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●科学技術ニュース●産総研など、グラフェン層間に2層アルカリ金属の最密配列を発見し大容量二次電池の開発に期待

2024-04-03 09:40:59 |    電気・電子工学
 産業技術総合研究所(産総研)ナノ材料研究部門 電子顕微鏡グループ 林 永昌 主任研究員、大阪大学 末永 和知 教授、東京工芸大学 松本 里香 教授、九州大学 吾郷 浩樹 教授、台湾国立清華大学 Chiu Po-Wen(邱博文)特別教授らは、炭素原子が1個の厚さで六角形の格子状に並んだグラフェンの層間に高密度でアルカリ金属を挿入する技術を開発し、原子の配置構造を直接観察することに成功した。

 二次電池の性能は、電気自動車の走行距離やスマートフォンの使用時間などに影響を与える主要な指標の一つ。二次電池が、より大きな電気容量を蓄積できるようになれば、これらの電子デバイスの性能を向上させることができる。

 電池の電極材料である黒鉛(グラファイト)は、グラフェンが層状に重なり、層間に配置されたアルカリ金属が電子を受け渡すことで、充電・放電を行う。もし、グラフェン層間に高密度でアルカリ金属を充填できれば、電気容量が向上するであろう。

 過去百年にわたり、X線や電子回折の測定を通じて、グラフェン層間には単層のアルカリ金属しか充填できないと広く認識されており、各層が完全に充填された状態が理論的な充電極限と考えられてきた。

 しかし、層間アルカリ金属の原子配置を直接観察し、グラフェン層がアルカリ金属原子を単層でしか収容できないのか、それとも他の技術によって、より高密度または複数層のアルカリ金属を収容できるのかを検証する研究報告はなかった。

 同研究グループは、グラフェンの間にアルカリ金属を高密度に挿入する技術を開発した。高性能電子顕微鏡により、層間のアルカリ金属原子の配置構造を直接観察することにも成功した。

 電極として広く用いられてきたグラファイトには、1層構造のみが形成されるが、グラフェン層間のアルカリ金属は、グラファイト表面のグラフェン層間に特有な層間隔の柔軟な拡張性により、およそ2倍のアルカリ金属を挿入できる2層構造で最密充填されることを発見した。

 アルカリ金属を2層に挿入したグラフェンを積層できれば、それを電極材料にしてアルカリイオン二次電池の大容量化が期待される。

 リチウムやナトリウムは軽元素のため、低加速電圧STEMでの観察は困難。今後は、計測手法を検討して、2層グラフェンおよび多層グラフェン中に挿入した軽いアルカリ金属の原子配列の観察に挑戦する。また、この実験ではバッテリーの電気化学法挿入メカニズムとは異なる気相挿入を使用しているため、実際のバッテリーの機能を模倣し、STEMを用いて電気化学的なイオンの動きを明らかにすることでバッテリー劣化の原因解明などにも貢献したいと考えている。<産業技術総合研究所(産総研)>
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