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『藤子・F・不二雄大全集』への期待と不安

2009-03-09 01:29:26 | 藤子不二雄
 『藤子・F・不二雄大全集』刊行決定の報から二日が経った。
 個人ブログや掲示板を廻ってみると、基本的にみな全集の刊行を喜んではいるものの、不安な点として「セリフの書きかえ」がどうなるかを挙げている人が多いように見受けられた。
 また、「全集」らしくF先生の作品全体を把握した編集が出来るかどうかも不安点として挙げられている。


 これらの点は、実のところ私も気になっている。
 と言うのも、2000年から2001年にかけて刊行された『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』が、まさにそれらの問題のために残念な内容となっていたからだ。

 『PERFECT版』以前に単行本化されていた短編については、1996年あたりの版をチェックしないと、F先生の生前にどこまで改変されていたのかはっきりしないが、少なくとも単行本初収録の「ボノム -底抜けさん-」は間違いなくF先生の意向と関係なくセリフが改変されている(パン助→街娼)。
 また、初出情報は「絶滅の島」リライト版の発表時期を10年間違えて、本来「最後の短編」であるはずの「異人アンドロ氏」よりもあとに配置するという情けないミスがある。
 他にも、左開きの「絶滅の島」スターログ版を他の作品と同じく右開き仕様で収録したために読みづらくなるなど、この本は杜撰な作りが目立ち、「パーフェクト」を謳っているのに非常に不完全な本だった。


 このような前科があるため、今回の全集に対しても、一抹の不安は拭えない。
 もちろん、第一報の段階で心配ばかりしていても仕方がないのだが、せっかく「大全集」と銘打って出版するのだから、ベストとは行かないまでも、よりよいものを出して欲しい。



 セリフの改変については、F先生の生前にすでに行われていたものは「著者の意向」を汲み生前の最終版を定本として、未単行本化作品は基本的に改変無しで収録するのがいいのではないか。

 少し前に完結した『石ノ森章太郎萬画大全集』では、『サイボーグ009』のように何度も単行本化された作品は改変後のセリフになっているが、埋もれていたマイナー作品はセリフ改訂が手つかずだった為に、現在では「差別用語」とされるセリフもそのまま収録されているそうだ。
 また、『手塚治虫漫画全集』の場合、第300巻までは手塚先生の生前に刊行された為に、かなり多くのセリフ改変が行われている。もっとも、手塚全集の場合、セリフがどうこうという以前に内容に手を入れて全集刊行時に「最新版」とされてしまった作品が多いのだが。改訂版『新宝島』は、その一番極端な例だろう。
 手塚全集は刊行開始からすでに30年以上経っているため、初版と現在の版でセリフが異なっている場合もある。全集以降に再度別レーベルで単行本化されて、その時にセリフが変わった作品があるためだ。

 いずれにせよ、著者が故人の場合は、著者自身の手による最終改訂版を決定版とするのが妥当だと思う。下手に初出に合わせると、『ドラえもん』のように設定変更のある作品の場合は、かえっておかしくなるし、何度かセリフが変わっている場合、比較してどれがいいかを第三者が決める事は出来ないだろう。
 前述の「ボノム -底抜けさん-」を含め、F先生の没後に出た単行本で、明らかにセリフを第三者が変えているものがいくつか見受けられるが、これに関しては「大全集」では元に戻して欲しい。『ウメ星デンカ』で「ムシキング」なんて単語が出てきては、興ざめだ。差別問題と関係なく時代に合わせた改変であっても、F先生のセンスを第三者が真似する事は出来ないのだから、下手にいじって欲しくはない。



 このように、セリフ問題一つ取っても、「全集」を出すのは実に大変な事なのだと思わされる。
 一読者の私ですら、ここで書いた程度の事は考えるのだから、実際に全集の編集に携わるスタッフの方々は、もっと苦労される事だろう。

 今回の『藤子・F・不二雄大全集』は、公式サイトや「映画ドラえ本」の記事を見る限り、並々ならぬ小学館と藤子プロの「本気」が伝わってくるので、本当に期待している。
 内容に不満のある『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』ですら、文句を言いつつ全巻揃えてしまったが、今回の全集は文句の付けようもなく、毎月素直に刊行を楽しみに出来る内容であって欲しい。スタッフの皆さん、頑張って下さい。

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5 コメント

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Unknown (ルチャ・ティグレ)
2009-03-15 06:11:07
『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』の
各話のタイトルロゴ、全部ゴシック体だと勘違い
していました。
「ボノム -底抜けさん-」とかは、オリジナルですね。
今回は、すべてオリジナルにして欲しいですね。
「劇画・オバQ」なんて、あのデカイ文字の方が
インパクトありますしね。

あと、今回の全集は、ハードカバーでは無くてよかった。

『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』は全巻買っても、硬い表紙が邪魔で読みづらいので、中央公論社の愛蔵版の方でばっかり読んでいます。
更にカバーに、コーティングもされていないのも読むのを躊躇する要因ですね。
ハードカバーのために値段が張って、読みづらくなるなんて漫画じゃないですね。
今回は、並製本でよかったです。
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全集はどうなる (おおはた)
2009-03-13 01:57:24
◆ルチャ・ティグレさん:
>『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』の時も
>パーフェクトと言いながら、
>中央公論社の愛蔵版と比較すると分かりますが、
>タイトルロゴが、全部共通のゴシック体になっていたり、
>話によっては、絵の線がかすれているものが多く、
>ガッカリしました。あと、糊付けもあまく、割れやすかった。

 どうも、お久しぶりです。

 失念していましたが、確かに『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』は、タイトルロゴの不統一も気になった部分でした。全作品ゴシックか、または全作品オリジナルのロゴであればまだいいのですが、両者が混じっていたせいで非常に中途半端な感じを受けました。
 造本に関しては、少なくとも私の持っているものは、のり付けには問題なさそうです。ただ、あのカバーはどうしても汚れやすいので、今回の全集はコーティングして欲しいと思っています。


>それと、今回は、カラー原稿は、カラーで、

 これは、ぜひ実現して欲しいです。
 特に『ドラえもん』などは、現在のてんコミで汚いトレス絵が多く混じっていますので、ぜひ原稿通りのカラーで収録して欲しいですね。


>表紙も各巻、収録されている話の発表された時期のカラーイラストを使ってくれた方が雰囲気が
>でます。FFランドのような明らかにアシスタントが書いた絵だけはやめてもらいたいものです。

 FFランドの場合、最初はF先生の描き下ろしでしたが、体調悪化のせいか途中からアシスタントの絵に代わっていますね。『ドラえもん』などは途中までF先生の絵だっただけに、カバー代筆の29・30および36巻以降は一段落ちて見えます。
 カバー絵は、可能な限りF先生のカラーイラスト、それが無理な作品(そもそもカラーで発表されていないマイナータイトルなど)も元原稿を活かして欲しいところです。現在はデジタルでの彩色もかなり自然な色が出るようになっていますし。


 全集への期待・要望を書いていくと、きりがなさそうですね。
 とりあえずは、第2報で更に詳細が分かる事を期待して待っています。



◆イグニさん:
>なにせ途方もない作業になるでしょうからね、発売延期してもらっても構わないんですよ、納得のいく大全集になってくれれば。

 それは、同感です。無理に毎月出そうとするよりは、必要とあれば延期してでもキチンとした内容で出して欲しいと思います。
 FFランドは、当時としてはかなり頑張っていた方だと思いますが、それでも、たとえば話の時系列順に収録されていないタイトルがあるなど、詰めが甘い部分もありました。今思えば「週刊」にこだわったのが問題だったのではないでしょうか。


>ただし生きているうちにコンプリートさせてください^^;

 正直、今回のような全集自体、私の生きている間に企画・刊行されるとは思っていませんでした。
 内容次第ですが、毎月刊行をワクワクして待てるようなものが出るとすれば、その楽しみは長い方がいいですから、その意味でも無理せずにじっくりと作って出していって欲しいです。さすがに完結まで何十年もかかるのは勘弁して欲しいですが。
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今は祈るのみ (イグニ)
2009-03-09 09:27:34
誤植や脱字など設定の統一などでいじってもらうぶんには構わないんですがね。
この大全集は一冊5000円以上でも買いたいです、もう二度とないチャンスだと思います。
それだけに総力を挙げて編集作業をしてほしいですね、とことん精査してほしい。
今まで理想どおり(僕の身勝手極まりない理想ですが)の仕事を小学館やFプロさんがやってくれたことはないので不安です。
でも信じるしかないですね今は。
なにせ途方もない作業になるでしょうからね、発売延期してもらっても構わないんですよ、納得のいく大全集になってくれれば。

ただし生きているうちにコンプリートさせてください^^;
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Unknown (ルチャ・ティグレ)
2009-03-09 07:39:09
あと、各タイトルすべて、発表順で収録して欲しいですね。表紙も各巻、収録されている話の発表された時期のカラーイラストを使ってくれた方が雰囲気が
でます。FFランドのような明らかにアシスタントが書いた絵だけはやめてもらいたいものです。
背表紙も、話のヒトコマをアシスタントが色づけ
したものも多かったですし...。
それと、本自体のカラーデザインも派手派手で、
品がなかったですしね。
タイトルロゴも全部共通だったし...。

管理人さんが言うように、ドラえもんのように、
各学年誌に発表した作品は、学年別の単行本にして、
発表順から載せた方が流れが分かってよりいっそう
楽しめますね。

それと、ドラえもんカラー作品集の時に、開いている
ページに、コマから切り抜いた絵がただ貼ってあるだけのページになっていましたが、ああいうところに、
雑誌の表紙のイラストや、アーモンドグリコのイラストとかを載せてほしいですね。
カバーの裏や、中もスペースを有効活用して欲しいです。
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Unknown (ルチャ・ティグレ)
2009-03-09 07:13:12
お久しぶりです。
以前、ブログ「昭和40、50年代からの来訪者」をやっていたTIGER MAXです。(現 ルチャ・ティグレ)
らくがきじゅうでも、ちょこちょこおじゃまいたしておりました。

私も全集の刊行は、うれしいのですが、
また中途半端な結果になるようで不安です。

『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』の時も
パーフェクトと言いながら、
中央公論社の愛蔵版と比較すると分かりますが、
タイトルロゴが、全部共通のゴシック体になっていたり、
話によっては、絵の線がかすれているものが多く、
ガッカリしました。あと、糊付けもあまく、割れやすかった。

それと、今回は、カラー原稿は、カラーで、
雑誌の企画ページや、過去の単行本や、雑誌の表紙等のイラスト、単行本時にカットされたトビラ絵(大長編ドラなど)、又、アーモンドグリコなどのイラストとか、ちょっとしたものでも、藤本先生の絵は、ほんとに癒されるので、すべて収録して欲しいです。

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