モーゼの泉のすぐそば、クィリナーレ通りに面して、ローマでも有数の豪華な教会があります。
これがサンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会(Chiesa di S.Maria della Vittoria)です。
ファサードは典型的なバロック様式です。教会自体はあの(サン・ピエトロ大聖堂のデザインを台無しにした)マデルノの設計だとのこと。
内部は、色大理石の壁面のあちこちに据え付けられた数多くの彫刻が劇的な印象を与えている、
いかにもバロックらしい装飾です。
一歩足を踏み入れると、まるで自分自身が天国へと引き込まれていくような印象を受けます。
主祭壇から後陣にかけてもきらびやかな装飾がなされていて、どことなくメキシコあたりの教会のようです。
クーポラもご覧の通り吸い込まれていきそうです。
おそらく意図的に窓を少なくして、数少ない開口部から差し込む光を、
より効果的に見せようとしているのでしょう。
天井部分はこんな感じです。
絵画と彫刻を融合させて、臨場感を高める典型的なバロックの手法が用いられています。
それにしても、天井の彫刻は、どうやって取り付けたのでしょうか。
そして、この教会でもっとも有名なものといえば、ベルニーニの彫刻「聖テレーザの法悦」でしょう。
最近は映画「天使と悪魔」の“火”としても知られていますが、
まちがいなくベルニーニの彫刻の中でもベスト3に入る傑作です。
今まさに天使にその胸を貫かれようとしている聖テレーザの表情や手の動きは、
物語の動きのある一瞬を切り取ってみせるベルニーニの真骨頂といってもいいでしょう。
また、衣服のひだなどの細部のやわらかさは、それが石でできていることを忘れてしまいそうです。
物体としての男性の肉体美にこだわったミケランジェロと、
女性のしなやかさや物語にこだわったベルニーニの違いが、ここで改めて実感させられます。
「聖テレーザの法悦」に正対するように置かれている「聖ヨセフの夢」です。
こちらはドメニコ・グイディという人の作品です。
ほんとはこの2つの彫刻、もっとアップの写真を撮りたかったんですが、
前にも書いたように、この教会は窓が少なくて暗いんです。
思いっきり強調したい部分がクローズアップされるように計算されているのかもしれませんが、
写真を撮るのはなかなか大変です。
ベルニーニ―バロック美術の巨星 (歴史文化セレクション) | |
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