
今年2月にリリースしたニューヨーク・トリオの最新作「ディライトフル・コントラスト」のレコ発ツアー東京公演。金子飛鳥嬢率いるストリングス・カルテットとの共演だ。会場は渋谷駅から徒歩5分の完成してまだ1年という新しい施設、渋谷区文化総合センター大和田さくらホール。プラネタリウム、図書館などもある便利な施設。すべてが新しくて気持ちがいい。ジャズでもホール・コンサートだと客層はさすがに年齢層が高くてクラシックのコンサートを思わせる。
第1部は洋輔さん(p)、セシル・マクビー(b)、フェローン・アクラフ(ds)のトリオの演奏。「ディライトフル・コントラスト」の収録曲2曲と前作からの「トリプル・キャッツ」、そしてトリオの定番曲「スパイダー」。もう活動歴23年になるベテラン・トリオだけに阿吽の呼吸が名人芸。洋輔さんはひじ打ち、駆け上り奏法、拳叩きなど技を繰り出すが、それが奇矯な技には見えないほど板についている。リズム隊の二人も洋輔さんの激しいプレイを飄々と受け止めてレスポンスしている。確かに若いミュージシャンの対抗心に満ちた弾けるプレイは刺激的だが、ニューヨーク・トリオのような大人の余裕を見せつけられるとスケールの大きさの違いが明らかだ。
第2部は金子飛鳥ストリングスとの共演。まずは飛鳥嬢がソロで参加し流麗なヴァイオリンを聴かせる。2曲目から矢野晴子(vn)、志賀恵子(va)、多井智紀(vc)の3人が加わりカルテットに。よくある"with Strings"的な演奏ではなく、ジャズ・トリオとクラシック・ストリングスが一体となってグルーヴを創造する。特にアルバム1曲目の「チェイス」での悪魔的な弦の響きが凄かった。名曲「クルディッシュ・ダンス」のストリングス・ヴァージョンも印象的だった。
現在のニューヨーク・カルテットに1970年代の疾走する山下洋輔トリオの残滓を見出そうとするのは間違いだ。ニューヨーク・トリオならではの円熟の極みを楽しめるようにリスナー自身も成長しなければならない。
ストリング
チェンバー・ジャズの
響きあり
翌日は新宿ピットインで坂田明さん。洋輔さんと坂田さん、かつての盟友のライヴが続くのは何か因縁めいたものを感じる。