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質管理のための人材育成第10回

2015年04月28日 | ブログ
人材育成のQCサークル活動

 問題解決の実践が大切であると同時に、潜在的な問題を発掘する能力も非常に大切で、常に問題意識を持った人材の育成が必要である。日常管理業務(顕在化した問題解決)にしても方針管理業務(課題達成の問題解決)にしても、従業員にすれば当初から与えられた任務であり、潜在的な問題を掘り起こすまでの能力を主業務で求められるのは、企画部門などに配属されるか、ある程度の地位に昇格してからのことが多い。

 例えば米国GE社などは、将来の幹部候補生に対して徹底した経営管理教育を行うと聞く。座学だけでなく、実際の業務の中でも若いうちから大きな責任を背負わせて、成果を出した者に次のステップを準備する。

 ただ、一般の従業員すべてにそのような教育カリキュラムは組めない。しかし、わが国においては、職場の身近な改善をグループで行うQCサークル(小集団)活動が、結果として問題の発掘や解決能力育成の場として活用され、実績を上げたことは周知である。

 QCサークル活動では、仲間との協働を通じて、コミュニケーション能力が高められる。主業務では経験し難い階層の従業員にも、リーダーが経験できる。QCストーリーに沿って、テーマ選定のため、職場の問題点を考える習慣が身につく。改善手法を駆使して現状把握、対策立案の過程で問題解決法を学ぶ。発表会に向けて、プレゼンテーション手法も身につけ向上させることができる。座学だけでは中々会得できないこれら多くのスキルが体得できるのである。

 まさに『QCサークル活動は、自己啓発と相互啓発を醸成する有効な実践的教育手段といえる』のである。

 『QCサークル活動がもつ六つの人材育成要素をまとめてみると、①職場における問題意識の高揚、②創意工夫の醸成、③自己啓発と相互啓発の発揮、④自主性を磨く、⑤グループとしての行動(グループのメンバーが同じ目標をもち、同じ行動をとることで、個人としての活動の限界から一歩レベルの高い意識と考え方を身につけることになる)、⑥全員参加の意識』である。

 また『QCサークルを実践するために必要な要件としては、次の9点をあげることができる。①質第一(製品やサービスを提供する活動は、常に消費者やお客さまの立場に立った質を第一に考えた行動が最優先されるべきである)、②PDCAサイクル、③重点志向、④プロセス管理(よい仕事のやり方の定着)、⑤後工程はお客様、⑥事実による管理、⑦ばらつきの管理、⑧再発防止、⑨標準化』

 QCサークル活動は、わが国では1980年代頃が一番盛んであったように思うけれど、その後、続けておればマンネリ化もあろうし、飽きもある。自主的活動とはいえ、業務の一環ではないかとの超過勤務扱いにしないことが問題となったりした。発表会におけるプレゼン手法優先で、実効がどこまで伴っているのかとの疑問の声も聞かれたりすることもある。しかし、どのような制度やシステムも運用次第で好悪が分かれるところがある。時代とともに変えるところは変えながら、良いところを残し、継続して貰いたいし、やっていない所はぜひ始めて欲しいものである。




本稿は、岩崎日出男氏編著「質を第一とする人材育成」(JSQC選書) 2008年9月8日、日本規格協会刊、第8章を参考に編集し、『 』内は直接の引用(一部編集)です。

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