何事もなく帰った。前回の旅行で、スペインは治安の悪い国との印象であったが、
政府が力を入れ、数年前から安定した国になったとのことである。
夜の外出、地下鉄の乗降も大きな問題はなく、スリ・置き引日本と同じである。
至る所に警官の姿があり、道を尋ねると笑顔で親切に対応するが、
腰にはピストルとこん棒を着けている。
地下鉄では、我々高齢者数人が乗ると、若い男女が席を立ち、笑顔で席を譲る。
外国人から見ても、我々は高齢者に見えるらしい。
日本で席を譲られる場合、言葉も発しないし笑顔もしないで、
ブスッと席を立つ若者に出会う事がある。日本人が負けていると思った。
スマホばかりに夢中になっているのは、日本だけかと思いきや、
世界中がスマホやタブレットに翻弄されているような光景が目に入った。
道を歩きながら、食事をしながら、友達とお喋りしながら、
乗り物の中では言うまでもなく、スマホを手から離さない。
写真もスマホかタブレットで撮る。「自分撮り」なる撮り方も、盛んである。
シーラカンスとかガラパゴスとか骨壷とか言われても、どうしてもなじめない光景である。
スペインへ出発。
関西空港からオランダのフランクフルト経由で、スペインのマドリッドに入る。
シベリア上空を飛ぶ空の旅は、氷に閉ざされた死の世界を、眼下に見る。
氷の世界を半年間も経験したＵ氏に、気温は何度ぐらいかと訊ねると、
－20℃～－30℃ぐらいかなと答える。
－20℃は、死の世界ではなくて労働できる世界とのことである。
上空から眺める氷の世界は、すべての物を白一色に塗った美しい眺めである。
暖かい機内から、パチパチと写すだけである。一瞬考える。
もし何かのトラブルで、この雪国に不時着するようなことになったら、
とても生きられる場所ではないなーと。クワバラ！クワバラ！
ヨーロッパへのフライトは、今回が最後になるかも！
西欧は、キナ臭い臭いが立ち始めた。安全性が更に損なわれつつある。
そのようにしてまで、なぜ旅に出るのかと人は問う。
今回の旅行は、スペインである。何を求めて西の果てまで行くのかと問われれば、
イスラム教とキリスト教の融合した街や建物を、眺めたいからと答えた。
日本の旅では味わえない、外国の旅の緊張した空気を味わうために出かける。
写真・ＴＶや人の話では、存在感がなく、実在しないと同じである。
触ったり眺めたり雰囲気を嗅いだりすると、実在を信じる事ができる。
写真で観たり人の話だけでは、実在しないと同じである。
目に飛び込むものすべてに、別れを言ってくる積りである。
さようなら マドリッド。アデュー サグラダ・ファミリア。アディオス スペイン。
はこちゃんちのノーブル君は、１６才の大型老犬である。
人間なら、そろそろ１００歳を迎える歳であろう。長生きである。
いつも、はこちゃんと一緒で、寝起きを共にしている。
姿が見えないと、不安なのか大声でワンワンと呼び続ける。
最近は足が不自由になり、専用のお布団に寝たままである。
食事はミキサー食であるが、少量ずつ何回にも分けて、食べさせてもらう。
人間は、寝たきりになると施設の世話になる場合が多いが、
ノーブル君は最期まで、住み慣れた場所で、慣れ親しんだはこちゃんと、一緒である。
幸福な犬生（人生）である。自分の将来を考えると、ノーブル君が羨ましくなる。
我が家のポロの犬生（人生）を考える。
他家に住んでいたら、今より幸福であろうとの思いがないように、
出来るだけの面倒をみようと思う。
ノーブル君！ 苦しみなしで、大往生をと祈る！
孫娘Ｎは、４月からピカピカの社会人一年生になる。
会社から２週間の実習をするようにとのことなので、ワンルームマンションを借りて、
自立する事になり、今日移転を終わり、今夜から一人住まいである。
大きくなったものである。
立春と言っても、雪も寒さも冬である。
しかし、畑の蕗は硬い衣が口を開けて、中の蕾を覗かせ始めた。
２～３個摘み、湯通しをして、酢味噌で頂く。
強烈な匂いと、苦味は春の味である。
今日も、「シコ踏んじゃった。ネコ踏んじゃった。」を頑張っているが、
ふらつきも痙攣するような痛さもなくならず、３～４回もすると、息切れする。
無理は禁物と止めてしまう。身体の硬さは変わらない。
Ｎが、一時帰宅する。「実家は良いなー！」とのたまいながら、焼き肉夕食である。
”番茶もで花”とは、上手い表現である。Ｎの肌の美しさは、見惚れるほどである。
母親は、鼻が低いとかブスだと言っているが、それを隠すほどの美肌である。
「化粧品は何を使っているの？」 との問いに、
「別に。顔も洗ったり洗わなかったりで、何の努力もしていない。」とのこと。
なにもかもが美しい自然美である。当然であるが、歳を取るにつれて変化する。
寒ので冬眠状態になっていると、身体全体が硬くなって、動かすとポキポキと音がする。
四股を踏む体操が良いとのうわさを聞いたので、早速試してみる。
片足を上げて、もう一本の足で身体を支えようとしたが、支えきれない。
机か椅子を持って（支えにして）四股踏みをすると、上げた足が痙攣しそうなほど痛い。
無理のないように努力してみるか！！
”シコ踏んじゃった。ネコ踏んじゃった”となってしまいそうである。
兎年生まれおばあちゃんが、”四股踏んじゃった”のイラストである。
寒い日・雨の日・雪の日は、”仕事をしたくない病”に罹り、
ウトウトしながらストーブの番をしている。すると肩が凝ってくるし、
手の上げ下しの度に痛みを伴うようになり、坂道などを歩くと足が震えるようになる。
筋肉の衰えではないかと思い、数日前から少しずつ仕事をし、手や足を動かすようにしている。
一度に簡単に、筋肉が付くはずはない。毎日身体を動かし、何とかしなければいけない。
楽をしていると、身体も頭も坂道を滑り下るごとくダメになる。
今日出来ることをしっかりしなければ、明日は出来なくなる。
定年後の女性は、油断をしていると簡単に歳を取る。不意に訪ねて行くと、スッピンで対応する人が多い。
人目にさらしても様になるスッピンと、こちらがハンカチを掛けたくなるようなスッピンがある。
歳を取るのは残酷な事である。顔も身体も頭も、刻々と変化する。
ある時期を頂点として、下降線をたどる。直線の勾配を、少しでもなだらかにする努力だけはしよう。
御無沙汰の期間が長いほど、共通の話題が見付け難い。
趣味のサークルなら、お互いに興味のある話題が選ばれる。
またボランティアの会でも、中心になる話題がある。
小学校時代の同級生が集まる会等は、話題選びが難しい。
政治や宗教の話題はタブーである。
過去の事件を持ちだしても、「それがどうした。」と思う人もあり、白ける。
「自分は誰よりも苦しい境遇で、苦労をした。自分より苦労をした者はいない。
自分史を書いたら小説になりそうである。」と、その苦しみの内容を話されても、
”あれから６０年！”の今では、インパクトがない。
結局責任のない孫等の話になり、お茶を濁してお開きとなる。
どのような話題を選んだら良いのであろうか？
実りのある会話を期待する方に、無理があるのか？
