浅田 次郎著 文春文庫
短編集 獬(シェ)、姫椿、再会、マダムの咽仏、トラブルメーカー、
オリンポスの聖女、零下の災厄、永遠の緑 以上8編
”マダムの咽仏”
「マダムは完璧な女だった」の書き出しで始まり、
「マダムの一生は、およそ考え付く限りの完璧な人生だった」に終わる。
銀花のマダム・大内慎太郎の葬儀の日に焦点を当てながら、
物語は膨らんでいく。
マダムは、70歳でも魅力は衰えるどころか、更に増していった。
そのマダムが亡くなり、葬儀の日,従業員のオカマ達は、男になって参列する。
雅美とカオルも、マダムとの会話やマダムの上品で魅惑的な老い(成熟)を
思い出しながら葬儀会場に行く。、
会場には「故大内慎太郎告別式」と出ている。
マダムは、週末は背広を着て家族の待つ家に帰り、後の5日間は、
近くのマンションに住んでいた。そこは、男の匂い等かけらもなく、
人形や調度品などで飾り立てられた部屋であった。
マダムのパトロンという笠置は、新聞や雑誌で見た覚えがある。
立志伝中の実業家である。出棺の時の長男の挨拶では、
「父は、家庭においてはまことに良き夫であり、父であり、祖父でありました。
また職場においては、本日葬儀委員長の労をとっていただきました笠置社長の
片腕として、ほぼ半世紀の長きにわたり、
戦後の日本を支えてまいりました―――」
マダムは、半世紀の長きにわたり嘘をつき続けたのだ。
笠置老人は突然、
「大内。オオウチ、オオウチ、ごくろうさん、よくやった。
大したものだ、ここまでできれば、キサマ……………」
窯の扉が開かれ、棺が吸い込まれた。そのとき笠置は、
陸軍幼年学校の勇壮な校歌を大声で、拳を打ち振るって唄いだした。
笠置と大内は同期であった。
雅美とカオルは、オカマをやめて、演劇と病院の仕事に付く事にする。
最後の仕事として、マダムが住んでいたマンションの部屋の点検を
仰せつかる。マダムが住んでいた部屋に入った途端に、
二人は立ちすくんだ。全てが様変わりしている。男の部屋になっている。
”マダムは完璧な女だったけれど、同時に完璧な男だったのだと…………
いや、完全な人間だったのだ”
”マダムは、嘘を真実に変えて、天国に行ってしまったのだ。
覚悟の自殺なのか、死ぬ準備をあらかじめしていたのかそんなことはどうでもいい。
とにかく自らの手で完璧な舞台の幕を、きちんと降ろしてしまった”
”ゲイ”とは、”芸”のことなのか!
ベランダに置かれた鉢花だけが、マダム在りし日のままであった。
大人のファンタジーである。
読み方により、色々の変化を見せる小説である。
オクラホマ
短編集 獬(シェ)、姫椿、再会、マダムの咽仏、トラブルメーカー、
オリンポスの聖女、零下の災厄、永遠の緑 以上8編
”マダムの咽仏”
「マダムは完璧な女だった」の書き出しで始まり、
「マダムの一生は、およそ考え付く限りの完璧な人生だった」に終わる。
銀花のマダム・大内慎太郎の葬儀の日に焦点を当てながら、
物語は膨らんでいく。
マダムは、70歳でも魅力は衰えるどころか、更に増していった。
そのマダムが亡くなり、葬儀の日,従業員のオカマ達は、男になって参列する。
雅美とカオルも、マダムとの会話やマダムの上品で魅惑的な老い(成熟)を
思い出しながら葬儀会場に行く。、
会場には「故大内慎太郎告別式」と出ている。
マダムは、週末は背広を着て家族の待つ家に帰り、後の5日間は、
近くのマンションに住んでいた。そこは、男の匂い等かけらもなく、
人形や調度品などで飾り立てられた部屋であった。
マダムのパトロンという笠置は、新聞や雑誌で見た覚えがある。
立志伝中の実業家である。出棺の時の長男の挨拶では、
「父は、家庭においてはまことに良き夫であり、父であり、祖父でありました。
また職場においては、本日葬儀委員長の労をとっていただきました笠置社長の
片腕として、ほぼ半世紀の長きにわたり、
戦後の日本を支えてまいりました―――」
マダムは、半世紀の長きにわたり嘘をつき続けたのだ。
笠置老人は突然、
「大内。オオウチ、オオウチ、ごくろうさん、よくやった。
大したものだ、ここまでできれば、キサマ……………」
窯の扉が開かれ、棺が吸い込まれた。そのとき笠置は、
陸軍幼年学校の勇壮な校歌を大声で、拳を打ち振るって唄いだした。
笠置と大内は同期であった。
雅美とカオルは、オカマをやめて、演劇と病院の仕事に付く事にする。
最後の仕事として、マダムが住んでいたマンションの部屋の点検を
仰せつかる。マダムが住んでいた部屋に入った途端に、
二人は立ちすくんだ。全てが様変わりしている。男の部屋になっている。
”マダムは完璧な女だったけれど、同時に完璧な男だったのだと…………
いや、完全な人間だったのだ”
”マダムは、嘘を真実に変えて、天国に行ってしまったのだ。
覚悟の自殺なのか、死ぬ準備をあらかじめしていたのかそんなことはどうでもいい。
とにかく自らの手で完璧な舞台の幕を、きちんと降ろしてしまった”
”ゲイ”とは、”芸”のことなのか!
ベランダに置かれた鉢花だけが、マダム在りし日のままであった。
大人のファンタジーである。
読み方により、色々の変化を見せる小説である。
オクラホマ