状出現の7日前から出現後9日頃まで 1)、髄液中からは症状出現後5~7日くらいまで分離が可能であるが、少なくとも第5病日までに検体を採取することが望ましい。
しかしながら、ウイルス分離には時間を要するため、一般的には血清学的診断が行われる。
これには種々の方法があるが、EIA 法にて急性期にIgM 抗体を検出するか、ペア血清でIgG 抗体価の有意な上昇にて診断される。しかし、再感染時にもIgM 抗体が検出されることがあり、初感染と再感染の鑑別にはIgG 抗体のavidity の測定が有用と報告されている 6)。また最近では、RT‐PCR 法にてウイルス遺伝子を検出することが可能となり、これによりワクチン株と野生株との鑑別も可能である。
治療・予防
流行性耳下腺炎およびその合併症の治療は基本的に対症療法であり、発熱などに対しては鎮痛解熱剤の投与を行い、髄膜炎合併例に対しては安静に努め、脱水などがみられる症例では輸液の適応となる。
効果的に予防するにはワクチンが唯一の方法である。有効性については、接種後の罹患調査にて、接種者での罹患は1 ~3%程度であったとする報告がある。接種後の抗体価を測定した報告では、多少の違いがあるが、概ね90%前後が有効なレベルの抗体を獲得するとされてい る。
ワクチンの副反応としては、接種後2週間前後に軽度の耳下腺腫脹と微熱がみられることが数%ある。重要なものとして無菌性髄膜炎があるが、約 1,000~2,000人に一人の頻度である。また、以前にはゼラチンアレルギーのある小児には注意が必要であったが、各ワクチンメーカーの努力により、 ムンプスワクチンからゼラチンは除かれるか、あるいは低アレルゲン性ゼラチンが用いられるようになり、ゼラチンアレルギー児に対しても安全に接種が行われ るようになってきた。
患者と接触した場合の予防策として緊急にワクチン接種を行うのは、あまり有効ではない。患者との接触当日に緊急ワクチン接種を行っても、症状の軽快は認 められても発症を予防することは困難であると言われている。有効な抗ウイルス剤が開発されていない現状においては、集団生活に入る前にワクチンで予防して おくことが、現在取り得る最も有効な感染予防法である。
感染症法における取り扱い(2012年7月更新)
「流行性耳下腺炎」は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週毎に保健所に届け出なければならない。
届出基準はこちら
学校保健安全法における取り扱い(2012年3月30日現在)
「流行性耳下腺炎」は第2種の感染症に定められており、耳下腺、顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止とされている。ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りでない。
また、以下の場合も出席停止期間となる。
・患者のある家に居住する者又はかかっている疑いがある者については、予防処置の施行その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
・発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間
・流行地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間
【文献】
1)Cherry J.D.Mumps virus.In:Textbook of pediatric infectious diseases (ed by Ralph D. Feigin, James D. Cherry, 1998; pp2075‐2083, W.B.Saunders Company, USA.
2)国立感染症研究所、厚生労働省健康局結核感染症課:流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)1993 ~2002年病原微生物検出情報(月報)IASR.24 :103‐104, 2003
3)Hirsch A.Handbook of Historical and Geographical Pathology. Translated by Charles Creighton.London,1886
4)Katz SL, Gershon AA, Hotez PJ:Mumps.Krugman's Infectious Diseases of Children,10th ed. 1998, pp280‐ 289 Mosby‐Year Book,Inc.
5)Bang HO, Bang J. Involvement of the central nervous system in mumps. Bull Hyg 19:503,1944
6)Gut JP, Lablache C, Behr S, Kirn A. Symptomatic mumps virus reinfections.J Med Virol. 45:17‐23,1995
(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子)
小児医療について、重要な内容が学べます。
私自身も、小児科医師として、かかりつけの親御さんがたに地域で伝えて行かねばならない内容となっています。
医療的ケア児の保育・教育、児童虐待などとともに、町医者小児科医としてなんとかせんばならないと考える重要問題のひとつが、こどもの自殺。
なんといっても、子どもの死因の上位を占めています。
自殺者全体の数は、03年の3万4427人をピークに減少傾向で、16年は2万1897人。06年施行の自殺対策基本法に基づく、相談窓口の整備などが背景にあるとされる。一方、小中高校生の自殺者はこの10年、年間300人前後で推移し、350人を超えた年も。厚生労働省によると15~19歳では自殺が死因の1位、10~14歳では2位。
本日から、朝日新聞が特集を組んで下さっています。
中央区の取り組みも見直していきたいと考えます。
対策の重要な柱は、ひとりではないというメッセージだと、私は考えます。
誰かに相談してほしいと願います。
かかりつけ小児科医もそのひとりです。
******朝日新聞20170421******
http://www.asahi.com/shimen/20170421/
子どもたちが自ら命を絶つ悲劇が繰り返されている。日本全体の自殺者数は減っている中で、小中高校生では減っていない。子どもの命をみつめる企画「小さないのち」の新シリーズ「大切な君」では、子どもの自殺を防ぐためにできることを考えたい。▼39面=SOS、どう受け止める
警察庁の統計によると、2016年、320人の小中高校生が自殺で亡くなった。小学生12人、中学生93人、高校生215人。3分の2は男子だった。
自殺者全体の数は、03年の3万4427人をピークに減少傾向で、16年は2万1897人。06年施行の自殺対策基本法に基づく、相談窓口の整備などが背景にあるとされる。一方、小中高校生の自殺者はこの10年、年間300人前後で推移し、350人を超えた年も。厚生労働省によると15~19歳では自殺が死因の1位、10~14歳では2位だ。
16年の小中高生の自殺の原因(複数の場合あり)を警察庁の統計でみると、「学業不振」など学校問題が36・3%、「親子関係の不和」など家庭問題が23・4%、「うつ病」など健康問題が19・7%。いじめが原因とされたのは6件(全体の1・9%)だった。
高橋祥友・筑波大教授(精神科医)は「子どもの自殺は、いじめや友人関係といった学校に関わる要因のほか、家庭や、精神疾患など複数の要因からリスクの高い状態となり、何らかのことが引き金になって起きる。いじめは深刻な問題だが、いじめ予防だけでは不十分だ」と話す。
日本では子どもの自殺の実態把握や再発防止の取り組みが十分とはいえない。どんな要因が重なるとリスクが高まるのか、などは国内の統計ではわからない。
いじめが疑われるケースでは、いじめ防止対策推進法に基づき、真相解明と再発防止のための調査が義務づけられている。だが、調査結果は十分共有されず、いじめを苦にした自殺は後を絶たない。いじめ以外のケースも文部科学省が学校や教育委員会に調査を求めているが、義務ではない。
北日本の公立中学校の教師(60)によると、数年前に女子生徒が自殺未遂した際、教委が原因を問い合わせてきたが、いじめでないとわかると対応は学校と保護者任せになった。教師は「原因が何であろうと子どもの命が大切なことに違いはない。すべてを予防するべきだ」と感じたという。
海外では、国の主導で自殺の背景を分析し、予防につなげる動きがある。英国では16年、研究チームが、心の問題があって自殺した10代のケースを分析。「54%に自傷行為の経験」などの分析を踏まえた予防策を5月に発表する。米国では事故や虐待、自殺などによる死亡事例の検証を予防につなげる制度が根付く。
子どもの自殺について分析する東京都監察医務院の福永龍繁院長は「10代の自殺は実態がわからないことを出発点として、対策を考えていくべきだ」と話す。
小児科医のマインド。
「狭い意味での医学的なことだけ、例えば『ぜんそくの治療のためには定期通院が必要です』と言っているだけでは、それ自体は正しいけれど、実際に通院できないとその子のぜんそくはよくならない。だとすれば、その原因にまで踏み込む必要があります」
同感です。
『病気だから、保育園、休んで下さい』と言っているだけでは、突然の仕事の休みをとることは難しいです。『クリニックが、その病気の子の静養の場所をつくる』ということで病児保育を、私は始めました。
『不登校だから、教育委員会に相談してください』と言っているだけでは、不登校の原因やその解決に至りません。一緒に考える必要があると思います。
事故を起こした。『気をつけて下さい』言っているだけでは、また、同じ事故を繰り返す子どもが出てきます。事故の状況を分析し、より事故が起こらないまちづくりが必要です。
などなど、挙げればきりがない課題がそこにはあります。
子どもの健やかに育つ環境を、作って行く小児科医の重要な使命があると考えています。
**************毎日新聞 長野県版********************************
http://mainichi.jp/articles/20170304/ddl/k20/040/249000c
信州人軽快問答
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病の陰に子どもの貧困 小児科医・和田浩さん /長野
毎日新聞2017年3月4日 地方版
長野県
「がんばるお母さんたち認めて」
子どもの貧困問題に取り組む飯田市の小児科医、和田浩さん(61)。軽快な問答になりにくい深刻なテーマだが「がんばっているお母さんたちを認めてあげて」と熱く語ってくれた。【長沢英次】
--取り組みのきっかけは。
「母親自身と子ども4人のうちの3人がぜんそくの患者さんがいました。定期通院が必要なのに予約の日に来ない。発作を起こすと訪れるので、なぜ通院が必要なのかを説明すると、お母さんは『分かりました』と言って次回の予約をして帰る。だけど来ない。僕もさじを投げて『どうせ来ないよね』とスタッフと話しているような状態でした。ある時、思い切って『経済的に大変なんですか』と聞いてみたら、そうでした。4人分のぜんそくの薬の支払いは院外薬局で1万円を超える。後から返ってはくるけど、とりあえず1万円以上の持ち合わせがないと来られない、と」
「うちの職員が付き添って手続きに行き、生活保護を受けられるようになり、その後は予約の日に必ず来てくれました。その間に子どもたちのぜんそくはよくなって、定期通院は必要なくなりました」
--子どもの貧困の現状は。
「どんどん悪くなっています。小児科医って、子どものためだったら採算関係なく一肌脱ぎたいと思っている人が多いんです。だから貧困が見えるようになってきたという側面もありますが、それ以上に状況が悪化しています。患者さんから『今日のお米がありません』という話を聞くこともあり、うちの病院で食料、衣類、学用品の提供もしています」
--生活保護受給の手助けや食料の支援まで。お医者さんは病気の治療が責任の範囲と思っていましたが。
「狭い意味での医学的なことだけ、例えば『ぜんそくの治療のためには定期通院が必要です』と言っているだけでは、それ自体は正しいけれど、実際に通院できないとその子のぜんそくはよくならない。だとすれば、その原因にまで踏み込む必要があります」
--生活保護バッシングに見られるように、貧困層に冷たい世の中のように思います。
「貧困層以外も含めたお母さんたちへのプレッシャーが大きいと感じます。お母さんたちは、自分はだめだと思わされている。『私、ちゃんとできてない』と。お母さんこうしましょう、と小児科医もよく言いますが、完全にできないといけない、というニュアンスで伝わっている場合がある。小児科医はよかれと思って言っていても、お母さんたちは、がんばった部分が認められず、ちょっと不足した部分だけが指摘されたと感じてしまう」
「言っている医者は自分の生活がパーフェクトかというと決してそうじゃない。メタボだったり、たばこがやめられなかったり、酒を飲み過ぎていたりするわけです。でも人間ってそういうものですよね。なかなかきちんとできないけど、まあほどほどにお互いがんばってるね、という感じで生きている」
「特に貧困層の親はつっこみどころが多い人がいるんです。私たちの中には『貧乏だけどけなげな親子』というイメージがありますが、そこから外れる人が多い。貧困の中でストレスを抱えて育ったのでコミュニケーションが上手じゃなく、すぐにキレるとか未熟なところがある。だから周りから同情されず、バッシングされてしまう。『あんなんじゃだめだよ』と切り捨てられる。そういう人たちをどう見るか。100点満点を基準にしてマイナス評価をするんじゃなくて、0点を基準にすれば、がんばった部分が見えるんです」
「仕事帰りにコンビニで弁当を買って帰って子どもに食べさせたと聞くと、母親としていかがなものかと思いますよね。本人もそう思っています。『またコンビニ弁当にしちゃった。あたしってだめだ』と。でも、子どもを飢えさせちゃいけないから、とにかく何か食べさせなきゃとコンビニに寄って、それなりに栄養を考え、子どもが好きそうな弁当を選んでいると思いますよ。それは100点ではないけれど、0点でもない。50点くらいあげたっていいんです。『仕事で疲れてるのに、とりあえず子どもを飢えさせることはしなかったね。お母さん、よくがんばったよ』って言ってあげるべきなんです」
「自己肯定感を高めることが、貧困に負けずに生きていく上で大事です。僕らがどういう声のかけ方をするか。だめだ、だめだと言われ続けたら『私はどうせだめだ』と思って、がんばる努力なんかしませんよ。『またこれやってないね、だめだね』って言うんじゃなくて『がんばったね。大変だったね』と、がんばったところを見つけて声をかけてあげるべきです。全てのお母さんは、どんなにだめなお母さんと見られていても、虐待をしているお母さんでも、がんばっているところはある。100%だめな人じゃないんです」(さまざまな分野の人へのインタビューを随時掲載します)
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■人物略歴
わだ・ひろし
1956年、飯田市生まれ。健和会病院副院長。
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