海洋研究開発機構と三菱重工は、海中機器を長時間稼働させるための電源として、高効率マルチ・レス燃料電池システムを開発し、海中観測機器へ電力を供給する実海域での試験に初めて成功した。
この燃料電池システムは、海中環境条件下で作動することを基本として、高効率化、小型化、高信頼性化に重点をおき、ガス循環系に新たな構造を採用した固体高分子形の閉鎖式HEML(High Efficiency Multi Less)燃料電池システム。
今回、三菱重工業が有する燃料電池の技術と、海洋研究開発機構から提供した海中作動環境・ビークル搭載条件等の知見および技術を効果的に組み合わせることによって実現したもの。
同システムは、海底設置型の観測機器や海中探査機のための高効率大容量電源として用いられることにより、蓄電池に比較して、より長期的な海洋観測・調査・探査に貢献すると期待される。
今回、小型で高効率、高信頼性の燃料電池システムの実用性に目処がついたことで、深海底設置型の観測機器や海中探査機をより長時間稼働させることが可能となるため、海洋観測の長期化へ寄与することで効率向上が期待される。
深海底観測ステーションのカメラ、ライト、地震計、その他各種センサ類の電源として、蓄電池よりも長期的な観測が可能となり、運用コストを低減することで効率を向上できる。また、海中探査機の海底充電ステーション用の電源として、探査機の電池を海底で充電することで観測を継続させることが可能となる。さらに、海中のみでなく閉鎖環境下(航空宇宙用やクリーンルーム、シェルター等)の電源としての使用も期待できる。