「ゲゲゲの鬼太郎」第5作 第5話「呪われた映画」感想

 アバンタイトルで、いきなり「アンコールワットの亡霊」の話が始まって驚いた。
 すぐに映画の撮影だとわかるのだが、第2作以来、一度もリメイクされていない非鬼太郎原作エピソードを、こんな形で使ってくるとは思わなかった。「鬼太郎」のメイン視聴者はもちろん現代の子供なのだが、今回が5作目となる息の長い作品名だけに、以前のシリーズを観ていた大人も意識して作っているのだと言う事を認識させられた。

 今回は、敵妖怪として「沼御前」が登場したが、話としては妖怪との闘いよりもむしろ「人間の愚かさ」が主軸として描かれていた。その点でも「アンコールワットの亡霊」が制作された第2作に通じるところを感じる。
 鬼太郎が何度忠告しても「クメール遺跡の亡霊」のリメイクを何度も行う映画会社や、ラストシーンで沼御前に井戸に引きずり込まれたであろう二人。特に後者については、鬼太郎が察して一度は助けようかと迷う素振りを見せるが、結局思い直して去っていく場面が描かれた事で、本シリーズにおける鬼太郎と人間との距離感が上手く見せられていた。
 これまで放送されたエピソードでは、鬼太郎は何だかんだ言いながら結局最後は人間を助けに行っていたが、今回は鬼太郎の出来る「限界」を描いた事で、単純な正義の味方ではないとはっきり位置づけられた。
 直接的な描写はないとは言え、今回は明らかに死者が出ている点も注目すべきところだ。

 また、本話では、少なくとも40年前から鬼太郎は現在と同じ姿で人間との関わりを持っていた事になっている。
 鬼太郎の外見年齢≠実年齢と言う点については、これまでのアニメ版では特に触れられていなかったはずで、その点にあえて踏み込んだ事で、歳を取らない(ように見える)妖怪としての、人間側から見た不気味さも描かれていた。
 今回の沼御前との闘いも体内電気がメインであっけなかったが、妖怪との闘い以外で、話に見応えがあったので、特に気にならなかった。長谷川圭一脚本回としては、今のところ本話が一番いいと思う。

 本シリーズ全体の方向性は、前回登場したぬらりひょんとの闘いが主軸になっていくのかも知れないが、本作が「ゲゲゲの鬼太郎」である以上は、毎回とは言わないが、今回のような話もちょくちょくやって欲しいものだ。
 それにしても、前回が「一反木綿と少女との心暖まる交流」のエピソードだっただけに、ギャップが凄い。


 ところで、今回は映画「ゲゲゲの鬼太郎」で主演を務めたウェンツ瑛士がチョイ役でゲスト出演していた。セリフも少なかったせいか特に違和感はなく、タイアップとしても悪くはない。
 ただ、ウェンツ瑛士は今回と前回の予告にも登場しており、これは思いっきり映画の宣伝なのだが、ソフト化や再放送ではどうなるのだろう。もし、普通の予告に差し替えと言う事になれば、本放送の録画が貴重になるかもしれない。
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「ゲゲゲの鬼太郎」第5作 第4話「男!一反もめん」感想

 おそらく、これまでの全シリーズを通して初めての、一反木綿主役回。八奈見乗児氏演じる一反木綿の喋りを、久々にたっぷりと聞く事が出来て、これだけで大満足だ。

 第3作以降「鬼太郎ファミリー」の一員として活躍していたにもかかわらず、これまで一反木綿にスポットが当てられなかったのは、考えてみれば意外な事だ。
 他の妖怪については、ぬりかべメインは第3作の第103話「純愛ヌリカベとおしろい娘」があるし、第107話「ケムリ妖怪えんらえんら」では砂かけ・子泣きの年寄り二人が頑張っていた。また、第4作の第48話「えんま大王とねこ娘」は、もちろんねこ娘の主役回(三田ゆう子・西村ちなみの新旧ねこ娘共演)だ。

 だからこそ、今回は初めて一反木綿のキャラクターがじっくりと掘り下げられていて、非常に新鮮だった。
 一反木綿と少女・綾とのやりとりは観ていて微笑ましく、「一反」という単位は綾ならずとも今の子供には馴染みが薄いだろうから、それを説明する事で、名前の由来も含めてキャラクターの紹介として上手くできていたと思う。
 仲間たちに「無表情だ」と言われた事を気にしているあたりも可愛らしかったし、何と言っても八奈見乗児氏独特のトボけた声が、無表情であっても一反木綿を愛嬌のある味わい深いキャラクターにしているのだと再認識する事が出来た。


 今回の敵は、海座頭&船幽霊。船幽霊は前作でも登場したが、こちらは主が海和尚に変えられており、海座頭に操られる形での登場は久々となった。
 元々、海座頭&船幽霊は、名前からして明らかに海の妖怪であり、どうやって話を展開させるのかと思っていたが、まさか船幽霊が上陸してまで綾を探しに来るとは予想できなかった。しかし、じわじわと綾の所に船幽霊が迫ってくる描写は、夜の描写と相まって怖さが出ており、なかなかよかった。

 そして、鬼太郎と海座頭との戦いでは、一反木綿が本作で初めて「乗り物」役としての存在をアピール。前回の夜叉との戦いは物足りなかったが、今回は全力の肉弾戦という感じで見応えがあった。
 それにしても、ちょっとそそのかされたくらいで人間の子供を取って食おうとするとは、海座頭は乗せられやすいタイプなのだろうか。また、今回は原作とは全然違う話なので、船幽霊はあくまで海座頭の手下としてだけの位置づけで、解放される展開は無し。この先も船幽霊をやっていくのだろうから、ちょっと可哀想な気もしてしまった。


 今回、メインの話だけで十分に満足できたのだが、最後はぬらりひょん&朱の盤コンビがおいしいところを持っていってしまった感もある。料亭を遠慮無く爆破していくあたりは原作にも通じるぬらいひょんらしさだし、しかも声は第3作と同じ青野武氏なのだから、たまらない。
 正直なところ、またしてもぬらりひょんが黒幕になってしまう設定には食傷気味なのだが、第3作のリアルタイム視聴者としては、声が青野さんならOKと言う気分になってしまう。ちょっと複雑だ。しかし、今後どんな形でぬらりひょんが鬼太郎の前に立ちはだかるのか、楽しみになってきた。
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