「お父さん、嫁ブリが届いたよ」
「おぉ、届いたか。ほぉ、これが嫁ブリかぁ」
「3枚におろしたブリが入っとるんじゃね」
「今日は、嫁ブリについての話でがんす」
「今年、長女が結婚したんじゃが、相手は福岡の方じゃった」
「結婚式の時、新郎のご両親から「嫁ブリを贈りたいんですけど」といわれたんじゃけど、うちらはそんなの全然知らんけぇ、「すいません、嫁ブリってなんですか?」って聞いたよね」
「嫁ブリいうのは、結婚した年の瀬に、新郎の実家から新婦の実家へブリを一本まるごと贈る習慣なんじゃそうな」
「「大切なお嬢様をいただいて、ありがとうございます。良いお嫁さんっぷりです」という感謝の気持ちこめてのことじゃそうなね」
「「良い(=よか)お嫁さんっぷり」の「~っぷり」と、正月に欠かせない寒ブリの「ブリ」の語呂合わせからきとるそうじゃ」
「ブリは、成長によって呼び名が変わる出世魚でもあるよ」
「福岡では、お正月の雑煮にブリを入れるブリ雑煮をいただくそうじゃの」
「うちゃ、ブリのアラで出汁(ダシ)を取った年越しそばをいただこうかね」
「以下、余談じゃ」
「さっき、嫁ブリのお礼の電話をしたら、2日目まではお刺身でいただいて、3日目からは漬け(づけ)がいいっていわれたよ」
「漬けいうたら、タレに漬けるやつか?」
「そう。刺身をしょう油とみりんに漬けて、すりごまをかけていただくんじゃと」
「おぉ、そりゃどんぶりめしにのせて食うたら、絶対にうまいで」
「試してみようね」
「以下、さらに余談じゃ」
「ところで、嫁ブリって福岡だけの習慣なんじゃろか?」
「調べてみたら、福岡だけじゃのうて佐賀や熊本にもあって、岡山でも嫁ブリの習慣があるらしいで」
「九州から、山口・広島をすっ飛ばして岡山? なんでじゃろ?」
「今の福岡県、むかしの筑前国(ちくぜんのくに)は、江戸時代は福岡藩で、初代藩主は黒田長政(くろだ ながまさ)じゃった」
「黒田長政いうたら、豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)の軍師じゃった黒田官兵衛(くろだ かんべえ)の跡継ぎじゃね」
「その黒田家の先祖をたどっていくと、備前国(びぜんのくに)福岡(現:岡山県瀬戸内市長船町福岡(せとうちし おさふねちょう ふくおか))の出らしいの」
「岡山の福岡? 福岡県の福岡という名前はそこからついたんじゃろか?」
「…という説もあるそうじゃ」
「今日は、嫁ブリについて話をさせてもろうたでがんす」
「というわけで、これが今年最後のブログになります」
「今年1年、このブログを読んでいただき、ありがとうございました」
「来年もよろしくお願いいたします。ほいじゃあ、またの」