「この間、広島FM開局30周年の話をしたんじゃが、その時カットした話題の中に「エアチェック」があったよのう」
「懐かしいねぇ。むかしは、ようやりよったけど」
1970年代の音楽媒体はアナログレコードが主流であったが、日本ではこの時期にコンパクトカセットが広く普及し、レコードを買い揃えるよりFM放送の音楽番組をエアチェックするほうが安価になったうえ、カセットテープの性能も向上して音質的にも満足できる状況となった。
このため、複数のFM情報誌が販売され、それを参考にエアチェックすることが盛んに行われていた。
(「エアチェック」ウィキペディア)
「今じゃったら、聴きたい曲を、聴きたいときにネットで聞いたり、ダウンロードできるんじゃけどね」
「広島FMが開局した1982年(昭和57年)当時は、広島市内でもレンタルレコードの店が増えてきたころ。レンタルでレコードを借りて、聴きたい曲をカセットテープに録音する、という手段ができてきたころじゃの」
「レコードよりも音質がええ(=良い)CDが普及しはじめたのも、このころじゃね」
「ほいじゃが、好きなアーティストや聴きたい曲をFM雑誌なんかで調べてエアチェックをするというのも、ふつうにやりよったよのう」
「FM雑誌や新聞の番組欄には、アーティスト名や曲目が書いてあって、曲目の後には、たいてい曲の時間が書いてあるんよね」
新田一郎
1)渡り鳥はぐれ鳥(3:43)
2)流星City(3:51)
「その曲の時間を合計して、それに合ったテープを準備するんじゃ。上の例でいうと、この2曲で8分くらいありゃ大丈夫かの…と」
「ひとつの番組をまるまる録音するときも、CMの入る時間によって、前半(A面に録音)と後半(B面に録音する)が違うてくるけぇね」
「そうなると、前半と後半で、時間が長い方に合わせてテープを選ばんといけんのじゃ」
「カセットテープと一口に言うけど、42分、46分、50分、54分、60分、90分に120分と、いろんな時間があったもん」
「120分のテープになると、巻き戻しだけでも大変じゃったよのう」
「そうそう。巻き戻しや早送りが終わるのを、ジッと待たんにゃいけんかったりしたんよね」
「あと、テープの種類も決めんといけん」
「ノーマルにクローム、メタルもあったよね」
「もっと細かいことを言うと、ノイズリダクション(NR)や録音レベルを設定する必要もあったのう」
「ノイズリダクションといえば、ドルビーじゃね」
「テープを決めて、設定も決めたら、いよいよ録音じゃ」
「聴きたい曲を録音するときは、テープをスタンバイしておいて、曲がかかる直前にスタートボタンを押す!」
「ガチャッ!」
「曲が終わったら、ストップ!」
「ガチャッ!」
「これを繰り返して、聴きたい曲をテープに録音していくんよね」
「あと、テープをひっくり返すタイミングも大変じゃった」
「あー、あのころのカセットはオートリバースがなかったんよ」
「たとえば、A面での録音が終わったら、最後まで早送りしてB面にひっくり返す」
「ここで早送りしとかんと、B面の最初から録音することができんけぇね」
「この、早送りの時間がじれったかったりするんよの」
「テープをひっくり返そうとして、テープがカセットのヘッドに巻きついたりね」
「せっかくのテープをパアにしてしもうたのも、一度や二度じゃないよのう。余談じゃが、オートリバースといえばナカミチという会社が発売したオートリバースがすごかったのう」
「どんなん?」
「ふつう、オートリバースといえばカセットのヘッドが反転するんじゃが、ここのはカセット本体がひっくり返るというものじゃったんじゃ」
「カセットがひっくり返る?」
「A面が終わると、カセットテープやカセットのヘッドを含むカセット本体が、ガシャっと飛び出す。くるりとひっくり返ると、そのままもどってB面がかかるというものじゃ。ダイイチ(現:エディオン)で実物を見たときは、そりゃたまげたで」
「???」
「口で説明するのは、難しいのう。実物がありゃ早いんじゃが…」
「話を元に戻して…。テープが完成したら、カセットケースに入れるんよ」
「せっかくじゃけぇ、カセットレーベルにも凝りたいよのう」
番組表の表紙(『ザ・ひろしまFM』1984年 39号)
「上の写真で言うと、左側に「リチャード・クレイダーマン」とあるところは、切り取ってカセットの背に入れて使うんよ」
「右側にある原田真二の写真を枠線に沿って切り取ると、カセットケースにちょうど入る大きさなんじゃ」
「カセットレーベルの文字も、手書きで書きよったよね」
「パソコンはもちろん、個人用のワープロがなかった時代じゃけぇ、手で書くしかなかったよの」
「サインペンで、きれいなレタリング文字を書く人もおっちゃったよ」
「わしゃ、インレタ(インスタント・レタリング)で文字を貼ったりしよったで」
「インレタ? …何じゃったっけ?」
「これじゃ」
「あぁ、これ、これ。あった、あった。これって、貼るのが結構、難しかったんよね」
「カセットレーベルの線からズレんようにインレタをセットして、美術の溝引き用のガラス棒でこすって、文字を転写するんじゃ」
「なるほど」
「こうやってせっかく録音したテープも、最近ではまったく聴かんよのう」
「レコードもそうじゃけど、聴かんというより、再生する機器を持っとらんもん」
「そういや、今の世の中、ラジオからエアチェックしている人って、おるんじゃろうか?」
「おってんないんじゃないんかね。うちの子供も、「エアチェック」という言葉を知らんかったもん。カセットテープも、見たことはあるけど、使うたことはないって言いよったしね」
「レンタルやネットもあるし、曲は1曲ずつダウンロード購入できる時代じゃけぇの。時代の流れとはいえ、ちょっと寂しい気がするのはわしだけじゃろうか?」
「今日は、エアチェックについて話をさせてもらいました」
「ほいじゃあ、またの」
「懐かしいねぇ。むかしは、ようやりよったけど」
1970年代の音楽媒体はアナログレコードが主流であったが、日本ではこの時期にコンパクトカセットが広く普及し、レコードを買い揃えるよりFM放送の音楽番組をエアチェックするほうが安価になったうえ、カセットテープの性能も向上して音質的にも満足できる状況となった。
このため、複数のFM情報誌が販売され、それを参考にエアチェックすることが盛んに行われていた。
(「エアチェック」ウィキペディア)
「今じゃったら、聴きたい曲を、聴きたいときにネットで聞いたり、ダウンロードできるんじゃけどね」
「広島FMが開局した1982年(昭和57年)当時は、広島市内でもレンタルレコードの店が増えてきたころ。レンタルでレコードを借りて、聴きたい曲をカセットテープに録音する、という手段ができてきたころじゃの」
「レコードよりも音質がええ(=良い)CDが普及しはじめたのも、このころじゃね」
「ほいじゃが、好きなアーティストや聴きたい曲をFM雑誌なんかで調べてエアチェックをするというのも、ふつうにやりよったよのう」
「FM雑誌や新聞の番組欄には、アーティスト名や曲目が書いてあって、曲目の後には、たいてい曲の時間が書いてあるんよね」
新田一郎
1)渡り鳥はぐれ鳥(3:43)
2)流星City(3:51)
「その曲の時間を合計して、それに合ったテープを準備するんじゃ。上の例でいうと、この2曲で8分くらいありゃ大丈夫かの…と」
「ひとつの番組をまるまる録音するときも、CMの入る時間によって、前半(A面に録音)と後半(B面に録音する)が違うてくるけぇね」
「そうなると、前半と後半で、時間が長い方に合わせてテープを選ばんといけんのじゃ」
「カセットテープと一口に言うけど、42分、46分、50分、54分、60分、90分に120分と、いろんな時間があったもん」
「120分のテープになると、巻き戻しだけでも大変じゃったよのう」
「そうそう。巻き戻しや早送りが終わるのを、ジッと待たんにゃいけんかったりしたんよね」
「あと、テープの種類も決めんといけん」
「ノーマルにクローム、メタルもあったよね」
「もっと細かいことを言うと、ノイズリダクション(NR)や録音レベルを設定する必要もあったのう」
「ノイズリダクションといえば、ドルビーじゃね」
「テープを決めて、設定も決めたら、いよいよ録音じゃ」
「聴きたい曲を録音するときは、テープをスタンバイしておいて、曲がかかる直前にスタートボタンを押す!」
「ガチャッ!」
「曲が終わったら、ストップ!」
「ガチャッ!」
「これを繰り返して、聴きたい曲をテープに録音していくんよね」
「あと、テープをひっくり返すタイミングも大変じゃった」
「あー、あのころのカセットはオートリバースがなかったんよ」
「たとえば、A面での録音が終わったら、最後まで早送りしてB面にひっくり返す」
「ここで早送りしとかんと、B面の最初から録音することができんけぇね」
「この、早送りの時間がじれったかったりするんよの」
「テープをひっくり返そうとして、テープがカセットのヘッドに巻きついたりね」
「せっかくのテープをパアにしてしもうたのも、一度や二度じゃないよのう。余談じゃが、オートリバースといえばナカミチという会社が発売したオートリバースがすごかったのう」
「どんなん?」
「ふつう、オートリバースといえばカセットのヘッドが反転するんじゃが、ここのはカセット本体がひっくり返るというものじゃったんじゃ」
「カセットがひっくり返る?」
「A面が終わると、カセットテープやカセットのヘッドを含むカセット本体が、ガシャっと飛び出す。くるりとひっくり返ると、そのままもどってB面がかかるというものじゃ。ダイイチ(現:エディオン)で実物を見たときは、そりゃたまげたで」
「???」
「口で説明するのは、難しいのう。実物がありゃ早いんじゃが…」
「話を元に戻して…。テープが完成したら、カセットケースに入れるんよ」
「せっかくじゃけぇ、カセットレーベルにも凝りたいよのう」
番組表の表紙(『ザ・ひろしまFM』1984年 39号)
「上の写真で言うと、左側に「リチャード・クレイダーマン」とあるところは、切り取ってカセットの背に入れて使うんよ」
「右側にある原田真二の写真を枠線に沿って切り取ると、カセットケースにちょうど入る大きさなんじゃ」
「カセットレーベルの文字も、手書きで書きよったよね」
「パソコンはもちろん、個人用のワープロがなかった時代じゃけぇ、手で書くしかなかったよの」
「サインペンで、きれいなレタリング文字を書く人もおっちゃったよ」
「わしゃ、インレタ(インスタント・レタリング)で文字を貼ったりしよったで」
「インレタ? …何じゃったっけ?」
「これじゃ」
「あぁ、これ、これ。あった、あった。これって、貼るのが結構、難しかったんよね」
「カセットレーベルの線からズレんようにインレタをセットして、美術の溝引き用のガラス棒でこすって、文字を転写するんじゃ」
「なるほど」
「こうやってせっかく録音したテープも、最近ではまったく聴かんよのう」
「レコードもそうじゃけど、聴かんというより、再生する機器を持っとらんもん」
「そういや、今の世の中、ラジオからエアチェックしている人って、おるんじゃろうか?」
「おってんないんじゃないんかね。うちの子供も、「エアチェック」という言葉を知らんかったもん。カセットテープも、見たことはあるけど、使うたことはないって言いよったしね」
「レンタルやネットもあるし、曲は1曲ずつダウンロード購入できる時代じゃけぇの。時代の流れとはいえ、ちょっと寂しい気がするのはわしだけじゃろうか?」
「今日は、エアチェックについて話をさせてもらいました」
「ほいじゃあ、またの」