A Challenge To Fate

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【魅惑の軽音楽 その5】古き良きアメリカを感じさせるラウンジ・ジャズ~メグ・ウェレス・クインテット/ゲイリー・マクファーランド

2022年03月16日 01時16分39秒 | こんな音楽も聴くんです


これまで何度も通っている大手輸入盤店の、滅多に足を踏み入れないブラックミュージック売り場の奥に100円レコードコーナーがあることを発見した。殆どがディスコやヒップホップの12インチシングルだが、その中になぜか5,60年代のポップスやイージリスニングのボロボロのLPが紛れていた。ジャンクコーナーの王と呼ばれるポール・モーリアやレーモン・ルフェーブルやブラザーズ・フォーやレターメンといった有名どころではなく、名前しか知らないアーティストや見たことのないレコードが多かった。例えば1950年代に派手なコスチュームプレイで大衆の人気を博し「世界が恋したピアニスト」と呼ばれたリベラ―チェ(LIBERACE)や、60年代にアメリカのテレビ番組に出演しお茶の間の人気者だったゴスペル・デュオ、ジョー&エディ(Joe and Eddie)、さらに大御所ビング・クロスビーの初期の映画サントラ盤など、50年以上前にアメリカで流行ったが、今では忘れられたレコードばかりなので、おそらく来日した若いアメリカ人が自分のディスコやラップのレコードと一緒に両親のコレクションを持ってきて売却したものと想像する。

いずれも古き良きアメリカを感じさせる良作だが、その中で特に筆者の心を魅惑した2枚のレコードを紹介したい。

●The Meg Welles Quintet / Something Else
Columbia – CL 1177 / 1962


胸元露わな古き良きアメリカ美女のジャケットに銀のステッカーで「コロンビアレコードのニュースター」と書かれている。バックバンドはCIAっぽい黒縁メガネのブラックスーツ。当たり障りのないジャズ・ヴォーカルだと思ったら、1曲目からグルーヴィなベースと流麗なフルート&アコギのソフトボッサにオペラチックなスキャットが乗るラウンジ・ジャズ。コミカルな童謡やトラディショナルなフォーク、クラシカルな室内楽もあり、時々裏返るメグ・ウェレスのキュートな声は、タイニー・ティムを思わせるアシッド感を醸し出す。ビート詩人に憧れたエンターテイナーと呼べばいいのか、早すぎたアシッド・フォークと言っていいのか分からないが、何度聴いても飽きない迷宮のような音楽性は一発で愛聴盤の仲間入り。クインテットとしては同じ年にもう1枚アルバム『Once Upon A Theme』をリリースしたのみだが、メグ・ウェレス(本名Margaret "Meg" Anne Stagg)はバンドのリーダーでアレンジャーのフレッド・カーリンと63年に結婚。カーリンは映画『ふたりの誓い(Lovers and Other Strangers)』(70)の主題歌「ふたりの誓い(For All We Know)」でアカデミー歌曲賞を受賞するなど映画音楽の作曲家として大成功し、メグも作曲家・音楽学者としてともに活動した。フレッドは2004年3月に癌で死去、メグは2016年7月31日に亡くなったという。

meg welles quintet once upon a theme



●Gary McFarland / Scorpio And Other Signs
Verve Records – V6-8738 / 1968


ゲイリー・マクファーランドの名前は聞いたことがあったがどんなミュージシャンかは知らなかった。アンティークな書斎の写真やレタリングを見ると、60・70年代によくあった12星座をテーマにした企画アルバムのひとつだと思われるが、マクファーランドのヴィヴラフォンやスキャットコーラスをフィーチャーしたエレガントな室内楽ラウンジ・ジャズが全開。スパイ映画のサントラ風のグルーヴナンバーも多く、その手のレコ屋ならば「DJキラーのレアグルーヴ隠れた名盤」とかコメントされそう。ゲイリー・マクファーランドはVerveとImpulseレーベルで10枚以上のアルバムをリリースし、特に60年代初期のボサノヴァ・ブームの牽引者の1人として高く評価されたが、1971年11月3日に鎮痛薬の飲み過ぎで39歳で亡くなってしまった。息子のMilo McFarlandもヘロインのオーバードーズで父と同じ38歳で命を落としたという。不幸な人生ではあるが、残された音楽は素晴らしい。

Runaway Heart (Scorpio)


ラウンジは
アンビエントの
元祖です






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