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『三つ目がとおる』少年マガジン復刻版・発売!

2014-03-04 22:13:58 | 手塚治虫
 待ちに待っていた『週刊少年マガジン完全復刻版 三つ目がとおる イースター島航海』が、ようやく昨日、発売された。
 これは書名の通り、これまでに出版されてきた単行本バージョンではなく、初出誌『週刊少年マガジン』に掲載されたそのままの内容を誌面から復刻したもの。手塚ファンならご存じの通り、特に長編連載の手塚作品は単行本化にあたっていろいろと編集が加えられる事が多く、作品によっては別物と言ってもいいものもある(例:『ダスト8』と『ダスト18』など)。

 今回出版された『三つ目がとおる』の「イースター島航海編」も、別物とまではいかないものの、比較的大きな修正が加えられていることを知っていたので、近年の手塚作品の「オリジナル版」流行りのなかで、これも出ないかなと以前から思っていた。
 思い返せば、最初に「イースター島航海編」の初出版を、部分的にではあるが読んだのは大学生の時だった。当時たまに行っていた古書店(今はなき、春日井の勝川古書センター!)に1970年代中頃の『週刊少年マガジン』が大量に入荷していて、中をチェックしたら『三つ目がとおる』でバン・ドンならぬ出杉が登場している場面があったのだ。
 当時、『三つ目』の未収録はまだ特にチェックしていなかったので、これが「猪鹿中学」「長耳族」に登場した猪鹿中学の番長だと言うことは知らなかった。だからこそ、「なんでバン・ドンじゃないんだ?」と、余計に不思議だったのを覚えている。この辺の事情については今回の『完全復刻版』巻末の解説に書いてあるので、そちらを参照されたい。
 その後、社会人になってから、図書館で初出誌を体系的にチェックするようになり、『三つ目がとおる』は、古い方から順番に初出誌を読んでいったが、「イースター島航海編」まではたどり着かなかったように覚えている。それに、いくら描き換えがあるからと言って、連載ものをいちいちコピーしていると非常に金がかかるので、コピーはほとんどとっていない。そんな状態だったので、今回の『完全復刻版』刊行は、非常にありがたい。

 それにしても、『完全復刻版』が出るまで、本当に長い間待った。
 『三つ目がとおる』は、これまで何度も単行本化されており、近年だけでも『手塚治虫文庫全集』版全7巻と『GAMANGA BOOKS』版全10巻の2回も刊行されている。このうち、後者のGAMANGA BOOKS版については、「連載順に収録し、カラーもすべて再現」と言う事だったので、「もしや初出版での収録なのでは」と期待したのだが、ふたを開けてみると、単に収録順が初出の順なだけで中身は今まで通りの単行本版だったので、がっかりしたのだった。
 そんなことがあったし、また復刊ドットコムの復刻シリーズも『ブッダ』が始まったので、もう『三つ目』の初出版はもう出ないんじゃないかとすら思ったこともあったが、それがこうやって刊行されたのだから、生きてさえいればいいこともあるものだ。
 なお、未収録についてもちょっと触れておくと、『手塚治虫漫画全集』以降に出された単行本では9話の未収録があった。これらを最初に収録した単行本シリーズは、なんとコンビニコミックだった。KPCと言うシリーズで、単行本未収録作品を含めて全作品をほぼ初出順に収録した、画期的な内容だった。その後、講談社漫画文庫で『三つ目がとおる 秘蔵短編集』として未収録だけで一冊にまとめられたほか、手塚治虫文庫全集もKPCと似た編集内容で全話が収録されている。

 さて、こうなると次に気になるのは、この『完全復刻版』に「次」はあるのかと言うことだ。
 『三つ目』では、長編だけでも「三つ目族の謎編」「グリーブの秘密編」「怪植物ボルボック編」「古代王子ゴダル編」「地下の都編」「怪鳥モア編」と、6編もある。中でも、個人的に初出版を出してほしいのはグリーブ編だ。
 このシリーズは、単行本だけでもKCマガジン版、手塚治虫漫画全集版、手塚治虫文庫全集版で異同が認められる。それぞれ、始まり方もしくは終わり方が違うのだ。また、初出版では上底先生の属する組織が単行本とは異なる(「全ピキ連」ではない)など、バージョン違いが非常に多い。だからこそ、ぜひ全ての始まりである初出版を単行本化してほしい。
 もちろん、グリーブ編以外のシリーズも、せっかくだから全て出してほしい。ここまで長い間待ったのだから、そう焦ることはない。落ち着いて待ちます。

 最後に書いておきたいのは、この本の価格について。本体価格1,900円とは、夢のような安さだ。
 普通の漫画単行本と比べると、高いと言えば高いのだが、最近は手塚作品の復刻というと小学館クリエイティブや復刊ドットコムの価格ばかり目に付くようになっていたので、それらと比べると本当に今回の本はお買い得だ。A5判というのも、F全集や水木全集と一緒なのでおなじみなのでいい感じだ。この調子で続けて行ってくれれば、本当に言うことはない。

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