波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

波紋   第20回

2008-09-05 10:17:29 | Weblog
この事件があって、N社は歴史を大きく変えることになった。誰も予想することが無いことでもある。T社もD社も資本参加してもらい、関係会社ではあったが経営権の譲渡は完全に今までと異なるスタートになる。そのことは大きな社員全体の運命を左右することになることになることを誰も信じることは出来なかったし、想像も出来ないことであった。
そこには大きな権力と支配が生まれ、家族的な人間関係で成り立ってきたものは一切排除され、すべてが上からの指示、命令での行動になる。
和夫は入社早々と言うこともあり、会社の変化についてあまり関心はなかった。
いわれたことを普段どおり、処理していく。会社から帰れば二人の娘の寝顔を見て安心して、酔っ払って気持ちよく寝ること、休みの日には娘達と一緒に無邪気に騒ぎ、加代子の駄洒落を聞いていればよかったのである。
そんな中で一つだけ気になることがあった。彼のお客さんは前の担当から引き継いだところが多く、そのお客さんは昔からの古い所が多かった。
その一社に担当者同士で飲み友達になった所があった。夕方、そのお客さんへ行き会社の退け時に待ち合わせをして駅の近くで割り勘で一杯やるのである。
「類は友を呼ぶ」ではないが不思議とそんな飲み友達は出来るようである。
話は愚痴になる事があったり、家族のことであったり、同業者のことであったり、
客筋の動向であったりするが、結構ストレスの発散で和夫はその時間が楽しかった。
その内、鈴木と言うその担当者から妙な話を聞くことになったのである。
「内の専務が酒は全然飲めないのに、毎日キャバレー通いなんだよ。」
「えー。堅物の専務が、だって、彼酒飲めないし、あんな所へ行って何が面白いのかな。」
「最初は、お客さんに紹介されて連れて行かれたらしいんだけど、この頃は一人で出かけるらしく、時間になると会社にいないみたいなんだ。」
「そんな事言ったって、これからキャバレーへ行きますとは言え無いだろうに。」
「会社を出る時はマージャンに誘われているのでと言い訳しているみたいなんだけど、」「ふーん。マージャンか」和夫もマージャンは出来ないわけじゃないし、
営業マンなら、一応出来ないとお付き合いが出来ないからと覚えたのだが、生来あまり好きになれなくてあまりやる機会は無かった。
ある時、所長の小林に誘われて、接待マージャンをした時に一回変わってやらされて、あまりの下手さに「もうやらなくて良いよ」と言われてからやらないことにしていた。マージャンと聞いて、和夫はそんなことがあったなあと思い出しながら聞いていた。

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