MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

父親の死が子供たちを救う

2012-07-04 00:05:26 | 健康・病気

致命的な遺伝性疾患は
子供たちに過酷な運命をもたらす。
しかし早期発見によって治療が行える可能性があれば
その子供たちには希望の灯が見えてくる。
ここに紹介されたのは、父親の命が断たれたことで
はじめて娘たちの病気が明らかになったケースである。
あまりにも悲しいことだが、そこには救いもある…

6月28日付 ABCnews.com

Father's Sudden Death May Save Daughters' Lives 父親の突然の死が娘たちの命を救う

Fatherssuddendeath
Tyson Wallis は稀な心血管疾患で突然に死亡した。彼の死後まもなく、双子の娘たちは同じ病気を持っていると診断された。

By MIKAELA CONLEY
 1月12日の朝、Tyson Wallis とその妻 Kristin が仕事に出かける準備をしていた時、夕食はチキン・トーティーヤ・スープにすると決めていた。
 「『9時17分だ。遅れるよ』と彼は私に言いました」とヒューストンに住む Kristin(30才)は ABC News.com に語る。「彼が私たちの双子の女の子たちに食べさせていた時、愛していると私は彼に言い、ドアから急いで飛び出しました」
 しかし、そのわずか数分後、彼女が職場に入ると、母親から電話があった。Tyson が自宅で倒れたというのである。
 彼女が家に戻ると台所でゾッとする光景に出くわした。救急隊員が家に入り込み Tyson を蘇生し固定しようとしていたのだ。
 「すべてが飲み込めませんでした」と彼女は言う。「思い返してみても、ベビーたちを誰が抱いていたのか、人が私に何を言っていたのかさえ覚えていません」
 Tyson は緊急室に連れて行かれたがすでに手遅れの状態であり、病院について間もなく死亡したと医師は告げた。
 30才だった Tyson は“健康で非の打ちどころがなかった”と Wallis さんは言う。彼の死に動揺し当惑した家族は剖検を依頼し、その結果 Tyson は大動脈瘤で死亡したことがわかった。
 その病気に遺伝的要因がある可能性を心配した Kristin Wallis さんは10ヶ月になる双子の Eleanor と Olivia を Texas Children’s Hospital の小児心臓内科医 Shannon Rivenes 医師の元に連れて行った。彼は“断片的情報を繋ぎ合わせ”この2人の女児が大動脈瘤を起こす可能性がある稀な遺伝性結合組織疾患、Loeys-Dietz Syndrome(ロイス-ディエツ症候群)であることを発見した。Tyson は気付かないまま死ぬまでこの病気を抱えていたのだと医師たちは言った。
 この病気を持つ親は50%の確率でその子供にこの病気を伝える可能性がある。
 「この双子にとって、大動脈瘤の破裂による父親の突然の死という家族歴が診断の鍵となりました」と Texas Children's Heart Center で Rivenes 医師と同僚の心臓内科医の Shaine A. Morris 氏は言う。「若年で大動脈瘤の破裂を起こす遺伝的疾患はほんの一握りです。通常それらの疾患はそれぞれ特定の徴候を伴っています」
 この病名の一部に名前がつけられている Johns Hopkins University School of Medicine の小児心臓内科教授 Harry Dietz 医師によると、本症候群には様々な際だった身体的特徴が認められることがあるという。
 Dietz 氏によれば、離れた目、口蓋裂、小さく引っ込んだ顎などの頭蓋顔面の容貌;異常に早期に癒合し脳の正常な成長を阻む頭蓋骨など骨格的特徴、透明な皮膚、異常な瘢痕化など、すべてが本症候群の症候である。
 しかし、本症候群についてはまだ多くの不明な点があると Dietz 氏は言う。というのも、本症候群は7年前にようやく公式に確定され記載されたばかりだからである。本症候群は重症度に大きな個体差が認められる。
 「良好なクオリティ・オブ・ライフを維持してきた60才代、70才代の人を認める一方、早期に発見された人には重症型の本症候群が認められる傾向にあります」と彼は言う。
 「本症候群と診断された場合最も重要な所見は血管の拡張傾向です」と Dietz 氏は言う。「それがこの患者の早期死亡を引き起こすのです」
 そういった血管の異常を助長させる要因が研究者らによって明らかにされてきていると Dietz 氏は言う。血圧を下げる治療によって動脈瘤の形成を遅らせる効果があることが示されている。新しい治療や手技が試みられており、Dietz 氏らは将来に期待を寄せていると言う。
 「新しい薬物療法だけでなく、我々が導入している新しいガイドラインによって、顕著な保護効果が期待されるし、本症候群の子供たちもきわめて正常に近い生活を送ることができるようになるでしょう」と Dietz 氏は言う。
 現在の標準的診療は大動脈のサイズを観察することだが、これらの患者で、一部の動脈がどの程度蛇行、あるいは“屈曲”しているかを測定することが医師による転帰の予測に有用であることが新しい研究で示されている。
 (特に小児期や若年期に)突然死したり心臓手術が必要となった近親者がいる人は、精密検査を受けるために心臓内科医へ紹介してもらうよう、かかりつけ医に相談すべきであると専門家は言う。
 「家族に動脈瘤があった人は責任を持って検査をしてもらえればと私は思います」と Wallis さんは言う。「動脈瘤が沈黙の致死的疾患であることを知っておく必要があります」
 赤ちゃんの Eleanor と Olivia は恐らく将来心血管手術が必要となるかもしれないが、ほとんど正常な小児期を過ごせる可能性があると専門家は言う。
 「そうだとすれば、この疾患が早期に診断されたことはきわめて重要です」と Morris 氏は言う。「そのことで、大動脈の成長をきわめて注意深く観察することができます。大動脈が破裂リスクの著しい太さになれば、彼らには大動脈を置換する手術が必要となるでしょうし、それによって破裂を避けることが期待されます」
 この赤ちゃんは接触性のスポーツ、およびウェイトリフティングや体操など血圧を顕著に上昇させる過激な運動を避けるなど一定の活動性が制限されることになると専門家は指摘する。
 Wallis さんは、この小さな二人の母親として赤ちゃんを擁護し、彼女が知っているあらゆる手段を尽くして Loeys-Dietz Syndrome に対する新しい治療を求めて努力するつもりである。
 「私はあまり押しや主張の強い人間ではありません」と Wallis さんは言う。「でも、治療法や新しい薬物や治療手技を見つける認識を高めるために自分の心地よい場所を出てゆかなければならないとしたらそうするつもりです。夫は私のすべてであり、私が出会った最高の人でした。私は彼に敬意を払い、自分が知っている最善の方法で娘たちを守りたいだけなのです」

Loeys-Dietz(ロイス-ディエツ)症候群は
TGFBR1 または TGFBR2 遺伝子に変異が見られる
常染色体優性遺伝の疾患で、2005年に同定された。
この遺伝子は形質変換成長因子β受容体に関与し、
この障害により様々な症状が起こる。
結合組織の異常を来たす遺伝性疾患として
昔から有名なマルファン症候群とされてきた患者の
約1割が本疾患であったとの見方もある
(以前はマルファン症候群2型と呼ばれていた)。
長い顔、瞼裂の下方への傾斜、高口蓋、頰骨低形成、
小顎症、下顎後退、胸郭変形、側彎症、クモ状指、
関節可動域拡大、大動脈解離などはマルファン症候群と
共通に認められるが、水晶体脱臼はまれである。
Loeys-Dietz 症候群に特徴的な所見としては
眼の間隔開離、二分口蓋垂、口蓋裂、学習障害、
キアリⅠ型奇形、青色強膜、外斜視、頭蓋早期癒合、
内反尖足、柔らかいビロード状で透過性のある皮膚、
全身性の動脈屈曲・蛇行、動脈瘤、大動脈解離などがある。
特筆すべきは、大動脈の異常がマルファン症候群に比べ顕著で、
小さい状態でも、まだ小児期でも解離や破裂を起こし得るという
ことである。
また出生児に心房中隔欠損、動脈管開存、二尖大動脈弁などの
心臓疾患を伴う例もある。
腸管や内臓の脆弱性があり、脾破裂や妊娠中の子宮破裂の
リスクも高いと言われる。
診断は、詳細な家族歴で本症が疑われれば
CTやMRIを用いて動脈を調べ、
確定診断には TGFBR1、TGFBR2について
遺伝子解析を行う。
診断がつけば、循環器系の定期的検診を行い、
負担がかからないような生活を送ることが必要となる。
治癒が得られることのない、子供にとっては過酷な疾患だが、
有効な治療手段が確立されるまで、
致死的事態を極力回避し続けなければならない。
Loeys-Dietz 症候群の詳細はこちら↓

http://grj.umin.jp/grj/lds.htm

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