同成果が地表調査から環境アセスメントまで幅広い場面で活用され、地熱開発適地選定の判断基準と手順の明確な指針となることで、地元自治体や地域住民などのステークホルダーと地熱開発事業者との円滑なコミュニケーションを促す。これにより、自然環境・風致景観に調和した地熱発電所の導入加速化が期待できる。
NEDOは、「地熱発電技術研究開発」の一つとして「エコロジカル・ランドスケープデザイン手法を活用した設計支援ツールの開発」で、エコロジカル・ランドスケープデザイン手法(エコラン手法)を用いた設計支援ツールを2018年に開発した。
エコラン手法とは、地域の自然生態系や地形などの潜在能力を借りて環境を保全・創出する技術であり、エコシステム(生態系、地形、地質、水循環、土壌、植生など)、エンジニアリング(造成、排水、構造物など)およびデザイン(ランドスケープ、景観など)の三要素の機能をバランスよく発揮させて進める設計手法。
さらにこれを踏まえて、「優良事例形成の円滑化に資する環境保全対策技術に関する研究開発」では、国立・国定公園特別地域の3カ所の事業地(それぞれ地表調査段階、坑井調査段階、環境アセスメント段階)を対象にこのツールの試験運用を行った。そしてこのたび、その有効性評価の結果を示すとともに、事業者が地熱開発に際しさらに使いやすいツールとして再構築した。
すでに、環境省の「令和3年度地域共生型の地熱利活用に向けた方策等検討会」で国立・国定公園内における地熱開発の取り扱いなどが議論されており、同事業の成果としてまとめた「エコラン・マニュアル【改訂版】」や「パタン参考集【改訂版】」も参考資料として活用されている。今後も地熱開発における優良事例形成に向けた取り組みに際し、多くの事業者や地熱に関わる技術者などに活用してもらうことで、作業効率の向上や手戻り軽減といった円滑な事業の推進に役立つことを目指す。また、ステークホルダーと地熱開発事業者のコミュニケーションに活用されることで、自然環境・風致景観に調和した地熱発電所の導入加速化に貢献する。<新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)>