まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

病院は親切でなくてはならないと賀川はいう

2013-04-12 16:02:08 | Weblog

高知に引っ込んだと思ったら時折東京が懐かしく顔を出す伴武澄さん。
本人は『色々とやることがある』というが、思春期に恋愛ごっこで失敗したこともなく、ことのほか表層真面目だったせいか、老境に差し掛かってその人生のスキップを埋め合わせているかのようだ。
ゆえに当時は記事にも書けなかった人間愛や平和を書き連ねている。その内に心の底まで書いてくれることを期待している。
今回はその一章を賀川豊彦の著書抜粋として紹介している。
なるほど、視点が鮮やかだ。










賀川豊彦の『十字架に於ける瞑想』を読んで面白い部分があった。病院は英語でHospital。本来は「親切院」でなければならない。そして病院は医者がつくったのではなく、看護師がつくったのだというのだ。以下、その部分を転載します。
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 日本の看護婦が給料の値上げをやかましくいふやうになつたことを私は悲しむ。イギリスには看護婦にストライキは絶対にない。『ホスピタル』といふのは親切院といふのがほんとで、日本のやうに病院といふのが間違つてゐる。最初、ローマの元老院議員のガリカナスといふ人が、みづから進んで看護者になり。奴隷といへども助けて行かうといふ考で、病院を創めたのである。西洋では親切院の看護婦は医者より偉い。

 月給を貰はずに看護する、それが赤十字である。西洋では看護婦を尊敬する。英国のチヤーリング・クロスには一看護婦であつたエデヰス・カベル女史の銅像が建つてゐるが、その下に『愛国心だけでは足りない』と書かれてある。

 あの独逸人がイギリス人を憎んだ最中に、エデヰス・カベルはその敵兵をも愛して看護した。が、この愛の権化のカベルを独逸兵は射殺した。英国はこの看護婦を尊敬して銅像を建てたのである。だから英国には看護婦が給料をあげてくれといふ運動はない。

 英国では看護婦が、各国の全権大使の次に席を占める特権を与へられてゐる。英国では、医者や看護婦や小学校教員にストライキはない。どんな時にも医者は、来てくれといふ時に断る権利がない。月給をとりたいといふ看護婦になら、ならない方がいゝ。英国ではセント・トマスの看護婦の服装をして街を歩いてゐると自動車が止るといふことである。かういふ看護婦を尊敬する気持が、やはりアメリカにもある。それがあつてこそ国が進歩する。

コメント
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