手塚作品の復刻では、先日出た『完全復刻版 新寳島』が大きな話題になったが、今度はジェネオンエンタテインメントより『手塚治虫 予告編マンガ大全集』が発売された。
さっそく一通り読んでみたが、『完全復刻版 新寳島』とは対照的な本だと感じた。
『新寳島』は手塚治虫の実質的デビュー単行本として多くのマンガファンに名前が知られており、現代でどの程度の人が読もうと思うかは別にして、かなり有名なタイトルだろう。だからこそ、その原本復刻は話題となった。
それに対して、『予告編マンガ大全集』に収録されているのは漫画本編ではなく、その予告編。これは基本的に作品本編より前に描かれるものだから、実際に描かれた作品とどう違うかを比べるのが面白いのだが、それには本編を読んでいないと意味がない。
この本は「本編からの流用でない新作画による予告編」が可能な限り収録されているので、その半分以上は、ある程度熱心な手塚ファンでないと知らないマイナー作品で占められている。だから、講談社版「手塚治虫漫画全集」収録作品を一通り読んでいるくらいでないと、この本の大半はただ予告イラストを眺めるだけになって、あまり面白くない可能性が高い。
要するに、単体でも本として成り立っている『新寳島』と違って、この『予告編マンガ大全集』は読んで楽しむための敷居が非常に高いのだ。
それは、価格設定についても言える。300ページ弱で本体価格6,500円は、これまで出たジェネオンの手塚復刻本と比べても、一番高額だ。あまりに企画がマニアックすぎて、このくらいの値段にしないと採算が取れないのだろう。正直言って、よくこの企画が通ったものだと感心してしまう。
しかし、マニアックな内容であるだけに、手塚ファンにとっては必見と言える実に面白い本だと思う。
私も、買って読むまではさすがにこの値段は高いと思っていたのだが、実際に読んで面白かったので、価格にも納得させられてしまった。
たとえば『鉄腕アトム』が予告の時点では『鉄人アトム』だったという事は結構有名だろうし、当然それもこの本に収録されているが、『アトム』の場合キャラクターは固まっていてタイトルが変わっただけなので、他の作品と比べるとまだおとなしい方だ。
この本を見ると、『アトム』の逆でタイトルは決まっていてもキャラクターの顔が実際の本編と違うパターンが結構多い。『ルードウィヒ・B』のベートーヴェンは顔がへしゃげていて別人に見えるし、『ミクロイドZ』(連載途中で『ミクロイドS』に改題)はヤンマ(らしきキャラ)がマスクを付けていて、よりテレビヒーローっぽい。
また、『勇者ダン』は予告の時点では探偵物と紹介されており、全く内容が変わってしまった事が伺える。短編「ふたりでリンゲル・ロック」「低俗天使」などもそうだろう。この2編については講談社全集でも直前で内容が変わった事への言及があった。
このように色々とある中で、特にすごかったのは『ハリケーンZ』の予告で、11ページも使って連載第一回の内容をほぼ丸々ダイジェストで紹介してしまっている。これなら、この時点で連載開始にすればよかったのに…などと思ってしまった。
小さいカットから数ページにわたるコマ漫画まで、この本には色々な形式の予告編が収録されているが、いずれも作品発表までの試行錯誤の跡が伺えて、実に興味深い。
前述のように、万人に薦められる内容では決してないが、「今、単行本で読める手塚作品はあらかた読んでしまった」と言うような人なら間違いなく楽しめるだろう。
それにしても、手塚漫画の復刻も色々と出たあげくに、この本で行くところまで行ってしまった感がある。
予告編だけではページを埋められなかったせいか、巻末には全集未収録作品がいくつか収められているが、ページ数の少ない細かな作品が多い。おそらく、内容的に問題なく再録できる未収録作品も、もうネタ切れなのだろう。
あとは、「内容的に問題のある」ものを何とかして欲しいところだ。
初期単行本『キングコング』『妖怪探偵團』や、ライオンブックスシリーズ新旧通して唯一の単行本未収録作品となってしまった「泥だらけの行進」などはぜひ出して欲しいが、これらはもしかすると『新寳島』よりも難しいのだろうか。
さっそく一通り読んでみたが、『完全復刻版 新寳島』とは対照的な本だと感じた。
『新寳島』は手塚治虫の実質的デビュー単行本として多くのマンガファンに名前が知られており、現代でどの程度の人が読もうと思うかは別にして、かなり有名なタイトルだろう。だからこそ、その原本復刻は話題となった。
それに対して、『予告編マンガ大全集』に収録されているのは漫画本編ではなく、その予告編。これは基本的に作品本編より前に描かれるものだから、実際に描かれた作品とどう違うかを比べるのが面白いのだが、それには本編を読んでいないと意味がない。
この本は「本編からの流用でない新作画による予告編」が可能な限り収録されているので、その半分以上は、ある程度熱心な手塚ファンでないと知らないマイナー作品で占められている。だから、講談社版「手塚治虫漫画全集」収録作品を一通り読んでいるくらいでないと、この本の大半はただ予告イラストを眺めるだけになって、あまり面白くない可能性が高い。
要するに、単体でも本として成り立っている『新寳島』と違って、この『予告編マンガ大全集』は読んで楽しむための敷居が非常に高いのだ。
それは、価格設定についても言える。300ページ弱で本体価格6,500円は、これまで出たジェネオンの手塚復刻本と比べても、一番高額だ。あまりに企画がマニアックすぎて、このくらいの値段にしないと採算が取れないのだろう。正直言って、よくこの企画が通ったものだと感心してしまう。
しかし、マニアックな内容であるだけに、手塚ファンにとっては必見と言える実に面白い本だと思う。
私も、買って読むまではさすがにこの値段は高いと思っていたのだが、実際に読んで面白かったので、価格にも納得させられてしまった。
たとえば『鉄腕アトム』が予告の時点では『鉄人アトム』だったという事は結構有名だろうし、当然それもこの本に収録されているが、『アトム』の場合キャラクターは固まっていてタイトルが変わっただけなので、他の作品と比べるとまだおとなしい方だ。
この本を見ると、『アトム』の逆でタイトルは決まっていてもキャラクターの顔が実際の本編と違うパターンが結構多い。『ルードウィヒ・B』のベートーヴェンは顔がへしゃげていて別人に見えるし、『ミクロイドZ』(連載途中で『ミクロイドS』に改題)はヤンマ(らしきキャラ)がマスクを付けていて、よりテレビヒーローっぽい。
また、『勇者ダン』は予告の時点では探偵物と紹介されており、全く内容が変わってしまった事が伺える。短編「ふたりでリンゲル・ロック」「低俗天使」などもそうだろう。この2編については講談社全集でも直前で内容が変わった事への言及があった。
このように色々とある中で、特にすごかったのは『ハリケーンZ』の予告で、11ページも使って連載第一回の内容をほぼ丸々ダイジェストで紹介してしまっている。これなら、この時点で連載開始にすればよかったのに…などと思ってしまった。
小さいカットから数ページにわたるコマ漫画まで、この本には色々な形式の予告編が収録されているが、いずれも作品発表までの試行錯誤の跡が伺えて、実に興味深い。
前述のように、万人に薦められる内容では決してないが、「今、単行本で読める手塚作品はあらかた読んでしまった」と言うような人なら間違いなく楽しめるだろう。
それにしても、手塚漫画の復刻も色々と出たあげくに、この本で行くところまで行ってしまった感がある。
予告編だけではページを埋められなかったせいか、巻末には全集未収録作品がいくつか収められているが、ページ数の少ない細かな作品が多い。おそらく、内容的に問題なく再録できる未収録作品も、もうネタ切れなのだろう。
あとは、「内容的に問題のある」ものを何とかして欲しいところだ。
初期単行本『キングコング』『妖怪探偵團』や、ライオンブックスシリーズ新旧通して唯一の単行本未収録作品となってしまった「泥だらけの行進」などはぜひ出して欲しいが、これらはもしかすると『新寳島』よりも難しいのだろうか。
私は、小学生の頃入院をきっかけに、「まんが道」を読み、そこから手塚作品にのめり込みました。
中学進学と共に、勉強のため漫画からは離れたのですが、昨年の震災をきっかけにフリーの身となり、自分の時間を大事にするためにまた手塚作品を最近読み始めました。
小学生当時は、すべてのお小遣いを手塚作品に注いだので、漫画全集のうち120冊程度は集めたと思います。(すべて処分してしまったのが悔やまれます)
もう25年前の話しですが、私の住む仙台では漫画全集はどの巻でも入手できるというほどの品揃えのある書店はどこにもなく、講談社に入手方法を電話して聞いたりしました。
そこで、講談社には直売部があり、現金書留でお金を支払えば、どの巻でも送ってもらえたのですごく助かった記憶があります。
別のエントリ
http://blog.goo.ne.jp/hballoon/e/f98d47e2fda4915793f42bd191d43c9d
で書いたのですが、私も手塚作品を集めるきっかけは、入院した事でした。
その後、小中学生時代に手塚作品を集めていた事も似ていて、ふしぎな気持ちです。全て処分されてしまったのは、確かに残念ですね。それでも、手塚作品は全集が現役ですから、その気になれば読める分だけ恵まれていますが。
手塚作品と全集についての貴重な思い出話、ありがというございました。