A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

自由な音の記憶 Vol.2:ロック基本のド定盤をアナログで聴いてみよう!

2013年05月07日 00時38分01秒 | ロッケンロール万歳!


自他ともに認めるマイナー志向なので王道にからきし弱い。レコード・コレクションを改めて見直して「ロック名盤100」などガイドブックに紹介される所謂定盤が少ないのに気づいた。例えばキング・クリムゾン。リアルタイムで聴いたのは'80年代再結成クリムゾンだが遡って'70年代黄金期も聴いていた。大学時代バンドで散々コピーもした。愛聴盤は「新世代への啓示(A Youg Persons Guide To King Crimson)」と題された2枚組ベスト盤。大判ブックレット付の原題通りクリムゾン初心者用ガイドだが超定番曲「21世紀の精神異常者」が収録されていない。ロバート・フリップ自身の選曲だがこの曲を外した意図は?深読みしたくなるがそれは本稿の論旨とは異なるので割愛。問題は「21世紀の精神異常者」をアナログ盤で所有していないという事である。早速レコードを探しに街へ出た。ベストセラーだから二束三文で転がっているだろうと中古アナログ売り場を探すとUKオリジナル盤が数万円。近年マニア市場でオリジナル盤や国内盤帯付が高値を呼んでいる。特にビートルズやストーンズといった人気アーティストのレア盤は驚く程の値で取引される。コレクターにとってプレミアは必ず直面する試練である。

貴重盤収集はとても魅惑的だが今回は安価なモノでOK。目的は発売当時のリスナーの気持ちに近づくこと。そのためには解説付き日本盤が望ましい。当時は帯はかっこ悪いので購入と同時にゴミ箱行きだったので帯なし大歓迎。ペラペラのジャケットが多い輸入盤よりしっかりした厚紙に綺麗に印刷された日本盤の方が高級感があるしプレスも最高クラス。帯付だと一桁値段が違うが帯なしなら三桁で買える。ロックの基本のキを持っていないのでこの機会に名盤・定盤を揃えてみた。

●ビートルズ「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」


新宿ディスク・ユニオン中古センター 780円
東芝EMI EAS-80558/見開きジャケット/切抜き台紙付/解説:立川直樹/対訳:吉成伸幸/裏ジャケに歌詞掲載

おそらく80年代前半のは再発シリーズの一枚。解説書にユニオンジャックとTHE BEATLES-9の表記があるのはイギリス盤の9枚目ということだろう。現在も評論家兼プロデューサーとして活躍する立川直樹が1,5ページに亘ってこのアルバムが如何に凄いか綴っている。途中で「もう、これ以上の説明は必要としないだろう。あとは、実際にレコードに針を下ろすだけでいい」と書いておきながらその後も楽曲解説を含み延々と続く。世紀の名盤であればある程思い入れが大きいし特に再発だと時代背景や後世の評価など情報も多い。アルバム解説だけで1冊の本が出来上がる程である。評価が定まっているので下手に主観的なことも書けないし評論家にとっては大きなチャレンジだろう。立川の饒舌さも理解出来る。

●キング・クリムゾン「クリムゾン・キングの宮殿」


渋谷レコファン 580円(注:中古盤5枚で各200円OFFなので値引き後の価格を表記)
ワーナーパイオニア P-6365A/見開きジャケット/解説:北山幹雄(1971年4月17日記)/内ジャケに歌詞掲載

厚手のつや消しマット紙印刷の重量感ある装丁。本作のイギリス発売は1969年、ワーナーパイオニア(WP)設立が1970年だから日本最初の発売はWPの前にATLANTICの権利を持っていた日本グラモフォンだったのだろうか?解説はイギリスの伝統文化とモダン・ロック論が述べられ曲目解説に執筆者北山の手になると思われる歌詞の翻訳が添えられている。当時は歌詞対訳がつく事は稀だったので良心的な解説書だと言える。クリムゾンが属する「音楽を掘り下げる派」を「ミュージック・コンクレートを中心とした」バンド群と説明し代表的なグループとしてピンク・フロイド、エマーソン・レイク・アンド・パーマー、ザ・タッチ、ザ・フロック、ムーディー・ブルースの名前を挙げいる。現在はザ・タッチとザ・フロックは格段に知名度・評価が低い(ザ・タッチは知らない)が筆者のお気に入りなのかそれとも当時は知られていたのだろうか。いずれにせよ情報が少ない時代はライナーノーツが貴重な情報源だった。

●イエス「危機」


新宿ディスク・ユニオン中古センター 780円
ワーナーパイオニア P-6526A/見開きジャケット/解説:朝妻一郎/対訳:池田あき子/中袋に歌詞掲載

プログレ好きといっても所謂5大プログレ・バンドで多少なりとも聴いたのはクリムゾンとジェネシスだけ。ピンク・フロイドはシド・バレットがいる1stのみ、イエスとEL&Pは1枚も所有していない。イエスはジョン・アンダーソンのハイトーンヴォイスが苦手、EL&Pはギターがいない、という言い訳は出来るが実際はマイナー志向の結果の聴かず嫌いである。クリムゾンとジェネシスを聴いたあとはヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイターやジェントル・ジャイアントやゴングを齧りそれもまだメジャー過ぎるとばかりヘンリー・カウのレコメン系やキング・イタリアン・ロック・シリーズに手を出した。後述する西新宿のバカ高いレコ屋に相当つぎ込んだ。これじゃいかんという訳でスルーしていたイエスを入手。「ラウンドアバウト」収録の「こわれもの」が欲しかったが見つからず「危機(Close To The Edge)」を購入。ヒプノシスと並び'70年代ブリティッシュ・ロック名盤のジャケット・アートで有名なロジャー・ディーンによる「こわれもの」の地球はLPサイズで持っていたいがBORISがパクった「危機」の緑ロゴも迫力満点。内ジャケのSFファンタジー・イラストも素敵。朝妻は日本の音楽業界の大物だけありメンバーの発言や活動歴を紹介しつつイエスの成長ぶりとアルバムの素晴らしさを平易な言葉で語るライナーは流石。執筆時に邦題が決まってなかったようで「危機」ではなく「Close To The Edge」と書かれている。あくまで想像だがこの邦題は朝妻がライナーでビル・ブラッフォード脱退に関し他のメンバーとの間に「"危機に近い(Close To The Edge)"という雰囲気があったのに違い」ないと書いたのをヒントにした(パクった)のではなかろうか?

●レッド・ツェッペリン「レッド・ツェッペリンIII」


渋谷レコファン 580円
ワーナーパイオニア P-10106A/見開き特殊ジャケット/歌詞カード付

ツェッペリンの最高傑作はどのアルバムかは意見の分かれるところ。セールス的には通称「フォーシンボルズ」と呼ばれる「レッド・ツェッペリンIV」が圧倒的だがくるくる回る特殊ジャケの魅力で「III」を購入。中学の卒業式で初めてのバンドで演奏した「移民の歌」とライヴ・ヴァージョンがカッコいい「祭典の日」が収録されているのが嬉しいがB面が全曲アコースティックなのでハードロックを期待すると肩透かし。しかも日本盤なのに解説がない。もしかしたら欠損かもしれないが投げ込みカードには曲目と聴きとりによる歌詞が掲載されているだけ。特殊ジャケで制作費が嵩んで解説原稿料が出せなくなったのか、それとも問題作なので解説をつけない方がいいと判断したのか。因みにジャケットは日本盤らしい厚紙ではなくペラペラした薄手である。オリジナル盤もペラ紙なのでこれは予算上の措置ではなく本国からの指示であろう。アナログ時代にはジャケット/プレスまでトータル作品としてアーティスト側が指定することは少なくなかった。某プログレ・バンドはレコードの重さまで管理したという。パンクのDIY精神はそういう神経症的な作品創りへのアンチテーゼだったといえる。

●ディープ・パープル「マシン・ヘッド」


渋谷レコファン 380円
ワーナーパイオニア P-8224W/見開きジャケット/解説:田中正美(72年3月)/歌詞なし

ツェッペリンはそれなりに聴いたがパープルはパンクスの敵だった。ギターを手にして最初に弾いたリフが「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だったにも関わらず長髪&革ジャン&ラッパズボン+絶叫ヴォーカル&ギター早弾きは前時代の遺物だとして忌み嫌った。ギターが上手い同級生は大抵パープルのコピーバンドを結成した。テクニカルなフュージョンはオトナの音楽なのでガキには早過ぎた。イアン・ギランの高音を出すのは声変わり途中の中学生にも難しくかすれて森進一になるか弱々しいオカマちゃんになるかがオチだった。ギターが下手な連中は「テクニックは必要ないぜ!」とパンクバンドで対抗した。ひと昔前ならギター下手は歌えればフォークを演るか、さもなければベースやドラムに転向するかしか道はなかったのでパンクのお陰でギターを諦めなくても良くなった訳だ。アナーキーとかFUCKとかのお題目より楽器が下手または全然出来なくてもロック(らしきもの)が出来るというのがパンク革命最大の功績と言える。ともあれパープル的なバンドを目の敵にしていても激しいリズムでヘドバンしながら超絶ギターを弾きたいという憧れはある。嫌っていた筈のパープルがラジオで流れるとどの曲も知っているのに驚く。青春の1/4ページ位が紫に染まっている。「ハイウェイ・スター」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」が収録された本作こそハードロックの雄ディープ・パープルの代表作だろう。ところが「話は違うけれど"ハッシュ"というのは、いい曲だったねという話」と始まる解説はサイキデリック・サウンドと呼ばれたデビュー時からクラシックに挑戦するまでの経歴に紙幅を費やし肝心のハードロックのことは軽く触れるだけ。楽曲解説は曲を聴こえるままに言葉に置き換えただけ。例えばギターキッズの筆下し曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は「ベースを前面にプッシュしています。シンバルのリズムも独特のセンスが感じられて、なかなか良い。"」という2行だけ。ーーーそんなの聴けば判るじゃん。独特のセンスって具体的にどういうこと??? 解説としてはどうかと思うが当時はこの手のライナーノーツが多かった。情報が殆ど無いから想像で書くしかない。ジャケットに歌詞が載っていれば詞の内容を語る事が出来るがそれも無ければ音だけで解説しなければならない。レコード会社に写真だけ届き説明がなくどれがどのメンバーか判らない事もあったと言う。評論家の数が限られていたのでラジオDJや新聞・雑誌記者がライナーを書く事も多かったしライナーを書かせてプロモーション効果を狙うのは現在でも常套手段である。評論家にしても得意分野以外のジャンルを書く事もあり「これは判らない」と正直に書いてあるライナーノーツもあった。大らかな時代だった。

●セックス・ピストルズ「勝手にしやがれ」(ジャケはアメリカ盤)


渋谷レコファン 880円
東芝EMI 25VB-1068/解説:森脇美貴夫/対訳:原田愛子/歌詞付

このLPは1977年12月11日にアメリカ盤で購入した。日本盤も出たが安い輸入盤の入荷を待った。黄色にピンクのオリジナル盤と違うピンクに緑ジャケで日本盤より1曲多く収録。曲順も違い友人の家で日本盤を聴いたらA面最後が「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」じゃなくて変な気分がした。現行CDで聴いてもいまひとつ腑に落ちない。アメリカ盤で育ちこんな違和感が植え付けられた人は多いかもしれない。今回購入したLPはEMIのヴァージン・レコード買収に伴い'80年代に再発されたもののようだ。雑誌「ZOO」「DOLL」の編集長としてパンクの現場に拘る森脇による新ライナーは再発時のバンドブームを断罪しつつピストルズの影響力を語るパンクライターらしい状況論を展開。ぷっつり執筆活動を辞めてしまったが元気だろうか。丁寧な歌詞の逐語訳がありがたい。

'70年代末パンク・ブーム当時は森脇をはじめ大貫憲章、鳥井ガクなどが雑誌やライナーノーツで「自分から行動しなきゃダメだぜ!」と檄を飛ばしていた。当時ピストルズの動向は社会現象として新聞でも逐一記事になった。1978年1月の突然の解散も新聞で報じられ「パンクは死んだ」と日記に書いた。翌年にサントラ盤「ザ・グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル」がリリースされるが購入しなかった。マイナー志願者は何をしたか?ーーー海賊盤に走ったのである。現在の西新宿ブートCD街は35年前もブートレコード/ビデオ店がいくつもあった。正規盤より割高で録音・盤質が悪い海賊盤を買い漁った。高い金払って買ったら録音が酷過ぎて二度と聴かないこともあったし中味がまったく別のバンドだったこともあるが魔性の魅惑には勝てなかった。パンクやプログレだけではない。ロックで一番好きだったザ・フーも代表作「フーズ・ネクスト」「トミー」を入手する前に海賊盤を何枚も購入していたのである。海賊盤店の隣がプログレ専門店でやはり高価なヨーロッパ盤を清水の舞台買いした。さらにダビングを重ねて画像が滲んだブートビデオ。。。。西新宿にいくらお金捨てたか考えたくもない。CDやDVDで何でも手に入り幻の映像もYouTubeで容易に観られる時代になったが多くのマニアがブートCDに血眼になる気持ちはよく分かる。より困難な状況に自らを追い込むハングリー精神こそマニア道&マイナー道なのであろう。




ロックなら
やっぱりジャケは
デカくなきゃ

ロケンローは蛇の道だね!ベンジー。






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