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胡主席の国内向けメッセージ

2006-10-13 11:39:40 | 国際・政治

安倍首相訪中に先立ち、「元々日中関係改善に意欲的であった胡主席は、先月末江沢民腹心の陳良宇・上海市党委書記を解任して権力基盤を強化し首脳会談に踏み切った」というのが、大方の日本の立場から見た理解であった。その後の展開を見ると中国が歴史問題に拘るより「大国の責任」を果たすほうに軸足を移したように窺える。

雑誌タイム(109日号)は江沢民の息のかかった上海閥を抑える権力闘争に加えもう一つ重要なメッセージが込められていると報じている。それは「年金基金に手を出すな」という強いメッセージだ。陳書記は上海年金基金を過熱している不動産投資に横流しした疑いで解任された。

中国は「一人っ子政策」が人口構成を歪にし、将来深刻な年金問題を引き起こすという推測は良く知られている。しかし既に現在年金問題が起こり始めているという。詳細は不明だが北京大学のマイケル・ペティス教授によると現在の年金システムでは人口の13%しかカバーできてないという。NYタイムズによると現在4人の労働者が1人の年金を支え問題を抱えているという。

中国人民の60歳以上が1.4億人から2020年には2.5億人になる見込みで年金改革が中国政府の最重要課題と報じている。デモグラフィーを見ると4044歳世代から人口が急増し35-39歳世代がピークで1.3億人以上、「一人っ子政策」で25-29歳世代から急減し10-14歳世代は9千万弱になっている。沿岸部では都市化により更に少子化が進み10歳以下の人口が減少している。

経済成長に伴い食糧事情や医療システムが改善すると普通にやっていても老齢化と少子化は進む。加えて中国の場合、内陸部からの出稼ぎ労働者(農民工)の流出が規制されているので都市部では若年の低賃金労働者が逼迫、一方農村部では労働供給過剰という事態が起こっている。海外からの投資は労働力を求め内陸部から更にベトナムやバングラディッシュに移動を始めた。

現在も「一人っ子政策」は継続されており、都市部での人口デモグラフィーは今後益々歪なものになると予想されている。例えば上海は60歳以上が現在13.6百万人、2020年には人口の3分の1になると予測されている。市中央のJingang地区ではこの傾向を先取りして人口の3割が60歳を超えた。

中国政府は過去の「大躍進」以降の政策が誤りだったと認めることになる「一人っ子政策」を止めるつもりはなく、規制を緩和して農民工を都市部に溢れさせるつもりも無い。そうした中で年金問題は共産党体制を揺るがす恐れのある最重要国内政治課題であり、年金に手をつけるものは何人も容赦しないという官僚に対する明確なメッセージであったというのだ。どこの国も同じ悩みがある。■

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