
「1978~80年吉祥寺にあったジャズ喫茶「マイナー」は有象無象のミュージシャンを呼び込み、のちの日本のパンク、ニューウェイヴ、ノイズほかさまざまなシーンの源泉となったといっても過言ではありません。そこにかかわった故大里俊晴(ガセネタ、タコ、元横浜国立大学教授、2009年11月17日没)の三回忌(大里俊晴BOX『タカラネタンチョトタカイネ』5CD+1DVD発売)を記念して、吉祥寺マイナーに出入りしていらしたゆかりの方々とともにマイナー音楽祭を開催します」(公魚)
ゲスト:ECD、AYUO、工藤冬里、園田佐登志、竹田賢一、ジュネ/司会・企画:公魚(ポチョ☆ムキンコ[高橋智子]、柿野ぱち子[渡邊未帆])
2年前大里俊晴氏の逝去をきっかけに盛り上がる吉祥寺マイナー再評価。ちょうど非常階段30周年で光を当てられた京都どらっぐすとぅあと並んで1970年代末の混沌としたアンダーグラウンド・シーンの拠点であった。今回のイベントでは大里氏の著書「ガセネタの荒野」に登場する園田氏、工藤氏、ジュネ氏を始め、このシーンに深く関わった人たちをゲストに当時の知られざる真相や逸話を語るトーク中心に進行した。
当時明大現音ゼミを主催し"人を集めるだけで何もしなかった"(ガセネタの荒野より)園田氏は貴重なチラシや音源を収集しており、今までもことあるごとにこの時代の貴重な資料を紹介してきた。氏所有の1978年の灰野敬二さんとAYUO氏の共演の音源を試聴。灰野さんがMCで「祈りが足りない」と語っており、現在と全くブレていないことに感銘を受ける。
園田氏はいかんせん真面目一本槍の人なので、根がロッカーのジュネ氏や奇人の冬里氏と好対照を成す。当時ジュネ氏と冬里氏は高円寺でBlack Poolというロック・バーを経営していた鳥井ガク氏とWorst Noiseというバンドをやっており、そのバンドが後のThe Foolsの川田良氏に乗っ取られ、川田氏の繋がりでマイナー店長佐藤隆史氏と知り合い出入りするようになったとのこと。その頃はまだ小綺麗なジャズ喫茶の面影のあったマイナーが有象無象の変人が出入りし始め崩壊への道を辿ったこと。特に故金子寿徳氏がアブナいブツを持ち込んで全てが狂って行ったこと、などジュネ氏のトークが面白い。ジュネ氏と冬里氏の掛け合いはまさに私が学生時代のバンド仲間と飲む時のノリそっくりで微笑ましかった。

現在ラッパーとして活躍するECD氏は当時客としてマイナーに出入りしており外部から見たマイナー感について語ったが、私の持つ印象に近く共感を呼ぶ部分が多かった。
最後に司会の公魚の二人を含め全員で即興セッション。冬里氏は隅に座り込んで激しくギターを掻きむしる。ECD氏はサックスを演奏。最後にジュネ氏が乱入しテーブルを蹴り倒す暴力的なパフォーマンスで終了。15分ほどの演奏にはマイナーの香りが充満していた。
マイナーに
巣食う亡者の
同窓会
とにかくジュネ氏の話が面白かったので「ガセネタの荒野」に対抗するもう一つのマイナーの真実として書籍化して欲しい。