科学技術振興機構(JST)の課題達成型基礎研究の一環として、産業技術総合研究所の竹内大輔主任研究員と物質・材料研究機構の小泉 聡主幹研究員らのグループは、ダイヤモンド半導体の特長を利用することにより、真空を用いた高耐圧パワースイッチを作製し、動作実証に世界で初めて成功した。
電力系統への再生可能エネルギーの導入やスマートグリッド構想を実現するためには、電圧・電流・周波数を変換、制御する小型大電力変換装置(複数のパワースイッチを組み合わせた装置)が必要。
しかし、これまで開発されてきたシリコンなどを用いたパワースイッチは、高電圧に耐えようとすると電力変換装置が巨大になってしまい、実用化に問題があった。
そのため、固体である半導体よりもさらに絶縁耐圧に優れる真空を利用した革新的な超高耐圧高効率小型パワースイッチの開発が期待されている。
しかし、真空をスイッチ素子に用いるには、スイッチがオンのときに真空に電流を流す電子放出源が必要。
同研究グループでは、ダイヤモンドの表面を水素原子で覆うと、真空中に自由に電子が飛び出すことを明らかにした。
そこで、電子放出源の素材にダイヤモンド半導体を採用した真空パワースイッチを開発し、動作の検証を行ったところ、10kVの電圧でパワースイッチとして機能することを確認できた。
今回の実験結果から100kVほどの高電圧に耐えられる真空パワースイッチを作ることができれば、理論的に従来の10分の1の大きさの大電力変換装置が可能になる。
将来、日本近海の洋上風力エネルギー導入や日本列島間での効率的な送電などを行う際に、この技術を利用することで、新しいエネルギー戦略に貢献することが期待される。