A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

コクシネル/割礼@新宿JAM 2014.12.21(sun)

2014年12月24日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


"夜の歌 2014"
出演:コクシネル(野方攝、池田洋一郎、工藤冬里)/割礼




コクシネルと聞くと、1982年に一緒に即興ユニットを組んでいた仙台出身のギタリストT君のことを思い出す。高円寺駅から南へ15分ほど歩いたお寺の裏手にある彼の下宿は、レトロな大正浪漫風のアパートで、1DKの部屋には古道具屋で買った古びた机と本棚があった。ジャンゴ・ラインハルトとジミ・ヘンドリックスを好むT君が聴かせてくれたのがピナコテカから発売されたばかりの銀色福助三角ジャケットのレコードだった。その3年前に数回訪れたことのある吉祥寺マイナー所縁のサウンドは、店が開くまで座って待った階段の、湿り気を帯びたモノクロームの記憶を甦らせる、不思議な懐かしさを持っていた。その想い出も既に30年以上過去になり、モノクロ写真もボロボロになって人の姿も変わってしまった。

2008年12月30日に高円寺ShowBoatで「静香&コクシネル」のツーマンライヴがあった。筆者はその日の深夜の灰野敬二オールナイト公演に参戦したのだが、静香&コクシネルのライヴが時間的に押した(それと灰野のサウンドチェックが延びた)為に、灰野の開場時間が1時間遅れたと過去ブログにある。YouTubeには21世紀以降のライヴ映像も散見され、コクシネルが決して化石から甦ったゾンビではないことが判る。




●割礼
 
(写真はTwitterで拾ったものです。以下同)

『ネイルフラン』『ゆれつづける』再現ライヴから1年以上経つ。年と共に遅くなるスローモサイケデリアのセトリは、アップテンポのナンバーを2曲含む。とは言っても宍戸のヴォーカルはリズムを半速で数えているので、タテノリにはなり得ない。空気に浸透する音の湿気が聴き手の目や耳に水滴となって凝結する、溺れっぱなしの快楽に身悶えした60分だった。




●コクシネル
 

ライヴを観るのはたぶん初めて。セツと洋一郎の二人が住む金沢は、筆者が十代初めの4年間を過ごした街でもある。音楽に目覚めた思春期の頃、片町の山蓄や香林坊のVanVanといったレコード店は最大の憧れの場所だった。すべてが未知の世界であり、すべての音が新鮮だった。かつて裏日本と呼ばれた寺の多い街には雀谷川という水路が流れ、太平洋戦争中に作られた防空壕の洞穴には、決して入ってはいけないと警告されていた。忍者寺は面白いが、説明だけで実体験できないのが残念だった。思いの外ボサノヴァタッチでフォーキーなセツの歌に、犀川や浅野川という懐かしい名前が聴き取れた。卯辰山のスキー場で父が骨折したことを思い出した。



初期のメンバーだった工藤冬里と山際英樹をはじめ、割礼のメンバー全員と共演したラストナンバーは、感傷を超えて永劫となるコクシネルの希有の資質を明らかにした。



想い出は
ライヴハウスに
置いて来よう











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