12月19日、音響デザイナーの
大野松雄(おおの まつお)さんが
肺化のう症で亡くなられました。
74歳でした。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
今日は、
大野松雄さんについての話でがんす。
今から60年前の
1963年1月1日(火)、
日本で最初の連続テレビアニメ
『鉄腕アトム』の放送が始まった。
そのアトムに音響として関わり、
ピョコッ、ピョコッという、
おおよそロボットらしからぬ
アトムの足音を作り出した方が
大野さんである。
ふつう、ロボットの足音は
カツカツとか、
ガシャンガシャンとかいう
金属音になるはず。
ジャイアントロボやマジンガーZ、
ガンダムが歩くときの音を
思い出してもらえば分かると思う。
しかし、大野さんはこう考えた。
アトムのあの足は鉄製でなく、
ゴム、あるいは樹脂のような
柔らかいもので作られているのでは?
だったら、アトムの足音も
柔らかいものになるのでは?
そう考えた大野さんは、
アトムの足音に
ピョコッ、ピョコッという
ロボットらしくない音を当てた。
アトムのあの足音が使われたことで、
今ではアトムサイズのロボットなら
ああいう足音が「本物らしい」
という認識になっている。
ちなみに、あの音は、
テープに録音したマリンバの音を
再生ヘッドに不規則にこすりつける
ことによって作られたものだという。
今から60年前といえば
シンセサイザーという機器のない時代で、
テープ・レコーダーの機能を活かした
音作りが行われていた。
有名なところでいうと、
ゴジラの鳴き声。
これは松脂をつけた革手袋で
コントラバスの弦をこすった音を録音し、
それを速度を落とし逆回転で再生した。
これは作曲家の
伊福部 昭(いふくべ あきら)さんが
考え出したものを、音響の
三縄 一郎(みなわ いちろう)さんが
加工して作り出したものだという。
↓アトムの音については、こちら↓
「Matsuo Ono, Takehisa Kosugi, "Roots Of Electronic Sound" [CP-025]」YouTube
その大野さんの半生を追った
ドキュメンタリー映画
『アトムの足音が聞こえる』が
今から10年ほど前に公開され、
わしは横川シネマで観た。
↓映画『アトムの足音が聞こえる』については、こちら↓
「『アトムの足音が聞こえる』予告編」YouTube
↓横川シネマについては、こちら↓
横川シネマ公式サイト
予告編の57秒あたり、
空からある物体が落ちてきて、
ドカーン!
という音を発する。
この音の元ネタ、
わかりますか?
…そう、人の声!
大野さんは、
擬音語を声に出して録音し、
それに電子的な変調をかけて
効果音にした。
これは大野さん自身が、
オーラルサウンド
と名付けたという。
そういえば、
宮崎 駿(みやざき はやお)さんの
映画『風立ちぬ』(2013年)では、
飛行機のプロペラ音や
蒸気機関車の蒸気、
関東大震災の地響きなどの音が
人の声で再現されていましたね。
あと、予告編の37秒あたり、
宇宙戦艦ヤマトで宇宙を表現する音が
実は大野さんの影響を受けて作られたと、
柏原 満(かしわばら みつる)さんが
語っておられる。
あの音を聞いただけで、
木村 幌(きむら あきら)さん
による名ナレーションが
脳内再生されるぞ。
無限に広がる大宇宙
静寂な光に満ちた世界。
死んでいく星もあれば、
生まれてくる星もある。
そうだ、宇宙は生きているのだ。
↓大野さんの実作業の様子については、こちら↓
「大野松雄さんのテープ操作」YouTube
以下、余談。
『惑星大戦争 オリジナル・サウンドトラック』東宝レコード
わしが大野さんの名前を知ったのが
映画『惑星大戦争』(1977年)。
音楽を担当したのは、
映画『仁義なき戦い』を手がけた
津島利章(つしま としあき)さん。
大野さんは、
電子音響デザインを担当された。
大野さんが担当されたところでいうと、
サウンドトラック
3曲目「金星」冒頭部の
金星という星の上での音。
4曲目の「宇宙」は音楽はなく、
全編が宇宙空間の音で構成されている。
金星、宇宙と、どちらも実際には
耳にすることのない「音」を、
本物らしく再現してあるんじゃの。
6曲目「轟天(ごうてん)のテーマ」は、
地下基地から地上にあらわれた
宇宙防衛艦・轟天が、
大空へと飛び上がっていく音が
挿入されている。
7曲目「大魔艦のテーマ」の冒頭部は、
金星上に潜む敵・大魔艦を
イメージした音。
9曲目「戦闘」では、
地球側のスペースファイターと
敵側のヘルファイターの交戦する音が
全編にちりばめられている。
以下、さらに余談。
大野さんと広島で思い出すのが、
広島出身の映画監督、
新藤兼人(しんどう かねと)さんの
映画『裸の島』(1960年)。
この映画は、
経営危機にあった近代映画協会が
解散記念作品として、
撮影期間1か月、500万円の低予算で
制作した映画。
水のない孤島で
自給自足の生活を行う親子4人の
家族の葛藤を描いたこの作品には、
一切セリフが無い。
水のない島のため、
手こぎ船で近くの島まで水を汲みに行き、
それを生活用として使い、
水をまいて畑を耕す
という生活を送っている。
この映画の音楽を担当した
林 光(はやし ひかる)さんは、
音楽以外に生活の音が重要になると考え、
大野さんに音に関わる部分を依頼した。
大野さんはロケ地である
広島県三原市へ足を運び、
現地で拾った音を画面に入れたり、
画面に合ったさまざまな水の音を
作り出したという。
【参考ホームページ】
大野松雄の音響世界
今日は、
大野松雄さんについて
話をさせてもろうたでがんす。
ほいじゃあ、またの。
大野松雄(おおの まつお)さんが
肺化のう症で亡くなられました。
74歳でした。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
今日は、
大野松雄さんについての話でがんす。
今から60年前の
1963年1月1日(火)、
日本で最初の連続テレビアニメ
『鉄腕アトム』の放送が始まった。
そのアトムに音響として関わり、
ピョコッ、ピョコッという、
おおよそロボットらしからぬ
アトムの足音を作り出した方が
大野さんである。
ふつう、ロボットの足音は
カツカツとか、
ガシャンガシャンとかいう
金属音になるはず。
ジャイアントロボやマジンガーZ、
ガンダムが歩くときの音を
思い出してもらえば分かると思う。
しかし、大野さんはこう考えた。
アトムのあの足は鉄製でなく、
ゴム、あるいは樹脂のような
柔らかいもので作られているのでは?
だったら、アトムの足音も
柔らかいものになるのでは?
そう考えた大野さんは、
アトムの足音に
ピョコッ、ピョコッという
ロボットらしくない音を当てた。
アトムのあの足音が使われたことで、
今ではアトムサイズのロボットなら
ああいう足音が「本物らしい」
という認識になっている。
ちなみに、あの音は、
テープに録音したマリンバの音を
再生ヘッドに不規則にこすりつける
ことによって作られたものだという。
今から60年前といえば
シンセサイザーという機器のない時代で、
テープ・レコーダーの機能を活かした
音作りが行われていた。
有名なところでいうと、
ゴジラの鳴き声。
これは松脂をつけた革手袋で
コントラバスの弦をこすった音を録音し、
それを速度を落とし逆回転で再生した。
これは作曲家の
伊福部 昭(いふくべ あきら)さんが
考え出したものを、音響の
三縄 一郎(みなわ いちろう)さんが
加工して作り出したものだという。
↓アトムの音については、こちら↓
「Matsuo Ono, Takehisa Kosugi, "Roots Of Electronic Sound" [CP-025]」YouTube
その大野さんの半生を追った
ドキュメンタリー映画
『アトムの足音が聞こえる』が
今から10年ほど前に公開され、
わしは横川シネマで観た。
↓映画『アトムの足音が聞こえる』については、こちら↓
「『アトムの足音が聞こえる』予告編」YouTube
↓横川シネマについては、こちら↓
横川シネマ公式サイト
予告編の57秒あたり、
空からある物体が落ちてきて、
ドカーン!
という音を発する。
この音の元ネタ、
わかりますか?
…そう、人の声!
大野さんは、
擬音語を声に出して録音し、
それに電子的な変調をかけて
効果音にした。
これは大野さん自身が、
オーラルサウンド
と名付けたという。
そういえば、
宮崎 駿(みやざき はやお)さんの
映画『風立ちぬ』(2013年)では、
飛行機のプロペラ音や
蒸気機関車の蒸気、
関東大震災の地響きなどの音が
人の声で再現されていましたね。
あと、予告編の37秒あたり、
宇宙戦艦ヤマトで宇宙を表現する音が
実は大野さんの影響を受けて作られたと、
柏原 満(かしわばら みつる)さんが
語っておられる。
あの音を聞いただけで、
木村 幌(きむら あきら)さん
による名ナレーションが
脳内再生されるぞ。
無限に広がる大宇宙
静寂な光に満ちた世界。
死んでいく星もあれば、
生まれてくる星もある。
そうだ、宇宙は生きているのだ。
↓大野さんの実作業の様子については、こちら↓
「大野松雄さんのテープ操作」YouTube
以下、余談。
『惑星大戦争 オリジナル・サウンドトラック』東宝レコード
わしが大野さんの名前を知ったのが
映画『惑星大戦争』(1977年)。
音楽を担当したのは、
映画『仁義なき戦い』を手がけた
津島利章(つしま としあき)さん。
大野さんは、
電子音響デザインを担当された。
大野さんが担当されたところでいうと、
サウンドトラック
3曲目「金星」冒頭部の
金星という星の上での音。
4曲目の「宇宙」は音楽はなく、
全編が宇宙空間の音で構成されている。
金星、宇宙と、どちらも実際には
耳にすることのない「音」を、
本物らしく再現してあるんじゃの。
6曲目「轟天(ごうてん)のテーマ」は、
地下基地から地上にあらわれた
宇宙防衛艦・轟天が、
大空へと飛び上がっていく音が
挿入されている。
7曲目「大魔艦のテーマ」の冒頭部は、
金星上に潜む敵・大魔艦を
イメージした音。
9曲目「戦闘」では、
地球側のスペースファイターと
敵側のヘルファイターの交戦する音が
全編にちりばめられている。
以下、さらに余談。
大野さんと広島で思い出すのが、
広島出身の映画監督、
新藤兼人(しんどう かねと)さんの
映画『裸の島』(1960年)。
この映画は、
経営危機にあった近代映画協会が
解散記念作品として、
撮影期間1か月、500万円の低予算で
制作した映画。
水のない孤島で
自給自足の生活を行う親子4人の
家族の葛藤を描いたこの作品には、
一切セリフが無い。
水のない島のため、
手こぎ船で近くの島まで水を汲みに行き、
それを生活用として使い、
水をまいて畑を耕す
という生活を送っている。
この映画の音楽を担当した
林 光(はやし ひかる)さんは、
音楽以外に生活の音が重要になると考え、
大野さんに音に関わる部分を依頼した。
大野さんはロケ地である
広島県三原市へ足を運び、
現地で拾った音を画面に入れたり、
画面に合ったさまざまな水の音を
作り出したという。
【参考ホームページ】
大野松雄の音響世界
今日は、
大野松雄さんについて
話をさせてもろうたでがんす。
ほいじゃあ、またの。