A Challenge To Fate

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【公演レポート】鼠派演踏鑑Ω公演 宮下省死廃庭舞踏会『夢屍庭(むしにわ)』@池袋西口・鼠派演踏鑑Ωの庭 2019.5.26 sun

2019年05月30日 09時21分37秒 | アート!アート!アート!


鼠派演踏鑑Ω公演
宮下省死廃庭舞踏会
『夢屍庭(むしにわ)』

構成・演出・振付・出演:宮下省死
音響操作・受付:夜羽エマ

2019年5月26日(日)
開場:午後2時45分 / 開演:午後3時
場所:東京・池袋西口・鼠派演踏鑑Ωの庭
料金:予約・当日 2,500円



1969年19歳の初冬に金粉ショーで踊りはじめた宮下省死。70年から牛の生首を担いでストリートで舞踏活動を開始。サックス奏者阿部薫と71年幻野祭をはじめ何度も共演した。75年に土方巽氏の命名による劇団「鼠派演踏艦」を立ち上げ西池袋の自宅を劇場に改造しオリジナルの戯曲で様々な公演を行い、同時にパートナーのアルチュール絵魔(現・夜羽エマ)とともにセクシー・フロイドとしてストリップ劇場を中心にSMショーを行う。95年団体名を鼠派演踏鑑Ωと改め、近年は主にひとり舞台の舞踏公演を行っている。7年前に長年の激しい舞踏により脊柱管狭窄症という激痛を伴う病気を発症したが、自らのリハビリで回復。踊りはじめてから50年となる今年、数十年ぶりに自宅での舞踏公演が4日間限定で開催された。リハーサルの時小道具の傘の柄が目に当たり出血したり、ハシゴから落下したりのアクシデントがあったというが、公演にも恵まれ無事に楽日を迎えた。



30数年前、学生時代に何度も通った西池袋の鼠派演踏鑑の木造建築は、当時そのままに時代を経て見事な襤褸屋敷の佇まい。立派な琵琶の木が美しい。見覚えのある垂れ幕や奇怪な装飾品の仮面が飾られた玄関の右手に小さな庭がある。防火水槽や鉢植えの残骸が転がる乾涸びた庭はまさに廃庭。寄せ集めの椅子が十人分並んでいる。宮下と同年代らしき初老の客と、筆者のような当時のファン、今はSM界の女王として知られる夜羽エマの後輩ダンサーなど、お互い初対面ながら和やかな雰囲気がある。



ジャズのスタンダードナンバー「サマータイム」が流れて開演。縁側の方から、将棋の駒が描かれた浴衣姿で口に枯れ葉を銜えた宮下が覚束ない足取りで現れる。狭い庭の木や水槽の辺りで心許ない挙動を繰り返す。防火水槽の上で暫し微睡み。驚いたように目を覚ますとそのまま水槽の中に身体がハマってジタバタする有様に笑いが起こる。「自分のしたことを忘れてしまう」というモノローグは、2014年の前作『捨て身』のセリフの続きであり、痴呆症の老人の5年後の姿であることが判明する。徘徊の末に水笛を吹き鳴らして崩れ落ちた『捨て身』に比べ、今回の『夢屍庭』は塀の上に登り、赤い傘を手に木登りしたり、屋根に掛けたハシゴの上から怒ったネコのように観客を威嚇したり、ポジティブな行動性を発揮し、半分夢の中の屍のごとき老人が生きる意欲を取り戻したように思われた。ジャニス・ジョプリンの「サマータイム」はじりじり暑く燃え挙がる決意を象徴するかのようであった。



開放的な野外公演は、車の音や通行人の足音や会話、隣家の工事の音や料理の香りが混ざりあい、宮下の舞踏の異質感が当たり前の日常生活と滲みあい、遮断された屋内公演では得られない暗黒世界の広がりを明らかにした。何気ない日常と隣り合わせに狂気が同居しているのがこの世界の真相である。この認識は暗黒舞踏や不条理劇だけでなく、世界中の地下音楽やフリンジカルチャーの存在意義のひとつであろう。



次回公演は来年の5月に同じ池袋西口・鼠派演踏鑑Ωの屋内で開催予定とのこと。

舞踏家の
魂宿る
西池袋

追加公演決定!


2019年6月2日(日)
鼠派演踏館追加公演
鼠派演踏鑑Ω公演
宮下省死廃庭舞踏会
『夢屍庭(むしにわ)』

構成・演出・振付・出演:宮下省死
音響操作・受付:夜羽エマ
開場:午後2時45分 / 開演:午後3時
場所:東京・池袋西口・鼠派演踏鑑Ωの庭
料金:予約・当日 2,500円
予約・問い合せ TEL 090-1213-9884 [宮下]





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