A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

浅井健一@新木場STUDIO COAST 2014.9.25(thu)

2014年09月27日 01時02分37秒 | ロッケンロール万歳!


浅井健一 2014 AUTUMN TOUR「Splash Nancy」ACOUSTIC & ELECTRIC NIGHT





ベンジー・浅井健一の最新ソロアルバム『NANCY』レコ発秋のツアー初日。昨年11月にリキッドルームで開催したアコースティックライヴ「GARAM MASALA NIGHT」の時にレコーディング中と語っていたアルバムが『NANCY』。キャッチコピーは「これが詩人 浅井健一の真骨頂」。その通り激しいビートやカミソリギターは息を潜め、静謐で内省的な私小説のような作品となった。音域的には女声に近いベンジーのハイトーンヴォーカルで、噛み締めるように歌われる言葉は、哀感と抒情の嵐が吹き荒び、出口の見えない人生の逃避行に巻き込まれるような思いがする。



簡単に言えば、凄くいい曲ばかりで、ベンジーがブランキー時代から描いてきた現実世界と夢・理想との断絶日記の続きであるに違いないが、あまりに無防備すぎるナイーヴな感性の奔流に戸惑わざるを得なかった、というのが正直なところ。だから『PIL』(2013)のように何度も聴き返すことは無かった。寧ろ初回盤に付いていたアコースティックライヴ音源の方がヘビロだった。



今年の12月29日に50歳になるベンジーは、40代最後のアルバムで敢て弱みを見せたのではないか?人生の後半戦に突入する前に、これまでの生き方にクエスチョンマークを投げかけ、同時に世間の人々に浅井健一という一人の男の胸の内側を曝け出してみせたのではないか?などと深読みするのは、2年早く天命を迎えた自分への慰みに過ぎないのだろうか。
浅井健一インタビュー "光"の射す方へ



スタジオコーストに座席が並ぶのを見たのは初めて。筆者は椅子席は買えず立見のテラスから眺めたが、ブランキー仕込みの筋金入り中年ファンから若いロケンローボーイズ&ガールズまで年齢層の広い観客が大人しく椅子に座って鑑賞する光景は何となくシュール。ベンジーも座って演奏する。バイオリンと女声コーラスが哀愁の歌を流れに乗せて運び出す。ベンジーはバキバキとベースを弾いたり、泣き出しそうなハーモニカを吹いたりする。



演奏と観客が大人しいので、歌・言葉が邪魔されることなく心に突き刺さり痛いほど。CDなら停止出来るが、ライヴだから痛いからといって逃げることは出来ない。無防備な言葉が無防備な心を震わせる、この感覚は、子供の頃、就寝前に母親が歌う子守唄の悲しい調べに涙が出て、気付かれないように寝返りを打って顔を隠した時の切ない幸せに似ている。



言葉が音楽と聴き手の心に繋がり、真っ直ぐに届いた瞬間、高い天井から歌の雨が降り注ぐのを感じた。音楽がいつもこのように届けられることが可能であれば、ラストナンバーの最後のサビの時に無数の捩じれた銀色のテープを噴射する派手な演出など必要ないのにな、と思った。



この次も
泣かせておくれ
その歌で





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