はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

F全集『ドラえもん』第1・2巻感想

2009-09-23 01:05:08 | 藤子不二雄
 9月23日は藤子・F・不二雄先生のご命日。
 思い返せば、2年前には『オバケのQ太郎』が復刊されない件について、かなり悲観的な文章を書いていたが、それが今や「藤子・F・不二雄大全集」で堂々の復活を果たした。いや、それどころか、もっと復刊が絶望視されていた『ジャングル黒べえ』も来年には全集でお目見えする予定なのだから、今年は本当にガラッと状況が変わってFファンにとって夢のような年となった。


 その大全集ももうすぐ第3回配本が発売となるが、当ブログで未だに全集版の『ドラえもん』については本格的に取り上げていなかった。この機会に、既刊の2巻まで読んだ感想をまとめて書いておく。

 まず、現時点で全集版の『ドラえもん』に対して抱いている印象だが、もっとも強く感じるのは、このシリーズが従来の「てんとう虫コミックス」とは全く別バージョンの単行本なのだと言う事だ。
 これは、単行本初収録作品が入っていたり、連載順に読めるからと言った点からの印象だけではない。全集のセールスポイントとされていた「学年繰り上がり編集」で連載時の発表順を追体験(リアルタイム読者にとっては再体験)できるのは面白い趣向だが、この方針で単純に収録順を並び替えているだけではなく、「タケコプター」のセリフを「ヘリトンボ」に戻したり、単行本としては初めてのび太の誕生年を昭和37年とするなど、本編にも踏み込んで学年誌における雰囲気の再現に努めているからだ。
 セリフで分かりやすいのは第2巻収録の「ツチノコ見つけた!」で、冒頭ののび太のセリフがてんコミの「ぼくは、やがておとなになるだろう」から、初出時の「ぼくはまもなく中学生」(「小学六年生」3月号に掲載)に戻されているところなどが挙げられる。他にも、単行本初収録となった「オーケーマイク」では、最後に「三年生になったら、「小学三年生」でかつやくするよ。読んでね。」とドラとのび太からの読者への挨拶があるが、これも今回の編集方針だからこそ無理なくそのまま収録できたのだろう。

 また、本全集全般について言える事だが、極力F先生の原稿を使用して、トレスを排除しているのも「てんコミ」とは異なる点だ。おかげで、ヘロヘロな線で「とにかくトレスが下手くそな作品」と言う印象が強かった「わすれろ草」や「人間あやつり機」を、ちゃんとF先生が描かれた元原稿で読む事が出来た。これらの作品がカラー収録されていないのは残念だが、てんコミのトレスに比べればよっぽどいい。
 「トレス排除」が徹底しているため原稿紛失作品は印刷物からの復刻となり、1巻の「夜の世界の王さまだ!」は線が粗いが、一部のコマだけ印刷が綺麗なので、原稿紛失でトレスした上にいくつかのコマを描き足したのだろうと推測できて、これはこれで面白い。

 これらの編集方針のおかげで、てんコミで既読の作品であっても新鮮な気分で読む事が出来た。正直なところ、刊行前は「学年繰り上がり編集」を収録順だけのものかと甘く見ていたが、ここまで徹底してくれると今後も楽しみだ。


 他にも、全集版『ドラえもん』について、気付いた点を箇条書きで挙げておこう。


 ・自主規制絡みのセリフの復元(これは1巻と2巻で方針が定まっていない感じ)
 ・セワシの「東京→大阪」理論は「未来の国からはるばると」と「愛妻ジャイ子!?」の両方に登場(後者はFFランドではカットされていた)
 ・「あやうし!ライオン仮面」の雑誌の月も初出に復元
 ・ドラのポケット・タケコプター描き忘れは修正無し(「まんが家」で自力で宙に浮いている)
 ・「通心はん売」も復活


 他にも、まだまだ見逃している箇所はありそうだが、とにかくてんコミとは別バージョンの『ドラえもん』になっている事は間違いない。
 全集が出るからと言ってこれまで集めた単行本を手放す気は初めから全くなかったが、てんコミと全集とでこれだけ違いがあると、両方を手元に置いておく事に大きな意味があるので、その点でも全集が「別バージョン」であるのはありがたい。また、低学年向けのカラー作品も2巻までは全て白黒収録なので、『ドラえもん カラー作品集』も当然手放せない。
 今回の全集では『ドラえもん』に限らず未収録分だけをチェックすればいいかと思っていたが、どうやらそうは行かないようだ。読む楽しみが増えて嬉しいのは確かだが、少なくとも『ドラえもん』に関しては、てんコミ→作者自選による決定版、全集→完全収録&学年繰り上がり編集と、性格の異なる二つの単行本が同じ社から出ているのだから、ちょっと奇妙だとも言える。


 以上、グダグダと書いたが、全集もまだ始まったばかり。これからが本番だ。まずは、明後日発売の『パーマン』第2巻に収録される「スーパー星への道」が楽しみだ。全集の編集方針から推察すると、「スーパー星への道」としての最終形であるホームコミックス版が収録されるのだろうか。
 ちなみに、現在の我が家の本棚の状況は以下の通り。第3回配本は2冊だからまだいいが、第4回で確実にパンクする。そろそろ何とかしなければ。





最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ドラ大全集は、糊付けが甘い (ルチャ・ティグレ)
2009-09-24 03:03:14
お世話になります。

ドラえもんの大全集の1巻の糊付けは、
甘いけれどなんとか読めました。
しかし、2巻に関しては、極端に糊付けが甘く、
普通に読んでるだけで真ん中辺りから、
割れてきてしまいます。

小学館制作局に、送り返しましたが、
送られてきたものも極端に糊付けが甘いものでした。
今後は、糊付けをもっとしっかりするように
製本会社に指導しておいて欲しいと提言しましたが、
糊付けの甘いものを良品として送ってくる会社なので
期待できないでしょう。
(もしかして全部糊付けが甘いのかも?)

やはり、この厚さだと毎回糊付けのことが気になり、
集中して漫画の内容を楽しめません。
本を上にして寝ながら読めないのも難点です。
各話を探すのも面倒。
できれば、小3までで区切り、2冊に分けてくれた
方が、ありがたいです。
小3までだと、ページ数が少ないため、
小4以降より薄くなりますが、
そこはカラー原稿は、本来のカラーにして
値段を上げてでも再現してほしかったです。
今回の2巻の小3までの原稿は、ほとんどカラーの
作品なのに、モノクロでの収録だったので、
とくに強く感じました。
返信する
ドラの厚さ (おおはた)
2009-10-13 00:26:22
>しかし、2巻に関しては、極端に糊付けが甘く、
>普通に読んでるだけで真ん中辺りから、
>割れてきてしまいます。

 私の持っている2巻は、そこまで糊付けが甘いと言う事はないですが、やはり分厚いせいで、どうしても開く時に慎重になってしまいます。
 『ドラえもん』の厚さはは学年繰り上がり収録にこだわった結果ですが、たしかに2分冊にしてもよかったかも知れません。普通に気楽に読むには『オバQ』の400ページが限界だと思います。
 『ドラえもん』は、すでに「小学一年生」~「六年生」掲載分は事実上全てモノクロ収録が確定していますが、「よいこ」「幼稚園」の分はぴっかぴかコミックスと同様にカラーで出すかも知れませんね。予定で分かっている中では『パーマン』6巻はそうなるようなので、こちらは楽しみです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。