山と田んぼに囲まれた海の無い岐阜県関市でなぜわざわざ寿司?という感じだが、どっこい素晴しい寿司を握る。東京の某店で修業し先代から店を引き継いだ店主は、地元の昔ながらの寿司を捨て自分流に変えている。古くからの店なのでたぶん色々な抵抗があっただろうが、田舎の鮨屋には珍しい「仕事をした」タネが味わえるし、寿司店にこだわらないいろいろなスタイルのつまみを堪能出来る。
すっきりとした店内はカウンターと座敷がある。この日は「季節のおまかせ(¥7350)」を注文。この店では定番のスプーンの上に乗せられた3種の一口つまみを始め、特製の玉ねぎドレッシングを使ったトマト、涼しげな器に入った漬け鮪と半熟玉子など寿司店の垣根を越えたフレンチを思わせるようなつまみの連続で同行者もびっくりしていた。
そうすると握りもやっぱり創作系っていうのならありがちだが、これがしっかりとした江戸前の握り。つまり「仕事をした」握り。締め、漬け、茹で、と活きの良さだけに頼らない鮨。自分の好きな小肌も締めてからの熟成日数を変えて比べさせてくれるなど楽しい。いろいろ食べ歩いたが、こういったしっかり仕事をした握りは東京や名古屋のような大都市でもなかなか出会えないと思う(もちろん高い値付けの店ならある)。酒はその時々によって違うものが出てくるが、冷やなら常時3種類位は用意していて、日本酒に精通した若い衆が熱心に説明してくれる。
本日の勘定はおまかせとお酒と追加の握りで¥11,000程度。ものすごく値打ちだ。
と久しぶりに紹介ホームページを覗いたらなんと、秋に名古屋に移転との事。地元のみならず名古屋をはじめ遠方からもわざわざ客が来ていたが、この地でこれだけの評判を得ながらそれを捨てるのはずいぶん思い切ったんだろうな。遠方から来ていた人達にとってはうれしい知らせだろう。移転してもぜひまた訪問したい。
すし屋の吉野(すしやのよしの)
岐阜県関市観音前48
新店名:「寿しの吉乃」
移転先:名古屋市中区丸の内3丁目10-29 LINC MARUNOUCHI 1F
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