A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

メルツバウ+マッツ・グスタフソン+バラーシュ・パンディ/ATSUO (Boris)@六本木SuperDeluxe 2018.6.17 (sun)

2018年06月19日 01時54分44秒 | 素晴らしき変態音楽


SuperDeluxe presents
Merzbow x Mats Gustafsson x Balázs Pándi|Atsuo (Boris) Solo | Rokapenis (映像)
開場 18:30 / 開演 19:00
料金 予約3000円 / 当日3500円 (ドリンク別)
出演:
■ Merzbow x Mats Gustafsson x Balázs Pándi
■ Atsuo (Boris) Solo Set
映像:
■ Rokapenis

ハンガリー生まれのドラマー、バラーシュ・パンディを知ったのは2015年4月のメルツバウと灰野敬二との共演ライヴであったが、それ以前から彼はメルツバウ、マッツ・グスタフソン、サーストン・ムーア、ラズウェル・ラッド等と共演し、グラインドコアをルーツとする前衛ドラマーとして知られていた。灰野とは2016年10月にデュオでヨーロッパツアー、メルツバウを加えたトリオで2017年5月ヨーロッパツアー。2016年にはトリオのアルバム『迷惑をかけない無防備 = An Untroublesome Defencelessness』をリリースした。
Merzbow x Balázs Pándi x 灰野敬二/KK Null+Bastard Noise@六本木SDLX 2015.4.12(sun)

今回のパンディの来日はスウェーデン出身の即興サックス奏者マッツ・グスタフソンとメルツバウとのトリオを含む日本ツアー。このトリオは2013年、2015年にLPをリリースしている。東京最終公演となるこの日はさらにヘヴィロックバンドBorisのドラマーにしてリーダーのATSUOがソロパフォーマンスで参戦。Borisもメルツバウとコラボレーションしているので、メルツバウを核にして北欧/東欧/東京が交差した奇跡の一夜と言っても良かろう。それを証明するように会場は満員、外国人客が半分近くを占める六本木らしいコスモポリタンな空間が生まれた。地下アイドル現場に増えて来た外国人ヲタに比べハイソな雰囲気が濃い客層は、ジャパノイズシーンの成熟ぶりを印象づける体験だった。

●Atsuo (Boris) Solo Set


ステージの後ろに壁のように6台のギターアンプ、3台のベースアンプ、それらの中央に巨大な銅鑼が林立している。暗転するとゴシックな黒衣装に身を包んだAtsuoが登場。儀式のような仕草で銅鑼をクロームマイクで擦る。拡大された摩擦音はガサゴソとモノクロームの擬音を発する。徐に身をかがめて発信器のつまみを回すと流れ出すドローン電子音。かつて年末の灰野敬二のオールナイトライヴで朦朧とした意識で体験したエレクトロニクス演奏を思い出しながら目を閉じた。するとキーンというメタルチャイムの音で目が覚める。チャイムを大きな身振りで動かして音の位相を変化させる。見事なまでに灰野をリスペクトしたプレイに唖然としていると、場を清める儀式が終わったとばかりに銅鑼を強く叩いて打撃音を電気加工した轟音ノイズに移行した。それ以降はAtsuoならではの銅鑼を音源としたエレクトロノイズ演奏に突入。アンプから襲いかかる重低音は、耳を圧するというよりも、体全体を包み込むような浮遊感を感じさせる。轟音の中、天空に向かって雄叫びを上げたように見えたのは、果たして邪神か悪魔を召喚しようとしたのだろうか。銅鑼の後ろから客席へ向けて照射されるライティングにAtusoの逆光の影が浮き上がるリチュアル且つセレモニアルな景色の中に宿った紛れもないロックスピリットに心が踊るパフォーマンスだった。

Boris - Atsuo Stagedives - Live Finale 8-26-2016 @ The Regent Los Angeles, CA



●Merzbow x Mats Gustafsson x Balázs Pándi


銅鑼とアンプ類が撤去され見晴らしが良くなったステージに3人が並ぶ。VJ Rokapenisの三面の壁を使った映像照明が会場全体を揺り動かすなかで、メルツバウの重低音ノイズとグスタフソンの激烈バリトンサックスがぶつかり合う。両者の対決の真ん中で雷鳴のようなドラミングを叩き出すパンディは言わば行司の役割か、もしくは二つの音の喧嘩を仲裁するのでも鼓舞するのでもなく、衝突エネルギーをいなして別の空間へ拡散させるプリズムだろうか。グスタフソンがサックスを置いてテーブルの上のエレクトロニクスに移ると、音の衝突ではなく溶解/融和へと変質する。メルツバウのダイナミックレンジの広い轟音に対して、高周波でメタリックな電子ノイズを放出するグスタフソンは、管楽器の息づかいをエレクトロニクス化する方法を模索している。両者が同舟する船舶に満ち潮引き潮のように緩急のあるドラムがストーリーを形作り、得てして圧力保持に終始しがちなノイズデュオを風景の異なる船上の旅へと誘う。後半跳ねるようなダウンビートを連打するドラムとともに舞い上がる電子の翼を広げた3人の魂は、聴衆の意識を巻き込んでパワーインプロヴィゼーションの桃源郷へと導くかのようであった。

Merzbow - Mats Gustafsson - Pándi Balázs, A38 Ship, Budapest, 2012. ápr. 12.


「即興ノイズのパワートリオ」と呼んでも差し支えないが、力のみに頼った音圧ハラスメントの要素がない潔癖さこそがリスニング・エクスタシーへの近道である。

エレクトロ
バリトンサックス
ドラミング

Merzbow / Keiji Haino / Balázs Pándi ‎

Live at St.Elisabeth Kirche 31/05/2017
コメント
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