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●科学技術ニュース●産総研など、非破壊でリチウムイオン二次電池(LIB)の充電能力劣化の2次元定量分析に成功

2022-02-18 09:32:30 |    電気・電子工学
 産業技術総合研究所(産総研)分析計測標準研究部門 X線・陽電子計測研究グループ 木野 幸一 主任研究員、大島 永康 研究グループ長、放射線イメージング計測研究グループ 田中 真人 研究グループ長、藤原 健 主任研究員、黒田 隆之助 研究グループ付、マルチマテリアル研究部門 軽量金属設計グループ 渡津 章 主任研究員は、日産アーク 解析プラットフォーム開発部 伊藤 孝憲 テクニカル・マネージャー、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 神山 崇 名誉教授、米村 雅雄 元特別准教授、総合科学研究機構 中性子科学センター 石川 喜久 研究員と共同で、新品と劣化品のリチウムイオン二次電池(LIB)に対する中性子線の透過スペクトル解析による結晶構造イメージング(ブラッグエッジイメージング)計測に新たに開発した解析手法を適用することで、非破壊で電池電極の劣化を可視化し、結晶相の種類と密度の定量に成功した。

 中性子線は透過力が高く、LIBの筐体を透過して内部を非破壊で観察することができる。さらに中性子線の透過スペクトルを解析することで、負極材料であるグラファイトなどの結晶構造の情報も得られる。

 今回同研究グループはグラファイトの結晶配向性を考慮した新規の解析手法を考案し、これを用いることでグラファイト負極へのリチウムイオンの挿入・脱離状態と密度、さらにはその2次元空間分布を可視化し、LIBの新品と劣化品での差異を定量的に明らかにした。

 同技術を、充放電によるLIBの劣化過程の非破壊かつオペランド観察に活用することで、より高性能な電池開発への貢献が期待できる。

 劣化したLIBではリチウムイオン量の小さい結晶が生成し、それらが偏在して分布することを中性子線による非破壊イメージングで初めて明らかにした。さらに、結晶の配向状態を考慮した解析手法で、詳細な結晶種毎の定量解析を実現した。

 今後は、電池が劣化する過程の充放電サイクル中における時系列的なオペランド観察、さまざまな条件で劣化したLIBの解析、X線・中性子線CTや他分析法を組み合わせた解析手法の構築などを行う。また非破壊計測・解析技術の改良を進め、正極材料や固体電池などへの適用範囲の拡大を行う。なお産総研では、ブラッグエッジイメージング測定が可能な中性子解析施設(AISTANS)の運用を開始している(2020年1月22日 産総研プレスリリース)。<産業技術総合研究所(産総研)>
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