A Challenge To Fate

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【地下ジャズDisc Review】Chris Pitsiokos, Javier Areal Velez, Kevin Murray / first blush~一期一会NY即興トリオの記録

2021年08月06日 01時29分27秒 | 素晴らしき変態音楽


Chris Pitsiokos, Javier Areal Velez, Kevin Murray / first blush
CD: 1039 Records 1039-001. limited edition of 100 copies
Cassette: Lurker Bias

Chris Pitsiokos, alto saxophone
Javier Areal Vélez, guitar and objects
Kevin Murray, drums and objects

1. First Blush 21:11

recorded live at Downtown Music Gallery, NYC on January 12th, 2020
mastered by Nate Sherman
art by Nicholas D. Ross

Bandcamp

ビフォア・コロナの赤裸々なニューヨーク即興ドキュメント
2020年1月12日、まだ新型コロナウィルスの脅威の欠片もないニューヨークの名物音楽ショップDowntown Music Gallery(DMG)で録音された21分の即興ドキュメント。元々はクリス・ピッツィオコスのソロアルバム『Speaking in Tongues』(2020)のリリースイベントとしてソロライヴが予定されていたが、急遽アルゼンチン生まれのギタリスト、ジャビエ・アリアル・ベレツとニューヨークっ子ドラマー、ケヴィン・マレイとの初顔合わせのトリオによる即興ライヴになった。ニューヨークのみならず全米でも有数のImprovised Musicのメッカとして知られるDMGでは、これまで数多くの異端音楽家が集い交流してきたが、その伝統に新たな足跡を残す激烈な演奏記録がまたひとつ誕生した。

最近ではChris Pitsiokos Trio, CP Unit, 今年のメールス音楽祭に参加したStrictly Missionaryといった自己のバンドを率いて複雑なコンポジションを聴かせるピッツィオコスだが、9年前の2012年にブルックリンの即興シーンに登場したころはアルトを抱えた一匹狼として様々なミュージシャンと即興セッションを重ね、自己研鑽に励んでいた。エリオット・シャープ、ウィーゼル・ウォルター、フィリップ・ホワイト、ヘンリー・カイザーといったベテラン・ミュージシャンから学んだものは大きかったに違いない。30歳を過ぎ、音楽面の進化だけでなく、演奏家としての姿勢や、音楽の場を作る精神を身に付けたピッツィオコスの活動は、現在のポスト・コロナのニューヨーク・シーンの流れを支えている。

このCDで聴ける演奏は、かつてのNO WAVE的な「個」「孤」の美学を保ち続けつつ、「和」「集」の真心を兼ね備えた包容力に満ちたインプロヴィゼーションで、三つの心のハーモニーを重視したサウンドを聴かせる。メクラ滅法に暴走するように聴こえるサックスのフリークトーンは、プレペアド・ギターの疑似メロディと、ドラムの振動で金切り声を上げるメタル片の波動と共振し、クラスターとなって未知の音のアマルガムをリスナーの心の襞に投射する。聴き手は初めての聴覚的快感に赤面するしかあるまい。おそらく演奏する三人も上気し顔を赤らめていたに違いない。此処に在るのは文字通り即興演奏の『初めての赤面(First Blush)』体験に他ならない。

Javier Areal Vélez, Chris Pitsiokos, Kevin Murray @ Downtown Music Gallery


このCDは2019年にブルックリンでスタートした即興音楽シリーズ「POOL」が2020年に設立したレーベル1039 Recordsの第一弾のリリースでもある。ポスト・コロナ時代の不要不急の即興音楽の担い手として、注目すべき地下レーベルである。
https://1039pool.wordpress.com/

赤面必至
三者のリアル
インプロ魂

Pool 24 | Nebbia/Santos Silva ~ Nick Neuburg ~ Ivan Trujillo

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