曽我部和恭氏、死去

 声優・曽我部和恭氏が、17日に食道がんで亡くなられた。まさか、先月に続いて、またもこんな悲しい記事を書く事になるとは。しかも、鈴置さんに続いて、タイムボカンシリーズ出演者の訃報なので、何と言っていいか分からない。

 さて、私にとっての曽我部さんの声と言えば、何と言っても「タイムボカンシリーズ ヤットデタマン」の主人公・ヤットデタマンこと、時ワタルだ。「ヤットデタマン」は、シリーズ中で最も好きな作品だが、それだけ気に入った要因の一つが、曽我部さんの演じたワタルというキャラクターである事は確かだ。
 普段は気が弱くて情けないが、ヤットデタマンに変身してからは、薔薇手裏剣で華麗に敵をやっつける。ワタルとヤットデタマンでは口調もキャラも全く異なっており、前作「タイムパトロール隊 オタスケマン」では、変身後も主人公二人のイメージが特に変わってはいなかったので、とても新鮮だった。幼心に「(これだけ演じ分けが出来るなんて)声優って凄いな」と思ったものだ。

 「ヤットデタマン」の印象があまりに強いが、他にも、曽我部さんの演じたキャラがたくさん思い出される。たとえば、「ヤットデタマン」のルーツと言うべき「破裏拳ポリマー」の、ポリマーこと鎧武士。やはり普段は情けないキャラクターだったが、これはワタルとは違って武士の演技だった。私は「ポリマー」の方を後に観たので、「ヤットデタマン」との相似に驚き、また違った面白さを楽しむ事もできた。
 他には、「元気爆発ガンバルガー」の悪役、ヤミノリウスIII世も印象深いキャラだった。二枚目半の悪役だったので、憎めないキャラクターで、いい味を出していた。最後は主人公側に味方して、人間の彼女(亜衣子先生)まで出来てしまうのだから、おいしいポジションだ。ヤミノリウスの情けない声は、まるでワタルが大人になったようだった。なお、エルドランシリーズも、個人的には「ガンバルガー」が、一番好きだ。

 他にも、書いていけばきりがないが、二枚目から二枚目半、三枚目まで、幅広く多くのキャラを演じられており、曽我部さんの声を聞く機会があると、思わず嬉しくなったものだった。数年前に、既に事実上引退されており、それを知った時には寂しかったが、まだお若いのだからいつかまた声を聞く機会があるだろうと期待していた。しかし、もうその機会が訪れる事は、永久にない。
 今頃は、バンド・スラップスティックの仲間でもあった鈴置さんと、天国で思い出話でもされているかも知れない。心より、ご冥福をお祈りします。
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