かぶれの世界(新)

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リスク・マネー海外に向かう

2006-10-15 12:23:54 | 社会・経済

夏に田舎で買った投資信託銘柄の資産総額がたった2ヶ月余りで夫々42%、12.5%も増えていた。この二つの人気銘柄だけでなく、全体として家計資産が投資信託にかなりの勢いで向かっていることを示す具体的なデータを見つけた。

日銀の「資金循環表」によれば家計資産1500兆円の2.3%(約35兆円)が外貨資産(日経BP 9/21)になった。2.3%というと大した事無い様に思われるかもしれないが、この一部でも集中的に出し入れすると一国の通貨が急騰急落する。NZや豪州の通貨変動は記憶に新しい。

日本の巨額の個人資産が欧米並みにリスク投資に向かうと、話題のオイルマネーも真っ青になる。米国の対中貿易赤字は今年も増えているが、昨年約1千億ドル(約12兆円)で日本の個人外貨資産の半分以下、それでも政治問題化しているのである。

外貨資産35兆円の内訳を見ると外貨預金・証券に比べ急増しているのが投資信託だ。過去2年間で約2倍になり23兆円を突破した。投資信託はファンド・マネージャが投資戦略に従って国内外に投資するが、そのうちの海外投資分が23兆円を越えた。

この投資信託の増加分だけで日本の貿易黒字に匹敵する。つまり家計資産が信託投資経由で海外に投資され、貿易黒字と逆に資金流出する。最近の円安は財務省がドル買いで介入した結果ではない。金利差と地政学的な危機だけが円安の原因ではないのである。

意外だが、これは単純に日本の個人資産のリスク・マネー化が進んでいるという意味ではない。個人資産1500兆円のうち、定期預金450兆円、年金・保険預金390兆円に加え、普通・当座などの流動性預金が急増し200兆円を超えた。どうせゼロ金利ならペイオフ後元本保証される流動性預金にというわけだ。合計すると低リスク資産が約7割を占め、世界でも例の無いリスクを嫌う日本人の性向を示している。

一方、株・国債などのリスク資産も増えており合計180兆円、そのうち今まで議論してきた35兆円が外貨資産なのだ。定期預金がより安全な流動性預金とリスク資産の両方に流れているというのが正確な説明だ。

私がやったことは定期預金を解約し、欧米を中心に業種・通貨と株式・債券に分散投資した中リスク資産に移したことである。世界景気が悪化すれば元本割れのリスクがあるが、現在までのパフォーマンスは既に定期預金4年間の利子より多い配当を得た。

私は日本の好景気が続き団塊の世代が退職するにつれ今まで以上にリスク志向の資産管理が増えると予測する。日本の家計のリスク・マネーが更に海外に向かうと、例えばたった1%増えても15兆円のお金が世界に新たに注入され、金融市場に少なからず影響を与える要素になる。

言い換えると、量的緩和の解除後ヘッジファンドや銀行などが低金利の円を調達し高金利の外貨を買って運用する所謂「円キャリートレード」が収縮したが、今後は個人投資家が意図せざる円キャリートレードの主役になるという構図が出来つつある。

海外に出たマネーは文字通り何が起こるか分からないリスクがある。それでもリスク資産を持つことはゼロ・リスクを保証した護送船団から降りて(実はもうそんなものは無い)、自らリスクを管理する自己責任・自助精神に立ち返る良い機会であると私は考える。■

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胡主席の国内向けメッセージ

2006-10-13 11:39:40 | 国際・政治

安倍首相訪中に先立ち、「元々日中関係改善に意欲的であった胡主席は、先月末江沢民腹心の陳良宇・上海市党委書記を解任して権力基盤を強化し首脳会談に踏み切った」というのが、大方の日本の立場から見た理解であった。その後の展開を見ると中国が歴史問題に拘るより「大国の責任」を果たすほうに軸足を移したように窺える。

雑誌タイム(109日号)は江沢民の息のかかった上海閥を抑える権力闘争に加えもう一つ重要なメッセージが込められていると報じている。それは「年金基金に手を出すな」という強いメッセージだ。陳書記は上海年金基金を過熱している不動産投資に横流しした疑いで解任された。

中国は「一人っ子政策」が人口構成を歪にし、将来深刻な年金問題を引き起こすという推測は良く知られている。しかし既に現在年金問題が起こり始めているという。詳細は不明だが北京大学のマイケル・ペティス教授によると現在の年金システムでは人口の13%しかカバーできてないという。NYタイムズによると現在4人の労働者が1人の年金を支え問題を抱えているという。

中国人民の60歳以上が1.4億人から2020年には2.5億人になる見込みで年金改革が中国政府の最重要課題と報じている。デモグラフィーを見ると4044歳世代から人口が急増し35-39歳世代がピークで1.3億人以上、「一人っ子政策」で25-29歳世代から急減し10-14歳世代は9千万弱になっている。沿岸部では都市化により更に少子化が進み10歳以下の人口が減少している。

経済成長に伴い食糧事情や医療システムが改善すると普通にやっていても老齢化と少子化は進む。加えて中国の場合、内陸部からの出稼ぎ労働者(農民工)の流出が規制されているので都市部では若年の低賃金労働者が逼迫、一方農村部では労働供給過剰という事態が起こっている。海外からの投資は労働力を求め内陸部から更にベトナムやバングラディッシュに移動を始めた。

現在も「一人っ子政策」は継続されており、都市部での人口デモグラフィーは今後益々歪なものになると予想されている。例えば上海は60歳以上が現在13.6百万人、2020年には人口の3分の1になると予測されている。市中央のJingang地区ではこの傾向を先取りして人口の3割が60歳を超えた。

中国政府は過去の「大躍進」以降の政策が誤りだったと認めることになる「一人っ子政策」を止めるつもりはなく、規制を緩和して農民工を都市部に溢れさせるつもりも無い。そうした中で年金問題は共産党体制を揺るがす恐れのある最重要国内政治課題であり、年金に手をつけるものは何人も容赦しないという官僚に対する明確なメッセージであったというのだ。どこの国も同じ悩みがある。■

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2006年大胆占い(3Q見直し)

2006-10-12 23:54:44 | 社会・経済

好例の四半期ごとの占い見直しです。世界経済は減速の兆候が出てきたが、住宅市場がスローダウンするも米国経済が意外に粘りを見せ、欧州は元気で追加利上げも視野にある。安倍丸が出航、日本経済は低空飛行ながら飛び続けている。

1.イラク撤退、改革続行政権発足 → ◎ 撤退完了、改革続行内閣を宣言

 イラクの国内事情は泥沼に入ったが、今となっては絶妙なタイミングで自衛隊を撤退させた。安倍新総裁は党内で殆ど議論無く選ばれ、政権の性格が明らかにならなかった。しかし、所信表明で改革続行を宣言し、それを裏付ける諮問委員会人選をした。

2.日本経済回復続き、GDP成長率2.+% → ◎ 景気回復続く

 9月期の日銀短観の業況判断指数が改善、10月の月例報告で戦後最長のいざなぎ景気と並ぶ57ヶ月の景気拡大が続いたことになった。民需主導の景気回復が続いているが、個人消費に力強さが見られないのが不安。

3.米国経済好調も後半にやや減速、GDP成長率4.0%弱 → ◎ 減速の兆し

 住宅バブルが萎んだが企業業績は好調で原油低下・金利上昇打ち止め間が出てきた為予想より米国経済は減速してない。消費が何故これほど強いのか私には謎。グローバルマネーはコモデティから流出しているが米国経由投資に変化は見えない。

4.日経平均20,000円年央突破、後半下落 → △ 下落、外人買い戻る 

 安倍政権誕生で改革続行が確認され外人投資家が戻り日経平均16,000円台まで回復、上期業績が明らかになるにつれ株価回復する予測は変えない。しかし年内に日経平均18,000円台に到達する可能性があると見る。

5.ドル高進行も年末に105円前後まで円回復、Euro高続く → △ 円安・Euro高進行中

 年内金利上昇が少ない上に北朝鮮核実験の余波を受け円安が更に進行中。おかしいなと思いつつ円安が続いている。金利上昇を視野に入れてEuro高基調は続く。

6.中国投資調整で8.5%成長、インド・ロシア急成長 → ○ 中国加熱続く、印露は予想通り

 上海系人脈の汚職に対する鉄槌は地方政府に対する明確なメッセージとなったはず、今後中央政府の引き締め政策の効果が出て来る。それでも今年度経済成長は10%前後にはなる見込み。インド・ロシア経済成長は順調に続いている。

7.ドイツ・ワールドカップ日本予選敗退 → ◎ 1分け2敗で予選敗退

8. MLB 城島攻守に活躍、他の日本人選手は壁にぶつかる → △ クローザー活躍

 城島は新人としてよくやった。イチローは高いレベルで実力発揮、6年連続の活躍は並じゃない。大塚・斉藤のクローザーとして活躍は予想以上で素晴しかった。

安倍政権になり構造改革の力が弱まる疑いがあったが新政権の大臣・官邸スタッフ人事と諮問委員会の人選を見て、市場は改革続行の本気度を見て取った。中韓訪問と北朝鮮核実験で当面安倍政権の立場は強まり、次の手を打ちやすくなったはずだ。次に何を仕掛けるか注目したい。■

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タコ飯の思い出

2006-10-11 11:46:11 | 旅行記

933月だったと思うが打ち合わせでボストンに行った時季節外れのハリケーンがフロリダの南を北上していた。翌日打ち合わせを終わって郊外にあるホテルに戻りニュースを見るとハリケーンは南部を直撃していた。「風とともに去りぬ」の舞台となったアトランタに雪が降り、南部で予想もしない吹雪でホームレスの被害者が続出していると報じていた。

そこまでは他人の不幸だった。ニュースはハリケーンが北上し東部を襲うと予想し、翌日仕事が終ってホテルに戻った頃には予想通り絶え間なく雪が降り始めていた。翌朝起きると郊外にあるホテルの窓から見る景色は一面真っ白、高速道路には車一台見えなかった。

諦めて部屋でテレビをつけっ放しにし、時折同宿していた同僚と連絡を取りながら様子を見ていたが雪は絶え間なく降り続けていた。テレビはステート・エマージェンシー(緊急警戒報)が発せられた、ステー・ホーム(外出禁止)を繰り返しそのうち電波が届かなくなった。

外出禁止は大袈裟のように聞こえるかもしれないが郊外に出ると本当に何もなく、助けを呼ぶにも歩いていける距離に民家が無い。車が動かなくなると当時は車載電話も珍しい頃で最悪凍死する。州は降雪があると道路に塩をまき交通手段を確保するがこの時は急な展開で間に合わなかった。

外出できないのでホテルが手持ちの食料を使ってブッフェ形式の簡単な食事出してくれた。ビデオテープを無料貸し出しすると館内連絡があったが、1階ロビーの売店に行った時は手遅れで全て貸し出されていた。

その頃は米国向け新製品開発の最中で米沢工場から数人の技術者が同じホテルに長期逗留していた。懇意にしていた技術者の1人が気にかけてくれ日本から持ってきた真空パックの携帯食品をくれた。それが初めて目にするタコ飯だった。

部屋にある電子レンジで温めて食べたこのタコ飯の味が未だに忘れられない。翌日午後にはステート・エマージェンシーが解除され夕食は外のレストランで食べたが、その間このタコ飯が唯一の食事だった。約48時間ホテルに閉じ込められた中でタコ飯が最も鮮明に残っている記憶だ。

後から聞いた話だが、この大雪の中米沢から来ていた人達の中には車で買い物に出掛けた人がいたそうだ。米沢の冬は2階から出入りするほど雪深く、彼らにとって塩が撒かれてない道を走るのも慣れている。当時よく見かけた道路に乗り捨てられた車の信頼性や気温の低さを考えるとそれでも心配だったが幸い何も起こらなかったようだ。

数日後、新製品投入の目途が経ったのを確かめ日本に戻るべくローガン空港に向かった朝、又もや大雪が降った。やっと空港に着いたものの欠航が相次ぎ散々待った挙句乗り継ぎに間に合わずニューアークに一泊することになった。当時ボストン直行便は無かった。それは又の機会。ところで、それ以来タコ飯は食べたことがない。■

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信条と現実:実践編

2006-10-10 13:08:16 | 国際・政治

安倍首相が日本の首相として5年ぶりに中国を訪問し首脳会談を実施、引き続き韓国に飛び日韓関係の修復にも第一歩を踏み出した。首相就任前後に指摘された安倍氏のタカ派的信条が更なる関係悪化になるという大方の懸念とは逆の方向に歴史の車は回り始めた。

私は安倍内閣が発足した時「信条と現実」の中で、安倍氏個人の信念の固さが政治の現実に直面するときが必ず来る、その時に真価が問われると予測した。ところが既に訪中韓を果たし、北朝鮮核実験に直面した。予想以上の速さで政治的現実が進んでいるように見える。

しかし、ここまでは安倍氏のプラン通りに物事が運んでいる、意図と予測が的中しその為に敷いた布陣が機能している、寧ろ順調に行き過ぎている感すらする。用意周到に準備した計画を首相就任後電光石火で直ちに実行した。ノムヒョン大統領はこの速度について行けてない様にも見える。韓国だけでなく日本の野党やメディアも置いていかれた。

中国は関係改善を切実に望んでいたのは明らかだ。靖国神社参拝を曖昧にしても未来志向の関係を作ろうと方針転換をしたのは、胡錦濤国家主席が江沢民の息のかかった上海系人脈の影響力を乗り越える確信をもったからだ。寧ろ首脳会談の前倒しは中国側の要請だった。やるなら早いほうが良い、首相交代直後がベスト・タイミングだった。

関連して主要新聞各社の社説の中では、日本経済新聞が日中両国の最新事情を踏まえ最もバランスが取れた見方をしていた。朝日新聞は見方が表面的で型通り、日中関係改善は十八番でもっと掘り下げられるネタもあるはずなのに、予想外の展開で切り替えられないのか。

しかし、安倍首相は想定内「政治の現実」に対する柔軟性を実践しているだけであり、まだ9.11のような以後の政権の決定的に性格づけるような想定外「政治の現実」には直面していない。言い換えると信条と政治の現実が相反する事態はまだ起こっていない。その意味ではまだ政権は走り始めただけだが、少なくとも良いスタートを切った。

同時代の歴史を生きてきた実感としてタカ派が歴史的仕事をする。ケネディがベトナム戦争を開始、ニクソンがベトナム戦争を終結させ共産中国を国際社会に参加させた。レーガンがソ連と東欧共産体制を解体させた。国内政治を見るとハトはダーティ(金)で信を失い挫折、クリーンなタカが改革をする事例を何度も見てきた。皮肉な現実だが、果たして安倍丸は何処に向かうか。

実は内政では新政権の性格が垣間見られた。総裁選では改革をスローダウンする印象があり市場が不安に思っているのを感知したのか、就任後の所信表明で小泉改革を継承することを明確にし、とりあえず市場の信任を繋ぎとめた。発言を修正したと私は推測する。

反応を見ながらこの種の修正をする柔軟な政権になるとすれば、安倍政権をウォッチしていくキーワード(テーマ:信条と現実)は変えたほうがいいかもしれない。■

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