波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

波紋    第21回

2008-09-08 10:25:44 | Weblog
ある日、いつものように仕事でその木下商事を訪問して帰ろうとした時、奥から出てきた専務から声がかかった。「松山さん暫くだね。今度N社へ移ったんだってね。これからもよろしくね。ちょっと出掛けるんだけどたまにはちょっと付き合わない。」お客さんからのお誘いであるし、めったに無いことなのですぐ返事をしたかったが「ちょっと、会社へ電話をさせてください」と断った。
電話に出た事務の女性に「松山さん、又直帰なの、ちゃんと帰ってこないと駄目じゃないの。今所長に代わるわ」「所長ですか。珍しく木下専務から声がかかりましてね。例のちょっと気になる話のことも有るので」「ご苦労さん、あまりのみ過ぎないようにね。専務によろしく言って下さい。」電話を切った小林は、報告を受けた木下専務の行動の実態が何か分るかもしれないと債権の与信を思い、何か分ればと考えていた。
「所長からよろしくとのことでした。」「あーそう、じゃ行こうか。」二人は気楽に会社を出た。
居酒屋で暫く腹ごしらえをして時間をつぶした後、専務はすたすたと歩き始めた。
どうやらそこは上野の駅の近くにある某キャバレーのあるところである。和夫は
恥ずかしい話だがそこがどんなところか全く知識が無かった。行った事が無かったのである。営業接待と言う習慣があってお客さんを食事の後、二次会でクラブやバーへ案内し接待をすることは聞いてはいたが、実際にそんな場面を経験していなかったし、機会が無かった。そのビルの前に行くとエレベーターの前に呼び込みのボーイが案内に立っており、道を挟んだとおりの向こうでも同じように呼び込みが大きな声を上げていた。
エレベーターはその店に直行になっていて下りると、そこがそのまま入り口であり、女性がドレスでお出迎えである。店内は少し薄暗く目が慣れるまで見にくいが
階段式にテーブルが並んでおり、その中心にステージがあり、そこが照明で照らされている。ボーイの案内でテーブルに案内されて座るとすぐお絞りが手渡された
ボーイは専務と顔見知りなのか、そっと耳打ちをしている。「いつもの人を頼むよ」「かしこまりました。」そしてビール、おつまみ、フルーツなど、セットになったようなものがずらりとテーブルに並ぶ。
程なく「いらっしゃい。ようこそ」と黄色い声がして振り向くと何人かの女性が来てそれぞれの間に座る。乾杯で始まるともうその後は騒音と音楽と周りの騒がしさで専務の様子も分らなくなり、気にならなくなってくる。
特別な感慨もなく、ぼんやりとビールを飲みながら女性に質問したりして時間をつぶしていたが、急に時間が気にない始めていた。

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