A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私のポストパンク禁断症状#11】マーズ/ティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークス/DNA/オーラル・エクサイターズ~NO NEW YORKの12インチは錆びたナイフの味

2021年03月15日 01時21分42秒 | 素晴らしき変態音楽


6年半くらい前2014年9月にYouTubeで偶然見つけたクリス・ピッツィオコスの動画をきっかけにブルックリンの小さなライヴ・スペースを中心とするニューヨーク即興シーンの活況ぶりをを知った時、筆者の頭に浮かんだのは、78年の名作コンピ・アルバム『NO NEW YORK』に収録されたノー・ウェイヴと呼ばれるアンダーグラウンド・ロックと、70年代前半のロフト・ジャズ・ムーヴメントだった。勿論ニューヨークは古くから数々の新しいアート/エンターテインメントの発祥の地であることは知っているが、ピッツィオコスやウィーゼル・ウォルター、メアリー・ハルヴァーソンやピーター・エヴァンス等の過激な実験精神と自由なアイデアに満ちた音楽表現に感じた嬉しい驚きは、筆者の音楽体験に於けるニューヨーク・ショック第三波と呼んでいい。
【素性判明】NY HARDCORE JAZZ流星群の大彗星 "Chris Pitsiokos" クリス・ピッツィオコス

1977年中学3年生の時セックス・ピストルズなどのパンクロックに衝撃を受けてから、メインストリームではないオルタナティヴで前衛的な音楽に興味を持ちはじめ、78年末高校1年生の時に雑誌『ZOO』の記事や『Player』の八木康夫の連載『PIPICO'S』で知ったレジデンツにハマり、さらに日本盤が出てFMラジオでも紹介されたザ・ポップ・グループやキャバレー・ヴォルテール、レッド・クレイオラなど、当時「オルタネイティヴ」と呼ばれたポストパンクを聴くようになった。同じころにフリクションのレックとチコヒゲがニューヨーク在住時に参加していたバンドとしてジェームズ・チャンス&ザ・コントーションズやティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークスの名前を知った。一部輸入盤店で話題になっていたブライアン・イーノ・プロデュースのコンピレーション『NO NEW YORK』をリアルタイムで聴いたかどうか記憶は定かではない。しかし輸入盤店や雑誌で目にした彼らの写真は、ジェームズ・チャンスがライヴで観客に暴力を振るうなどという嘘かホントか分からない武勇伝も火に油を注ぎ、ラモーンズやテレビジョンやパティ・スミスといったオリジナル・ニューヨーク・パンクに比べてさらに狂暴でヤバい印象を受けた。しかし彼らば線香花火のように短命で、ジェームズ・チャンス&ザ・コントーションズ以外はアルバムをリリースすることなくシングルやEPだけを残して次の活動に移っていった。のちに様々なライヴ音源やデモを集めたコンピレーションがリリースされたが、リアルタイムのノー・ニューヨークのエッセンスはシングル盤、特にジャケットの大きな12インチシングルに込められているのである。

●Mars / 3 E b/w 11,000 Volts(ZE Records ‎– ZE 12010 / 1979)


ノー・ニューヨーク関連作品の中で筆者が一番気に入っているマーズの1stシングル。チャイナ・バーグ (本名 Lucy Hamilton) (g,vo)、ナンシー・アーリン(ds)の女性二人に、 サムナー・クレイン(g,vo)、マーク・カニンガム(b)の男性二人の4人組。性急なタテノリビートが特徴だった『NO NEW YORK』に比べ、地下へ潜り込むようにダウナーな退廃的ロックを展開。剃刀から錆びたナイフに変貌を遂げ、ソニック・ユースに繋がるノイズロックの元祖だといえる。

11,000 Volts



●Teenage Jesus And The Jerks ‎/ Pre Teenage Jesus And The Jerks(ZE Records ‎– ZE 12011 / 1979)


現在もニューヨーク・アンダーグラウンドで活動するヴォーカリスト/詩人リディア・ランチが率いるティーンエイジ・ジーザス&ザ。ジャークスの最初期1977年のラインナップ、リディア・ランチ(vo)、ジェームズ・チャンス(sax)、レック(b)、ブラディ・フィールド(ds)によるレコーディング。フリクションのレックのニューヨーク時代のプレイが聴ける貴重作。当時ランチと恋仲だったジェームズ・チャンスのけいれんサックスも素晴らしい。

Teenage Jesus and the Jerks - My Eyes



●DNA / A Taste Of DNA(American Clavé ‎– AMCL, Rough Trade ‎– RT 086 / 1981)


アート・リンゼイ(vo,g)、イクエ・モリ(ds)、ティム・ライト(b)のトリオ、DNAの2枚目。掻き毟るギターが疾走する1~2分の曲をレパートリーとする彼らの曲が6曲も収録。NO NEW YORKの切迫感から3年経ち、幅広い音楽性を獲得しつつあることが感じられるが、それ故にバンドのアイデンティティが曖昧になり翌年の解散へ至る布石でもある。

DNA - A Taste of DNA 1981 (Full EP)



●Aural Exciters / L'Emile (Night Rate)(ZE Records ‎– ZE 1202 / 2003)


ノーウェイヴのプロデューサー、ボブ・ブランクとオーガスト・ダーレル(キッド・クレオール&ザ・ココナッツ)にようる覆面プロジェクト。ノー・ウェイヴがパンクやロックだけでなくディスコ・シーンとも連動していた。最先端のNYミュータント・ディスコで踊らせる音楽は、アヴァンギャルドでキッチュなフェイク感がたっぷり。ジェームズ・チャンスやコントーションズのギタリスト、パット・プレイス、さらにフランス人シンガー、リジー・メルシア・デクルーなのが参加している。この12インチは1979年のアルバム『Spooks In Space』から4曲を収録した2003年の再発盤。

Maladie d'Amour


ニューヨーク
地下音楽の
波高し

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