A Challenge To Fate

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【地下音楽への招待】LLEレーベル特集 第1回:異端精神に満ちたオムニバス盤『精神工学様変容』と『無幻夢』+Trembling Strainライヴのお知らせ

2020年01月10日 02時37分56秒 | 素晴らしき変態音楽


日本のパンクや地下音楽に興味を持っている人ならご存知だと思うが、80年に自主レーベル海賊艇K/カムイレコードからリリースされたオムニバス・アルバム『都市通信』が40年ぶりにCD再発される。リリース直後にレーベル主宰者が姿をくらませたため、少数しか流通せず幻のアルバムとなると共に、集めた予約金を持ち逃げしたことで自主レーベル界の不祥事として語り継がれていた作品である。昨年突然レーベル主宰者がSNSを通じて事情を明らかにして謝罪し、今回の再発に繋がったとされる。穿った見方をすれば話題性を利用した宣伝とも思えなくはないが、音源として貴重なことは間違いない。当時海賊艇Kは吉祥寺マイナーでライヴ企画をしていて、高校生だった筆者もこのアルバムに収録された美れいとNON BANDは観た記憶がある。他のシンクロナイズと螺旋も名前は知られていた。

ここ数年、海外レーベルからの日本の地下音楽の再発が盛んになり、カセットレーベルDD.RecordsのJUMAや、アンビエントユニットBE-2(ハーツヴァイス)、関西アンダーグラウンドのレアな作品がリイシューされるようになり、2016年9月に拙著『地下音楽への招待』が発行されたときから更に地下音楽発掘作業は進んでいる。こうなってくると次は何が掘り起こされ、世界のマニアの注目を集めるかが気になるものだ。で、筆者としては『地下音楽への招待』第11章<音楽雑誌『マーキームーン』の試行錯誤>で触れた個性派自主レーベル「LLEレーベル」こそ掘り甲斐があると思う。

そこで何回かに亘ってLLEレーベルの作品を紹介してみようと思い立った。当時の自主レーベルとしては流通がしっかりなされ入手は難しくなかった筈だが、パンク/ニューウェイヴというより、プログレッシヴロック/電子音楽/エクスペリメンタル/ゴシックロックのイメージが強く、一部の熱心なファン以外にはなかなか広がりにくかったように思える。現在も精力的な活動を続けるミューシャンが少なくないので、過去と現在が切れ目なく続く貴重な存在として注目すべきであろう。
今回はLLEの象徴と言えるオムニバス作品2作を紹介する。

●精神工学様変容 Psychotronic Metamorphosis PM-1001 / 1981

収録アーティスト:カトゥラ・トゥラーナ/パイディア/メタモルフォーゼ/ネガスフィア/ユニット-3

記念すべきレーベル第一弾リリース。帯裏のコメントがイカしている。

このレコードは、音楽が日本で初めて音楽本来の姿を取り戻した記念すべきものである。
このレコード制作にかかわる全ての人々は「プレイヤー」であり、自らの音を知り尽くしている。
あなたは、この一枚によって、世にある音楽のほとんどが、いかにゆがめられているかを知るだろう。


音楽性はパンク/ニューウェイヴではないが、旧来の商業的音楽へのアンチテーゼとして、プレイヤー自らが決定権を握るインディペンデント/DIY精神を共有していることは明らかだ。ダークなゴスロックのPHAIDIA、演劇的なユーロ歌謡KATRA TURANA、ジャズロックのメタモルフォーゼ、キーボードプログレのNEGASPHERE、アヴァンギャルドなUNIT-3。どのバンドも当時の音楽シーンにはほとんど無いユニークな音楽性と高度なプレイを誇っている。LLE企画ライヴのタイトルをそのままアルバムタイトルにしたとのことだが、聴いていると精神のB面が活性化するような異質感に満ちたアルバムである。

メタモルフォ [Metamorphose] ー ゼ - ヘラクレス



●無幻夢 Mugenmu LLE-1003 / 1982

収録アーティスト:メトロファルス/電動マリオネット/パイディア/メタモルフォーゼ/クラスナヤ ローザ/LIBIDO/ジャジュカ/ギャルズペニス

間にジャズ系スプリットアルバム『Dual Cosmos』を挟んでリリースされたレーベル3作目。シュールなイラストは、芸術的なアートワークが多いLLE作品の中でも最も印象的な1枚。ゴスロックのパイディアが中心になって参加バンドを集めたというだけあり、後に人気ニューウェイヴバンドとなるメトロファルスをはじめ、リズムボックスを取り入れた電動マリオネット、ダークサイケのLIBIDO、オルタナポップのギャルズペニスなど『精神工学様変容』よりポップでニューウェイヴ的なアルバムになった。前作にも参加したパイディア、メタモルフォーゼに加え、横浜地下シーンのプログレバンド、クラスナヤローザ(陰猟腐厭のドラマー原田淳が参加)と、後にルナパークアンサンブルで活躍する女性ヴォーカリスト、Rorieを中心とするアヴァンギャルドユニット、ジャジュカが異彩を放っている。(Rorieはキーボードでクラスナヤローザにも参加)。「音楽ジャンルを限定しない」と宣言するLLEのスタンスを証明するヴァラエティに富んだアルバムだが、全体を覆う悪夢のような異界感は80年代地下音楽の混沌を切り抜いている。

LIBIDO 「MIRAI~ラウズ」


ライヴ企画から派生したミュージシャンネットワークがLLEのスタートだという。複数のバンドが集まってライヴ企画をすることは東京ロッカーズをはじめパンク系でも行われていたが、この2作に収められた様々な個性の集合体は、LLEの精神的成熟度を象徴していることは間違いない。当時何度もチャンスがあったのにライヴに足を運ばなかったことが悔やまれる。

しかし後悔するのはまだ早い。先に書いたようにLLEメンバーの音楽活動は現在も体験することが出来る。決して回数は多くはないので、貴重な機会を見逃さないようにしたい。

★LLEレーベルの中心人物プネウマ氏率いるアコースティック・インプロユニット「Trembling Strain」ライヴ出演!
きらりの集いTOKYO2020
2020年1月12日(日)11:00〜15:00 御茶の水明治大学アカデミーコモン

Trembling Strain 2020
pneuma as 高沢 悟、山崎慎一郎、照内央晴、鈴木祐子、方波見智子、細田茂美
音楽は言葉にできない感情が生まれた時に、叫びやため息のようなものから始まったと思います。例えば切なる願いや失ったものへの慟哭のような感情がその一つでしょう。今回は作曲されているものと、即興を交えて、通常の形式から自由に音楽を作ってゆきます。ジャズでもクラシックでもフォークロアでもありませんが、こんな音楽の表現もあるのかと思っていただければよいかと思います。

Trembling Strain - Four Pictures (四つの弔歌)


他の出演:
個性派中毒性ライブアイドル【Baby♡♡Holic】(べびほり)
音楽・アートを通じて発達凹凸を楽しく知ろう 応援ソングライター yu-ka
落語 ~笑う門には福来る パート2~ 明治大学落語研究会
https://kirari2020.wixsite.com/tokyo/h

精神が
無幻の夢で
変容する

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