≪梨花一枝春≫
これは白楽天の『長恨歌』に「玉容寂寞涙闌干、梨花一枝春帶雨。」
(玉容寂寞として涙闌干、梨花一枝春、雨を帯ぶ。)
楊貴妃の美しさを春雨に濡れる梨の花になぞらえた歌ということですが、
初めの五字を取って、春の訪れを味わうことが多いですね。
私はこの色紙を特に別の想いも込めて掛けています。
今日は震災から三年目の春を迎えました。
私には郷里が福島という友人がいます。
あの原発事故で帰れなくなった地域で、梨園をしていました。
とても見事な、おいしい梨を作られて、私も毎年楽しみにいただきました。
母も、美味しいからと親戚に届けたりもしていました。
でも震災のその日からそこは帰る事のできない場所になりました。
それは友人の人生と人生観を変えてしまうほどのの重さを持っていました。
リタイヤしたら、あそこに帰って、実家のそばに小さな家を建てて、
のんびりとくらしたい・・・そんな夢を奪ってしまったのです。
今は仮設住宅で暮らすご両親の下を頻繁に訪れながら、
新しい夢をきっと模索しながらの生活だと思います。
手入もできない、誰も訪れることのなくなった梨園にも、
それでもきっと、一枝の春が訪れていることを願いつつ掛けています。
追悼の祈りを込めて、「木魚」の香合を床に飾りました。
午後からは、友人の先生かがいらして、
ともにお点前をしあって、楽しみながらの研究会です。
今日は一時、私の思いにお付き合いいただこうと思います。
いつも見てくださってありがとうございます。
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