この前の土曜日に購入した「ぼく、ドラえもんでした」を、じっくりと読み返したので、感想を書いておく。
副題に「涙と笑いの26年打ちあけ話」と付いているこの本に、これまで語られなかった、知られざる「ドラえもん秘話」を期待して読む人は多いだろうし、私もそうだった。しかし、はっきり言うと、目新しい話題はあまり書かれていない。大山さんとアニメ「ドラえもん」の出会い、大山流のキャクター解釈、藤本先生の思い出など、これまで色々な書籍や雑誌でお馴染みのエピソードが多く見られる。
しかし、既に知っているエピソードであっても、あらためて大山さん自身によって時系列順にまとめられ、また雑誌等では誌面の都合などで省かれたと思われる、細かい描写などもあり、結構新鮮な気持ちで読む事が出来た。何より、この本からは大山さんのドラえもんに対する強い愛情が感じられる。本文中で「あの子」と呼ばれているドラえもんは、大山さん自身であり、また子供のような存在でもあったのだろう。
目新しい話題はあまり無いと書いたが、それでも映画に関しては試写会に間に合わなかったエピソードや、ゲスト声優の思い出など、おそらく初めて書かれたと思われる部分もあり、興味深かった。他にも、「のび太の恐竜」公開初日の思い出や、タイトルコールの録音に関するエピソードは面白かった。
また、「ドラえもん」の原作者である藤子・F・不二雄先生にまつわる思い出も、藤子ファンとしては非常に興味を惹かれる部分だった。藤本先生には、何となく落ち着いた方というイメージを持っていたので、映画の舞台挨拶へ向かう時の「身の軽い動き」のエピソードは、意外な感じだった。もし、映像が残っていたら、観てみたい。他にも、あげていけばきりがないが、藤本先生絡みのエピソードは、どれも読んでいて楽しくなってくる。
第7章では、ドラえもん降板のそもそものきっかけとも言われる、ガン手術のエピソードが語られている。この手術の時には、本気で大山さんが「ドラえもん」引退を決意していた事がはっきり書かれているが、それに対する藤子プロ・テレビ朝日・シンエイ動画の責任者三者の態度は、正直なところ、読んでいて引っかかった。努めて明るく振る舞う姿勢は理解できるが、どうもはぐらかしているような印象を受けた。
結局、手術から4年後の2005年に、大山さんだけでなく「ドラえもん」出演全レギュラー声優が引退したわけだが、この引退の経緯については、ほとんど触れられていない。表に出せない複雑な事情があるのか、大山さん自身の心の整理がまだついておらず書けなかったのか、いずれにしても気になるところだ。
ところで、書名からして明らかだが、この本はあくまで声優・大山のぶ代とアニメ「ドラえもん」との26年間を語った内容で、「ドラえもん」以外のアニメ出演作品については、ほとんど触れられていない。「ドラえもん」に限っても、話題はテレビの放映初期と映画の話題が多くを占めており、明らかにこの一冊では語りつくされていないので、他の作品まで取り上げる余裕はなかったのかも知れないが、ちょっと寂しく思ってしまった。ドラ以前に小原・肝付両氏と共演した「ハゼドン」や、ドラ直前の主演作「無敵超人ザンボット3」あたりは、少しでも取り上げて欲しかったところだ。
しかし、大山さんの生い立ちから子供時代のエピソードは面白かった。また、巻頭の「大山のぶ代グラフティ」も、貴重な写真が数多く掲載されており、特に「週刊漫画ゲラゲラ45」や「夏休みマンガ祭り!藤子アニメ大集合!!」など藤子両先生と共演した番組も取り上げられているのは嬉しい。アニメドラの人気が爆発した1980年代前半には、特番等で藤子先生と大山さんの共演も多かったが、番組の性質上ソフト化は期待できそうにないので、こういった形でも一部が見られるのはいい事だ。
この本は、大山時代のアニメ「ドラえもん」を好きだった人には、迷わずお勧めできる。私などは、ほぼ「ドラえもん」と一緒に育ってきたような人間なので、特に、放映初期に視聴率を気にしたり、人気爆発に喜びながらもとまどう部分などは、当時のドラをはじめとする藤子アニメの熱気を思い出す事が出来て、懐かしかった。
大山さんの次は、小原乃梨子さんの「ぼく、のび太でした。」かなと思ったが、考えてみると小原さんにはすでに「声に恋して 声優」や「テレビアニメ最前線」などの著書がある。そこで、次は、たてかべ和也・著「おれ、ジャイアンだった。」を希望したい。
副題に「涙と笑いの26年打ちあけ話」と付いているこの本に、これまで語られなかった、知られざる「ドラえもん秘話」を期待して読む人は多いだろうし、私もそうだった。しかし、はっきり言うと、目新しい話題はあまり書かれていない。大山さんとアニメ「ドラえもん」の出会い、大山流のキャクター解釈、藤本先生の思い出など、これまで色々な書籍や雑誌でお馴染みのエピソードが多く見られる。
しかし、既に知っているエピソードであっても、あらためて大山さん自身によって時系列順にまとめられ、また雑誌等では誌面の都合などで省かれたと思われる、細かい描写などもあり、結構新鮮な気持ちで読む事が出来た。何より、この本からは大山さんのドラえもんに対する強い愛情が感じられる。本文中で「あの子」と呼ばれているドラえもんは、大山さん自身であり、また子供のような存在でもあったのだろう。
目新しい話題はあまり無いと書いたが、それでも映画に関しては試写会に間に合わなかったエピソードや、ゲスト声優の思い出など、おそらく初めて書かれたと思われる部分もあり、興味深かった。他にも、「のび太の恐竜」公開初日の思い出や、タイトルコールの録音に関するエピソードは面白かった。
また、「ドラえもん」の原作者である藤子・F・不二雄先生にまつわる思い出も、藤子ファンとしては非常に興味を惹かれる部分だった。藤本先生には、何となく落ち着いた方というイメージを持っていたので、映画の舞台挨拶へ向かう時の「身の軽い動き」のエピソードは、意外な感じだった。もし、映像が残っていたら、観てみたい。他にも、あげていけばきりがないが、藤本先生絡みのエピソードは、どれも読んでいて楽しくなってくる。
第7章では、ドラえもん降板のそもそものきっかけとも言われる、ガン手術のエピソードが語られている。この手術の時には、本気で大山さんが「ドラえもん」引退を決意していた事がはっきり書かれているが、それに対する藤子プロ・テレビ朝日・シンエイ動画の責任者三者の態度は、正直なところ、読んでいて引っかかった。努めて明るく振る舞う姿勢は理解できるが、どうもはぐらかしているような印象を受けた。
結局、手術から4年後の2005年に、大山さんだけでなく「ドラえもん」出演全レギュラー声優が引退したわけだが、この引退の経緯については、ほとんど触れられていない。表に出せない複雑な事情があるのか、大山さん自身の心の整理がまだついておらず書けなかったのか、いずれにしても気になるところだ。
ところで、書名からして明らかだが、この本はあくまで声優・大山のぶ代とアニメ「ドラえもん」との26年間を語った内容で、「ドラえもん」以外のアニメ出演作品については、ほとんど触れられていない。「ドラえもん」に限っても、話題はテレビの放映初期と映画の話題が多くを占めており、明らかにこの一冊では語りつくされていないので、他の作品まで取り上げる余裕はなかったのかも知れないが、ちょっと寂しく思ってしまった。ドラ以前に小原・肝付両氏と共演した「ハゼドン」や、ドラ直前の主演作「無敵超人ザンボット3」あたりは、少しでも取り上げて欲しかったところだ。
しかし、大山さんの生い立ちから子供時代のエピソードは面白かった。また、巻頭の「大山のぶ代グラフティ」も、貴重な写真が数多く掲載されており、特に「週刊漫画ゲラゲラ45」や「夏休みマンガ祭り!藤子アニメ大集合!!」など藤子両先生と共演した番組も取り上げられているのは嬉しい。アニメドラの人気が爆発した1980年代前半には、特番等で藤子先生と大山さんの共演も多かったが、番組の性質上ソフト化は期待できそうにないので、こういった形でも一部が見られるのはいい事だ。
この本は、大山時代のアニメ「ドラえもん」を好きだった人には、迷わずお勧めできる。私などは、ほぼ「ドラえもん」と一緒に育ってきたような人間なので、特に、放映初期に視聴率を気にしたり、人気爆発に喜びながらもとまどう部分などは、当時のドラをはじめとする藤子アニメの熱気を思い出す事が出来て、懐かしかった。
大山さんの次は、小原乃梨子さんの「ぼく、のび太でした。」かなと思ったが、考えてみると小原さんにはすでに「声に恋して 声優」や「テレビアニメ最前線」などの著書がある。そこで、次は、たてかべ和也・著「おれ、ジャイアンだった。」を希望したい。