ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

柿葺落四月大歌舞伎 「寿曽我対面」「襲名披露口上」「籠釣瓶花街酔醒」 @名古屋市・御園座

2018年04月13日 | 歌舞伎・文楽

 

柿葺落四月大歌舞伎 「寿曽我対面」「襲名披露口上」「籠釣瓶花街酔醒」 (4月12日・御園座)

 松本幸四郎が二代目「白鸚」を、市川染五郎が十代目「幸四郎」を襲名しての襲名披露公演が、新築なった名古屋・伏見の御園座の柿葺落(こけらおとし)公演として開催された。本来は松本金太郎の「染五郎」襲名も同時なのだが、ここ名古屋でのお披露目は無し(学業の為だとか)。チケットの入手は”前年秋の錦秋公演のチケット半券を郵送してその枚数購入可”という変則的なものだったので嫁の分は取れず1人で御園座へ。秋の公演情報には染五郎の写真も載っていたので、てっきり三代揃って出るものだとばかり思って購入したのだが…(実は染五郎が見たかった)。御園座からの入金確認やチケット郵送も遅くヒヤヒヤ。こけら落とし公演ならではのバタバタだとうは思うが改善を望む。昼か夜かで迷ったが「勧進帳」は幸四郎(当時染五郎)が初演の時に歌舞伎座で観ているので、昼の部にしてみた。

 

自分は以前の御園座に入場したことは無いので比較は出来ないが、さすがに真新しい施設は立派。売店や飲食スペース「御園小町」もあるが開演前は弁当などを求める人でごった返していた(ちなみに30分の幕間に覗いたら余裕で着座してコーヒーが飲めるくらいだった)。歌舞伎座のように場内座席での飲食が可となったので弁当を調達して会場内へ。今回座ったのは2階席だったが、以前より座席数を減らして余裕を持たせていることもあって足元が広くすこぶる快適。地方の会場を含めてもここまで広いのは初めてで、視界も良くステージが近いので2階席でも十分楽しめそう。あれほどチケット確保にやきもきしたのに空席も結構あり、当日券でも十分見られるんじゃないか(下の写真は開場してすぐ)。

「寿曽我対面」は初春の祝いの演目。その実、親の仇討ちという背景があるのだが、十二単を着た花魁も舞台に居て、襲名披露やこけら落しにふさわしい華やかな舞台。左團次のどっしりとした工藤祐経が仇敵役ながらかっこいい。親を殺された兄弟が当の仇にたしなめられるという、”仇討ち”といっても何をやってもいい訳ではなかった武家社会の一面が垣間見られて興味深い。米吉演じる化粧坂少将の綺麗なこと、綺麗なこと。若いというのもあるだろうが何とも美しい。五郎役の又五郎が見得を切る場面が多いのだが、この演目では「大向こう」(「〇×屋!」とかの声を掛ける人)が少ないのか高麗屋の祝いだからか、掛け声が少ないのでやや寂しく感じる。

幕間を挟んで襲名披露の口上。坂田藤十郎をはじめ、吉右衛門らが次々と口上を述べる。いつも面白いと評判の左團次は、ここでも同じ学校だった幸四郎(現白鸚)が放課後に婆やと踊りや三味線の稽古に行くのに、自分はキャバレーに行っていたと笑わせる(笑)。

「籠釣瓶花街酔醒」でやっと新幸四郎が主演。初役であばた面の佐野次郎左衛門を演じる。襲名披露だから出ずっぱりなのかと思いきや、昼の部は白鸚もちょい役での出演のみ。雀右衛門演じる八ツ橋に一目惚れっていう設定にはちょっと入り込めないが(笑)、遊郭の仕組みやしきたりなんかも垣間見えて楽しい(ただ演目は酷い話なので終わった後には寂寥とした気分が残る)。ここでも遊女役で出た米吉の美しさに目が留まる。以前女形は梅枝推しだったが、ここで米吉推しに変更だ(笑)。後ろの席で隣の奥さんらしき人に「あれが片岡秀太郎だよ」とか(いや違いますから…)、「この後で切られる場面までだな」(コラコラ、みんな知ってますけど…)とか時折大きな声で解説する老人に閉口したが(苦笑)、楽しい初御園座公演だった。でもやっぱり夜の部の演目も見たいなァ。

一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)

工藤祐経      市川 左團次
曽我五郎      中村 又五郎
曽我十郎      中村 鴈治郎
大磯の虎      中村 壱太郎
化粧坂少将    中村 米吉
梶原平次      中村 吉之丞
梶原平三      中村 寿治郎
八幡三郎      中村 種之助
近江小藤太    中村 歌昇
小林妹舞鶴    市川 高麗蔵
鬼王新左衛門  大谷 友右衛門


二、襲名披露 口上(こうじょう)

二代目松本白鸚
十代目松本幸四郎

 
幸四郎改め 二代目 松本 白鸚
染五郎改め 十代目 松本 幸四郎

坂田 藤十郎 他幹部俳優出演
 

三、籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)

序幕
大詰 吉原仲之町見染の場より立花屋二階の場まで

佐野次郎左衛門      染五郎改め 松本 幸四郎
兵庫屋八ツ橋        中村 雀右衛門
下男治六            中村 又五郎
兵庫屋九重          市川 高麗蔵
兵庫屋七越          澤村 宗之助
兵庫屋初菊          中村 米吉
若い者与助          大谷 廣太郎
絹商人丈助          中村 吉之丞
絹商人丹兵衛        嵐 橘三郎
釣鐘権八            松本 錦吾
繁山栄之丞          中村 歌六
立花屋女房おきつ    片岡 秀太郎
立花屋長兵衛        幸四郎改め 松本 白鸚


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 松花堂 @岐阜県岐阜市 (※... | トップ | ゲンゲンバッハ (Gengenbac... »

コメントを投稿

歌舞伎・文楽」カテゴリの最新記事