宍戸オートバイ製作所とSSD号

昭和の初めの広島で
オートバイを製造していた
「宍戸オートバイ製作所」の資料が
広島市公文書館に寄贈された、
という記事が中国新聞に載っていた。





↓「宍戸オートバイ製作所」の記事については、こちら↓

「「広島産」バイク資料、市公文書館へ　昭和初期「幻のメーカー」宍戸製作所　元工場長の孫寄贈」中国新聞





「宍戸オートバイ製作所」を創設したのが
宍戸健一（ししど けんいち）で、
その第一号車には「SSD号」という
名がつけられたという。





今日は、
宍戸オートバイ製作所とSSD号
についてでがんす。





オートバイの歴史は1863年、
フランスの発明家が
蒸気機関で動く二輪車を開発したことが
始まりと言われる。

日本オートバイの歴史は、
海外からの輸入によって始まった。

輸入車が全盛だった1909年（明治42）、
国産第1号のオートバイを造ったのが、
島津楢蔵（しまづ ならぞう）。

彼が造るオートバイは
「NS号」と名づけられた。





それから17年後の1926年（大正15）。

オートバイの部品を、
輸入品に頼らず自分の手で造った人こそ、
冒頭で紹介した宍戸健一である。





宍戸は1891年（明治24）、
広島市鶴見町生まれ。

広島市内の鉄工所に勤めた後、
呉にある海軍工廠に入り、
職工長に抜擢された。

1917年（大正6）、
宍戸は海軍工廠を退職した後、
広島市竹屋町に宍戸鉄工所を設立。





転機となったのが、
1923年（大正12）に起こった
関東大震災。

震災の視察に出かけた宍戸は、
そこで焼け残っていた
トライアンフ製のオートバイから、
エンジンとギヤボックスを買い求め、
オートバイの製作を始めたという。





翌1924年（大正13）、
「宍戸オートバイ製作所」を設立。

1926年（大正15）6月に第一号車が完成、
宍戸（ししど）の名にちなんで
「SSD号」と名づけられた。

ししど→SISIDO→SSD
…というわけ。





SSD号はその年の12月、
広島の観音グラウンドで行われた
全国オートバイ競走大会で、
4級車（250cc級）で1着、
2級車（500cc級）で2着という
好成績を収めた。





また、1930年（昭和5年）には、
9月5日から16日までの12日間、
約82時間をかけて、
北海道の旭川から九州の鹿児島までの
約3,200キロメートルを走破するという
日本縦断記録を達成した。





SSD号は性能と技術の優秀さが認められ、
軍部や官公庁が主な取引先となった。

が、一般での売れ行きは
イマイチであったため資金繰りに追われ、
宍戸オートバイは1934年（昭和9年）
廃業したという。





以下、余談…。


日本では、
「オートバイ」または
「バイク」と呼ぶんじゃが、
英語圏では「モーターサイクル」または
「モーターバイク」と呼ぶそうな。

「オートバイ」という呼び方は
アメリカ英語の「オートバイク」
に由来する和製英語なんじゃと。





以下、さらに余談…。


戦前の広島には
旧陸軍の第5師団があり、
軍都として発展していた。

その第5師団の後押しもあり
広島はオートバイレースが盛んに行われ、
レースの開催数も東京、大阪に次いで
多かったそうな。


レース会場としては、
西練兵場（旧広島市民球場から
広島県庁あたり）、
観音グラウンド、
宇品の中国グラウンド
（市立宇品中学校あたりか？）
などがあったという。


広島で初めての
オートバイレースが行われたのは、
1918年（大正7）の招魂祭でのこと。

10月23日・24日の2日間、西練兵場で
18レースが行われたという。


宍戸オートバイ製作所が
広島の地で誕生したのも、
当然のことといえるじゃろう。





以下、もひとつだけ余談…。



NHKのニュース映像の中に、
「オートバイ競走　広島＜時の話題＞」
というのがあった。

これは戦後のニュース映像じゃが、
戦前の広島のオートバイレースも
これくらい盛り上がったんじゃろうの。





↓「オートバイ競走　広島＜時の話題＞」については、こちら↓

「ニュース映像　戦後編 第７４号」NHK 戦争証言アーカイブス





参考文献

田辺良平「オートバイ製作の先駆け　宍戸健一」『広島産業界先駆け者伝 -時代の先頭を走った人たち-』（2013年　春秋社）

三保 浩一郎『広島モーターサイクルレース全史』（2015年　文化評論　広島市交通科学館蔵書）

「国産バイク資料　市公文書館へ」（2021年1月17日　中国新聞）





今日は、宍戸オートバイ製作所とSSD号
について話をさせてもらいました。



ほいじゃあ、またの。