A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

自由な音の記憶 Vol.4:工業人間のための工業音楽~インダストリアル・ミュージックのおさらい

2013年05月30日 00時59分35秒 | 素晴らしき変態音楽


この1週間アイドル関係の記事ばかりで「このブログオワタ」との声も聞こえるこの頃いかがお過ごしだろうか?本質が右傾化した訳ではなく意図的にバランスを崩すことで音楽の本質を再考しようというBRAINWASHである。右から左への急激な傾斜がポップとアヴァンギャルドの壁を突き破りトンネルを抜けたらまたトンネルだったという堂々巡りの輪廻に終止符を打つことを願って病まない。

'70年代イギリスでクーム・トランスミッションを名乗りメンタル/セックスをテーマに過激なアート・パフォーマンスを展開したジェネシス・P・オリッジとコージー・ファニ・トゥッティを中心に1975年結成されたスロッビング・グリッスル(TG)が1977年設立したINDUSTRIAL RECORDS Ltd. のスローガンが"Industrial Music For Industrial People"(工業人間のための工業音楽)。「工業生産される大衆音楽」へのアンチテーゼ(皮肉)だった。このレーベルからリリースされたTGを中心とする音楽作品はパンクで目覚めた反主流精神に支えられセンセーションを巻き起こし同調する非音楽集団が次々登場し世界にインダストリアル・ミュージックのウェーヴを起こした。

彼らは電子楽器を多用し、テープ録音されたノイズや環境音をコラージュ・モンタージュし、ひたすら非人間的で機械的なリズムやメロディを生み出していた。エモーションやリリシズムを排除した即物的な音響は当時はひたすら非音楽的に響いたものだが30年以上経った現代の耳には無声映画を観るようなノスタルジックな哀愁を呼び起こす。工業社会が大きく変質した訳ではないが同時代音楽は年月の重みに風化の一途を辿った。十二音技法や未来派や超現実主義同様セピア色に染まりながらも狂ったダイヤモンドの閃きを見せるインダストリアル・ミュージックの不器用な実験精神が今ほど必要とされている時代はない。

スロッビング・グリッスル


クリス・カーター 、ジェネシス・P・オリッジ、コージー・ファニ・トゥッティ、ピーター・クリストファーソンによる音響テロリスト集団。工業音楽の始祖。具体音やノイズのコラージュ、呪詛的なヴォーカルやリズム・ボックスを多用したサウンドに加え幼女ポルノや自殺の名所を用いたインパクトのあるヴィジュアルで一時代を築いた。1981年の解散後サイキックTV、クリス&コージー、コイルの3つに分裂するが23年後の2004年再結成。2012年活動停止。




キャバレー・ヴォルテール(CABS)


TGと並ぶ初期インダストリアル・ミュージックの代表格。1973年リチャード・H・カーク、クリス・ワトソン、スティーブン・マリンダーの3人によりシェフィールドで結成された。名前は反芸術運動(ダダイズム)の発祥の地であるスイスのキャバレーの名前にちなんでいる。チープなマシンビートにパンクギターと電子ノイズが織り込まれたサウンドは工業人間のためのディスコサウンド。1982年初来日。ツバキハウスで観たライヴはレコードよりずっと逞しいダンスミュージックだった。後にエレクトロニック・ダンス・ミュージックに転じた。




SPK


シドニーの精神病院に勤務していた看護人のグレアム・レベルと、彼の患者であったニール・ヒルが1978年に結成。バンド名はドイツのハイデルベルク大学に存在した"Sozialistisches Patientenkollektiv"(「社会主義患者集団」)に由来する。死体や病理写真を使ったアートワークはインダストリアル/ノイズの象徴。デビュー作直後グレアムとニールが仲違いしふたつに分裂。1984年ニールが自殺するとグレアムSPKはポップ路線に転向するがやがて解散。グレアムは映画音楽作曲家として大成功を収める。




ノクターナル・エミッションズ


'70年代末ナイジェル・エイアーズ、キャロラインKを中心にイギリス・ダービーシャーにて結成。徹底したアンチ・モラルなイメージの情報収集 (コントロール・テクノロジー) 及び情報制御活動と心理戦を作品のテーマとしたプロジェクトでTG、CABS、SPKよりも地下深く潜行しテロ攻撃を仕掛けた。'80年代半ばからエイアーズのソロユニットになりアンビエント/テクノ/ロック/メタルとスタイルを変遷させつつ現在でも活動中。




●ホワイトハウス


ポストパンク・バンド、エッセンシャル・ロジックのギタリストだったウィリアム・ベネットにより'80年にスタートしたプロジェクト。自ら設立したレーベル、カム・オーガニゼーションからモノクロコピーを貼っただけのチープなLPをリリース。壊れたシンセサイザーのひりつくような高音部と時折鳴る低音が同居した純粋ノイズにベネットの絶叫が被さる“パワー・エレクトロニクス”の先駆者。ベネットは現在カット・ハンズとして活動中。

Whitehouse - Live Action 39 Reseda 6-21-84



ノイズを
垂れ流す
音楽工場

'90年代ミニストリー、ナイン・インチ・ネイルズ等オルタナから派生したインダストリアル・ロックとは似て非なるものなので注意のこと。
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